yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 6/8

アメリカの地域航空会社に勤める操縦士、裕坊といいます。

 

ここ最近、急激な回復を見せているアメリカの旅客航空業界。

先日の6月6日(日)は、全米での空港保安検査場を通過した人の合計が198万人を記録。コロナ禍前と比較してもほぼ7割から8割程度の回復ぶりとなっています。

 

デトロイト空港内でしばらく運休になっていた電車も再開。ターミナル中央から北端、南端とを再び結ぶようになりました。

アメリカという国は、本当に逞しいです。自らが外へとたくさん出歩いてたくさんお金を落とし、そして自らもお金を稼ぐことによって経済を回すというアメリカンドリームの精神が脈々と受け継がれ、アメリカ市民の骨の髄へと染み付いているのを、ここ最近は心底感じるようになりました。ワクチン接種が進んで、新規に陽性と診断される人が右肩下がりになっているのも寄与しているでしょう。

 

ただワクチン接種には慎重な人も多く(特に保守系の男性において、その傾向が顕著です)、接種はここ最近急激に鈍っています。

写真は今年の2月のもので、デトロイト空港のCコンコースの中二階に設営されていた接種会場。

 

希望する従業員に対して、3ヶ月間、無料の接種が行われていました。

ただ正直いうと、あまり人で賑わってはいなかった印象… 裕坊が感じている印象としては、接種率は我が社の場合で半分くらい……

 

抗体がどれほど持続するのか分かりませんし、長期的な影響についてもまだ未知数…

正式なワクチンの承認は、ファーザー製薬もモデルナ社も5月にアメリカ食品医薬品局に申請したばかり。現在接種が進むワクチンは全て緊急承認のよるもので、早い話まだ治験中であるということ。裕坊はもうしばらく様子を見たいです。

 

結局採算が合わなかったのか、それとも元々の計画だったのかどうかは分かりませんが、接種会場は5月には撤収となりました。

これは先日の出勤時の、空港内の様子。

 

ただ何を思ったか、その横にあるトイレまでが閉鎖……

ここは開けといても、いいんと違うの???……

 

エンデバー航空の、デトロイト空港内にある事務所の横にあるトイレで、ワクチン接種とは関係ないはずなんやけどな〜……

 

ちなみにワクチン接種会場、我が社の事務所もあるCコンコースの中二階。リージョナルジェット機専用の出発ゲートもいくつかあるのですが、

そちらはまだ再開になっておりません。一時は待合用の椅子が置かれたままで乗務員たちの憩いの場にもなっていましたが、椅子は撤収されたままになっています。

 

国内線がアメリカの航空会社の復活の兆しを牽引する中にあって、国際線はまだ弱含み…変異株が世界的に蔓延する中、渡航自粛先だけが増え、裕坊も実をいいますと日本の運転免許証を更新しないといけないにも関わらず、日本帰国の目処が立たず…

デルタ航空では大型機の機種整理も進んで、最長不倒距離を誇った旅客機、ボーイング777型機なども昨年度に全て退役してしまいました。

 

ちなみに整備点検費用のことを考えると、機種はある程度統一されていた方が安上がりにはなるので、デルタ航空でもエアバス機材への統一の方向で現在は進んでいます。

国際線用の大型機材の主力は、デトロイト−羽田間を就航しているエアバス350型機であったり、

 

ノースウエスト航空時代から保有し続けている、A330型機…

新規の発注も、デルタ航空ではエアバス機に絞られています(225機の発注残)。現在稼働している機体数は782機。そのうち434機がボーイング社製の機体で、現在は半数以上。ただそのうち79機は2025年までの退役が決まっているので、いずれはエアバス機の数がボーイング社製を上回ることになりそうです。

 

そんな中にあって飛び込んできたニュースといえば、

ユナイテッド航空が、超音速旅客機を15機発注したこと。2029年の商用開始を目指しているそうなのですが、果たして……

 

下の写真にあるコンコルドを思い起こさせるフォルムで、もし実現したとすると、2003年以来四半世紀ぶりに超音速旅客機が空に戻ってくることになります。

 

ちなみにコンコルドの機首が離着陸時に大きく折れているのは、超音速用に装備されているデルタ翼だと、離着陸時の機首上げ角が大きくなり、パイロットの視認性を確保する必要があるため。

コンコルドでは音速を超える時に発生する衝撃波の問題が解決できず、飛行可能な空域がかなり限られていました。

 

さらに通常の旅客機に比べて消費燃料があまりにも多く、富裕層といえども常時搭乗することができなかったこともあって、2003年に商業飛行は終了。

写真は音速を超える時に発生する衝撃波。地上にも大きな衝撃が伝わります。コンコルドで抱えていた問題を、どのように解決していくのか、その手腕に注目。

 

この新型旅客機の実現を目指しているのは、コロラド州デンバーに本拠を置くベンチャー企業のブーム・テクノロジー社。日本航空も1,000万ドルの出資をしていて、将来の優先発注権を確保しているそうです。

 

旅客用の超音速機は、ブーム社などによる旅客機だけではなく、ビジネスジェット用やチャーター用などを目的とした小型機の開発の計画などもあります。

一番実現が近かったとされていたのは、ネバダ州リノに本拠を置いていたエアリオン社。

 

2004年に立ち上げられて、CRJシリーズなどを製作したボンバルディエ社などとも提携し、昨年にはフロリダ州オーランドに製作用の工場の建設なども発表されていたのですが、

実は今年になって資金繰りが急激に悪化……5月21日に突然閉鎖を発表して、計画は頓挫することになってしまいました…

 

亜音速領域ですら、完成までには長い年月がかかるとされる旅客機の製造。

音速を超える夢の旅客機が再び空を飛ぶ日が来るのか、今後の開発にちょっと注目です。

 

 

 

 

 

今月は週末は全てフライトで埋まっていて、次回の5日勤務のフライトへは木曜日に出勤です。