yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 2024年7月

米国航空会社の小型旅客機パイロット、裕坊です。

 

7月といえば花火の季節。月初めの7月4日は、アメリカ合衆国独立記念日(今年はちなみに、アメリカ合衆国建国248周年)ということもあり、当日は夜になるとかなりの花火が打ち上がります。

 

個人家庭の庭から打ち上げる人も少なくなく、独立記念日当日は、我が家の近所でも住宅街の上でたくさん上がっておりました。

 

ちなみにその翌日は、日本から訪れていた友人を訪ねて、ロサンゼルスまでひとっ飛び。

初めてこの時はドジャースタジアムを訪れました。

 

大手航空会社で副操縦士として勤務する裕坊ですが、担当機種のボーイング717型機の就航都市は、全米の東半分のみ…かつては西海岸への就航もありましたが、ほぼ座席数が同じのエアバス220型機の導入以降、大幅に就航都市の再整理が行われ、西海岸地区ではT字尾翼旅客機の姿は見られなくなっています。

ということで個人的な用事でもない限り、現在の担当機種では西海岸を訪れることはありません…

 

メジャーリーグの球場は、大都市の中心部に建設されていることが多く(デトロイト・タイガース本拠地のコメリカパークもそのうちの1つ )、ここドジャースタジアムもそうだと思い込んでいた裕坊にとっては、立地がやや驚愕ものでした…

ダウンタウンからまずまず近い立地にはあるものの、西海岸ならではの起伏が多い地形を利用。サン・ガブリエル山の麓に位置し、丘を駆け登る場所に位置しています。周辺は住宅に囲まれる立地…車2台がすれ違うのが精一杯の住宅街の道路が曲がりくねり、なかなか思う場所へと辿り着けず、近隣の住宅地をしばらくウロウロしておりました…

 

観戦まではしていないのでなんとなくの雰囲気しか掴めませんでしたが、記憶に間違いがなければ球場正門は外野スタンド側(間違っていたら、申し訳ありません)…

試合開催時以外は門が固く閉ざされているので、中の様子は外からは拝めません…照明のスタンドがフェンス越しに見え、球場であること分かるのがやっとでした。

 

入場門を潜ると、スタンドへ階段を降りていく仕組みなようです。

 

試合観戦はまた次回以降…

 

グッズ販売店へはチケットがなくても訪れることが可能で、チームショップと呼ばれるお店の直下まで車で行くことができます。

永久欠番の番号が燦然と飾られる中にあるのが、チームショップ。

 

ムーキー・ベッツ選手(2018年アメリカンリーグMVP、当時はボストン・レッドソックス所属)、フレディー・フリーマン選手(2020年ナショナルリーグMVP、当時はアトランタ・ブレーブス所属)といったスーパースターでさえ押し退けて、今やすっかりドジャースの顔になった大谷選手。顔写真やグッズが、店内の至る所に並んでおりました。

 

日本人訪問客への意識も高いようで、漢字入りの商品すら並ぶほど。

7月5日(金)は大谷選手の誕生日でもあったのですが、残念なことに当日の大谷選手は3三振を含む5打席凡退でした…

 

 

当日は、こちらも訪れてみたかったリトルトーキョーまで。

 

付近は京都に本店がある都ホテルがあり、車で訪れる際はここを目的地に設定すると便利です。

 

そのすぐお隣には高野山米国別院などもありましたが、

 

どうやら冠婚葬祭の利用客向けの別院らしく、一般開放はされておりませんでした。

近くの通り沿いには日本でもお馴染みのラーメン屋のロサンゼルス支店などもあります。

 

リトルトーキョーの中心といえば、やはりこちら、日本村プラザ…

 

鳥居をくぐると、そこにあるのは裕坊が実際に日本で最近目にしたばかりの光景…

 

すぐに頭に思い浮かんだのが、今年(2024年)2月に開業したばかりの豊洲市場千客万来。 お店の作り、街作りがまさに千客万来そのもので、海をひとっ飛びしていきなり豊洲に飛び込んできたような不思議な感覚でした。

 

平日ではありましたが、恐らく独立記念日前後に休暇を取って訪れていた人も多かったのでしょう。

 

どこもかなりの賑わいでした。

当日は日帰りでのロス訪問で、レッドアイ便に夜10時前には搭乗して、デトロイトへとトンボ帰り…

 

現在は5日勤務へと出勤して、地域航空会社所属時代からすっかりお馴染みになっているメンフィスで長時間滞在。

こちらはメンフィスのダウンタウン内の、ピーボディーホテル。朝夕とホテルのフロントロビーで、可愛らしいアヒルの行列を見ることができます。

 

最近すっかりアメリカでも市民権を得たラーメン屋でのひと時。

 

店内は邦楽が流れ、アメリカのラーメン屋にありがちな余分な装飾がなく、有楽町辺りのラーメン屋を訪れたかのような趣がありました。

 

7月といいますと、各大手航空会社では第二四半期の決算報告が発表されます。デルタ航空の第二四半期は、過去最高の収入額を記録しながらも、純利益額が昨年同期比で3割減。過去最高の旅客数を見込んで、国内線でも国際線に主に投入される大型機材までをも投入して提供座席数拡大を実施したのですが、それによる航空券販売単価下落の圧力に耐えられなかったということらしいです。

 

それでも路線拡張、座席数拡張をペースを落としながらも続けるデルタ航空では、パイロットの新所属先が開設されることが発表され、ボストンが8番目の所属先として加わることになりました。

シンシナティ空港が、パイロット所属先から除外されて以来となる新規開設先。

 

国内線の発着も多いボストンですが、狙いは拡張の対象になっている国際線。

 

現在のデルタ航空におけるヨーロッパ路線の中心機材はエアバス330型機で、A330専用の所属先になるんだそうです。

 

操縦席窓に縁取りのない従来からのA330による運航は現在1日5便で、行き先はアムステルダム(2便)、アテネ、ロンドン・ヒースロー、フランクフルト。

 

新しいロールスロイス製のエンジンを積んだNEOシリーズのA330-900による運航は1日1便で、行き先はパリ・シャドゴール。

機長、副操縦士含めておよそ250名が来年度までに配属される予定になっています。

 

 

 

 

 

次回は、8月にお目にかかります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 2024年6月

米国航空会社に勤務する小型機副操縦士、裕坊です。

以前勤めた地域航空会社から親会社である大手航空会社へと転籍して、2年が経ちました。2024年6月現在、デルタ航空に所属するパイロットは、総勢17,300名。ちなみに裕坊が研修を受講したのは2022年6月からで、2024年6月現在の社内優先順位が12,320番目。入社当時の優先順位が14,000番目ほどだったと記憶しているので、この2年間だけで6,000名を超える採用があったことになります。社歴上類を見ない、超がつくハイペースでの採用が続いておりました。

 

ただここ最近、採用こそ続いてはいるものの、そのペースはやや落ち着き気味。ボーイング社の近中距離旅客機、販売主力機でもあるB737型機の納入停止が影響しています。ただ米国内全体の旅客航空業界を見渡すと、今夏の需要は各社とも軒並み過去最高になるとの予測。その需要に対応すべく、通常は国際線での運用がほとんどで、国内線には投入されることが極めて稀なはずの大型機が投入される場面も目立つようになり…

 

先日は羽田路線にも多く投入されているエアバス350型機に、ミネアポリスからデトロイトまでを搭乗したことなどもありました…

夏休み中は、この運用を続けるようです。

 

ちなみに裕坊自身はエアバス350型機への機種換えの機会も伺っていますが、会社概要を見る限りデトロイト空港におけるA350型機の投入がしばらく増えることはなく、投入拡大はしばらくアトランタとロサンゼルスに限定されるそうですので…

 

このまま入社からの担当機種、ボーイング717型機での乗務が続くことになりそうです。

デルタ航空保有機材で最も小型になるB717の特徴は、地方都市への就航が圧倒的に多いこと。

 

つい先日などは、ウィスコンシン州の州都、マディソンに滞在。裕坊のお気に入りは、我が社の定宿のすぐお向かいにあるブランチ専門店。

 

ここのエッグベネディクトは、大のお気に入り。

 

ちなみにデザートには、いちごショートケーキを注文したつもりが……

デザートのいちごショートケーキではなく、“いちごショートケーキ“とメニューに書かれた、マディソン版いちごショートケーキ(実物はパンケーキ)を注文しておりました…

 

 

ぜんぜんショートやないし……

 

 

州都のマディソン市の中心部には、州議会議事堂もあります。

 

当日の気温は10度台前半とひんやりとしていましたが、雲一つない快晴のお天気で、

州議事堂周辺の建築が、とても映えておりました。

 

州議事堂から10分ほど西へと歩くと、ウィスコンシン大学マディソンキャンパスもあります。

 

北側はメンドータ湖に面していて、当日は様々な色の椅子やテーブルが多く並べられており、

 

リゾートビーチにでもやってきたかのような雰囲気を醸し出しておりました。

 

 

またとある日は、アメリカ合衆国南部へとひとっ飛び、アラバマ州モービルに滞在。

 

この町はニューオーリンズと同じく、かつてはミシシッピ川を中心とする広大な領土、フランス領ルイジアナの一部でした。モントリオールなどもある現在のカナダのケベック州までをも領土にしていた時期があり、その名残で今もケベック州第一言語はフランス語になっています。

現在のアラバマ州モービルは、その領土内の最南東端。フランス領ルイジアナの首都だった時期もありました(1702年-1720年)。

 

そんな経緯もあり、フランス領時代に建築された当時の建築物がダウンタウン内には多く保存されています。

 

町の中心までやってくるとそこには公園もあるのですが、人影はまばら…

やや憩いの場というには程遠い印象で、

 

日の入りとともに閉鎖されるという徹底ぶり…

夜間の治安の不安を抱えていることは間違いなさそうです…

 

この南部の都市のもう1つの顔といえば、

エアバス社の、旅客機最終組み立て製造工場があること。

 

製造がされているのは、ダウンタウンから程近いブルックリー空港内。

 

現在では、北米の航空会社向けの国内線用の単通路型旅客機の製造、最終組み立てラインを所有しています。

 

2016年にはジェットブルー航空に、モービル工場初号機となるA320型機を納入。

2020年以降は、

 

カナダのボンバルディエ社から譲り受けたA220型機の製造も本格化。

 

デルタ航空に新規で納入される国内線用エアバス機はA220型機も含め、全機ここから納入されるようになっています。

 

 

 

次回は、7月にお目にかかります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 2024年5月

米国航空会社に勤務する副操縦士、裕坊です。

写真は、裕坊が入社依頼ずっと乗務しているボーイング717型機。

 

元々の開発はマクドネル・ダグラス社で、DC-9型機の派生型の1つです。当初はMD-95型という機種名で市場に投入される予定でした。

ところが初導入になったのは、ボーイング社によるマクドネル・ダグラス社の吸収合併後。そのためボーイングの冠名をつけた上で投入されることになりました。

 

ボーイング717という名称そのものは、写真にある米空軍空中給油機(ボーイング707型旅客機からの改造機)の型式名称だったのですが、

 

米空軍ではKC-135という正式名称が採用され、B717は実質空き番号のような形になっていました。

 

というわけで、ボーイング777型機の市場投入より後になったにも関わらず、

結局この旅客機をB717と呼ぶことになったという経緯があります。ただ生産期間は短く最終生産は2006年。最終生産機ですら機齢は既に18年。客席数がほぼ同じで市場が重なりながら、旅客機としては最新鋭のエアバス220型機などと比較すると、古さが否めない機体になっています。

 

昨年の6月には、ノースカロライナ州のシャーロット空港へと向かっていた機体が、機首脚が降りずにそのまま機首を擦らせた上での着陸などの事象も発生。

事故詳細調査は現在も続いていますが、どうやら機首脚を飛行中上げたままの状態で支えておく留金の金属が一部で腐食していたらしく、機首脚の動きが制限されたいたようです。

 

事故調査こそ一通り落ち着いたものの、その後の修理までの間運用から外れていましたが、

 

既にそれも終わって、路線へも復活。

先日裕坊が担当した、シャーロットからデトロイト行きの機体になっておりました。

 

実はこの日は5日間勤務の最終日。

 

その5日間勤務の中では、テネシー州チャタヌーガに長時間滞在しておりました。

 

人口およそ18万人と、町の規模自体は大きくはないので、空港もややこぢんまりとしています。

 

フォルクスワーゲン社の米国内初の工場をチャタヌーガ市内に抱えていることから、空港内には現地生産の代表モデルであるパサートが展示されています。

 

チャタヌーガの有名な観光地といえば、ルックアウトマウンテン。市内の中心部からだと、車で南西におよそ15分の距離にあります。

山という名をつけられながらも、実際には高所の台地のような地形をしていて、1番高いところでも標高は海抜700メートルほどしかありません。かつて南北戦争の戦場となった歴史もあります。

 

麓からはケーブルカーで “山頂“ へと向かうこともできます。およそ10分ほどで “頂上“ へと到着するケーブルカーの最大傾斜角はというと…

 

72.7度だそうな……

乗車中は、決して車外には出ない方が良さそうです…

 

もちろんこれだけの急斜角ですので、ケーブルカー自体が全区間を自走できるはずもなく、動力源はロープウェーと基本同じ仕組みで、

線路中央に敷かれたロープによる牽引式となっています。

 

お天気の日の頂からの眺めは間違いなく最高で、

 

見晴らしがいい時などは、一度に7つの州(テネシー以外に、アラバマジョージアサウスカロライナノースカロライナ、ケンタッキー、バージニア)を拝むことも可能。

お天気さえ良ければ訪れたかったのですが、

 

あいにく当日は雨のお天気…

市内に留まって、市街地を観光しておりました。

 

チャタヌーガのもう1つの観光の目玉といえば、こちらテネシー水族館。1992年開業当時は、淡水生物のみの展示だったそうです。

現在でも、淡水生物の展示館としては世界最大級。常時使用されている水量、なんと150万リットルにもなるのだとか…

 

奥に見えるのが海洋生物の展示館で、こちらは2005年に開業しました。

 

チャタヌーガ市内の北側に位置し、テネシー川沿いにあります。

 

チャタヌーガといえば、かつては鉄道の要衡都市の1つでもありました。現在はアムトラックなどの運行はありませんが、駅舎は観光名所の1つとして残されています。

 

当時の名残を残す駅舎は煉瓦建て。 厳かな雰囲気は当時のまま残されていて、天井が高さはシンシナティ駅やカンザスシティ駅とも似ています。

 

駅舎の裏側へ行くと、当時の鉄道車両が展示されていて、

 

レストアされた寝台車を使ってのホテルなども営業されておりました。

 

駅舎内は、一部レストランとしても営業されていて、

 

遥々デトロイトから前日に合流した愛妻ちゃんと共に、こちらで夕食をいただいておりました。

 

ここのレストランの売りは、なんと言っても新鮮食材。特に野菜類は産地直送物に限定していて、全てが採れたての新鮮素材。

しかもボリュームがすごく、このサラダなどは1つの注文を2皿に分けてもらった上で、まだこのボリューム。

 

それぞれビーフ丼に、

 

ポケ丼とを注文したのですが、到底食べ切れる量などではなく、

ほぼ半分以上、お持ち帰りと相成りました…

 

満足感の高いこのレストランの名前は、

STIR。面する通りから向かって、右側にあります。

 

別名チューチュー(Choo Choo)とも呼ばれるこの駅舎は、水族館とは反対側で市内の南に位置し、水族館からだと徒歩30分ほど。

 

もしラクに移動したいのであれば、無料で乗車可能な小型バスによるシャトルでの移動がオススメ。

 

車内は向かい合わせで座る仕組みになっていて、市内を南北に結んでいます。

チャタヌーガそのものは、テネシー州ナッシュビル(北米日産の本社が近くにあります)とアトランタのほぼ中間に位置していますので、この2都市間を移動する用事がある時などは、チャタヌーガで1泊2泊してみるのもいいかも知れません。

 

 

 

また6月にお目にかかります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 2024年4月

米国航空会社に勤める裕坊です。

 

以前勤務していた地域航空会社から、親会社へと転籍して2年。他機種への移行の選択権も手中にしながらも、入社時から継続してボーイング717型機に乗務しています。

元々はマクドネル・ダグラス社のDC-9型機の派生型。胴体後方にエンジンが据えられます。垂直尾翼は尾翼の最上部にあり、Tの形をしていることからティーテイル(T Tail)などと称されるのですが、この形の旅客機は本当に見ることが少なくなりました。

 

運用の関係から丸1日担当便が入らない宿泊滞在が入ることも多く、今も時々ニューヨークに宿泊してはマンハッタンを訪れています。

 

3月はブロードウェイのミュージカルを見学。

 

4月にはセントラルパークへ訪れる機会もあり、

 

園内は桜が満開で、ちょうど見ごろでした…

 

息子くんは今、大学1年生。学費捻出のために最近はニューヨークにいても、道路に停まっているフードトラックからの食事で夕食を済ませてしまうことも…

 

そんな中、最近入ってきたニュースといえば、

ユナイテッド航空で、一時帰休(無給での休暇)の社内募集が始まったことでしょうか…

 

ボーイング737-MAXのここ最近の不具合発生に伴って、連邦航空局からB737 MAXの全機運航停止命令が発令されたのですが…

 

以前からボーイング社との結びつきが強固なユナイテッド航空は、その煽りをもろに被る形となってしまいました。

 

160機超にも及ぶ737-MAXの運航停止によるユナイテッド航空の損失は、なんと第一四半期だけで2億ドル(日本円でおよそ300億円)…

それだけでなく、300機以上の発注をしているMAXの納入もしばらく見込めなくなるとあって、当面の減便は避けられず…

必然的に乗務員も余剰になるとあって採用は停止。それでもまだ余剰が出る見込みで、社内から無給での休暇を募集するに至ったということのようです。

 

2024年4月末現在ではまだ737-MAXの保有機はないデルタ航空ですが、それでも影響がゼロというわけにはいかないのが現実…

この夏は会社史上での最大旅客数を見込んでいるようなのですが、100機超のMAXの納入遅れが必至になるとあって、新規採用はかなりペースダウンすることになりました。

 

保有機材でやり繰りをしながら、この夏は凌ぐという算段…

B717も使用可能な機材は最大限、前線へと送り込まれる日が続いています。

 

 

そんなある日のこと…こんなことがありました。

 

 

舞台は、サウスカロライナ州チャールストン空港。

 

ボーイング社の旅客機組み立てラインが旅客ターミナルからすぐ南にあり、 完成したて、もしくは点検整備待ちの機体などが、旅客ターミナルに隣接する駐機場に停泊しているのもよく見えます。

 

そしてチャールストン空港のもう1つの顔というのが、

米空軍基地の1つであること…

 

全米じゅうに空軍基地が配されるアメリカでも、米空軍が民間旅客機の就航がある空港を共有するのはごく稀なのですが、実はチャールストン空港はその稀有な存在の1つ。

 

旅客ターミナルが空港南側にあるのに対し、空軍基地は空港北西部に位置しています。

 

ただ戦闘機の保有は少なく、停泊しているのはほとんどが大型貨物機で、 その主役は別名グローブマスターという愛称を持つ、C−17貨物機になっています。

 

大型貨物機の停泊に対応するため、駐機場も広いのが特徴。

 

その駐機場を利用して年に1度、航空ショーも開催されます。

 

普段はなかなかお目にかかることがない自家用ジェット機だけでなく、

 

軍用機の公開もあり、

 

直接戦闘機の操縦席などまで見学することも可能です。

飛行機好きの見学者にとっては夢の1日。

 

航空ショー当日には、戦闘機や複葉機などを使ったアクロバット飛行なども開催されるのですが、 安全を期するためにアクロバット飛行中は空港は全面閉鎖され、旅客機といえども一切の発着はできなくなります…

実はよりにもよって航空ショー当日にデトロイトからの往復便を担当していた裕坊……会社からの飛行計画書にも、現地時刻で12時から1時30分までの間、空港閉鎖になる旨の記載がなされておりました…(飛行計画書に記載されている時刻は、協定世界時刻(UTC)。アメリカ東部時間(夏時間中)はそこから4時間を引いて算出します)

 

当日のデトロイトからのチャールストン到着予定時刻は11時3分。

チャールストン空港には、10時45分ごろ着陸していたにも関わらず、アトランタ行き出発便の遅延が影響して、すぐには到着ゲートへと着くことができず…

 

予定から7分遅れての11時10分にゲート到着…

残り50分…(ちなみに、B717は折り返しに平均55分を要します)

 

既に本社運航管理課では、定刻よりも早い出発時刻へと変更をしてくれていました(定刻出発時刻は、11時53分)。

両便ともほぼ満席だったにもかかわらず、30分ほどでお客様のお見送りからデトロイト行きの搭乗まで完了し、出発体制に入ったのは良かったものの…

 

荷物の搬入が始まったのが、なんと搭乗完了後…

 

結局、出発は定刻からですら3分遅れることになりました…(実際に出発したのは11時56分)

設計が古いB717は片側のエンジン立ち上げに1分半を要するため、どうやっても12時の離陸には間に合わない…

 

機内には、完全に諦めの空気が漂いました…

しかしこの手の催し物とは、常に予定の前後左右が付きもの…

 

実際に航空管制では、航空ショー主催者との協議をしてくれていたらしく…

12時5分ごろになって、

 

「デルタ2376便、今から数分間の空きが出るそうだが、3分以内に離陸できるか?」

 

いつでも離陸できるように、両側ともエンジンは立ち上がったままにしておいたので、

問題なし…

 

12時10分離陸…

 

離陸滑走が始まると同時に、客席から拍手が起こったのは言うまでもありません。

それでいながらデトロイトには、定刻よりも数分早い到着でした。

 

 

 

 

今後は月1度で投稿を続けていきます。次回は5月にお目にかかります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 2024年3月

米国航空会社に勤務する、裕坊といいます。

4ヶ月ぶりの投稿になります。

 

前回2023年11月投稿時は、裕坊が現在通うピアノ教室主催のリサイタル直後。

あれから4ヶ月が経過しておりました。大変お待たせしてしまいました…

 

 

ボーイング737型機マックスの購入契約を締結していた、裕坊が1昨年から勤務しているデルタ航空。先日のアラスカ航空の不具合発生とともに、納入予定は大幅に延期。ボーイング社製旅客機の新造機納入がしばらく滞ることになって、やや新規採用のペースを控えることにもなりました。

こちらはサウスウェスト航空で使用されているB737-MAX。従来の737型機とは、機体最後方にある第3エンジンの排気口の形が異なっているので、見分けが簡単につきます。

 

この737-MAXが抱える事情があり、ボーイング製旅客機を抱える航空会社はMAX以外の保有機材を最大限活用する形で、過去最高になると見込まれるこの夏の旅客需要に応える体制を進めています。

裕坊が現在も乗務中のB717型機も、格納庫にしばらく静態保存状態になっていたうちの何機かを再稼働させ、現在ほぼ70機の稼働体制になりました。

 

ちなみに裕坊は入社から2年が経過…デルタ航空では入社後2年間は、機長昇格のケースを除くと入社時の担当機種からの機材変更が原則として認められないという契約。俗に言う『機種縛り』が解かれることになりました。 ただスケジュールの選択順位が大幅に上がり、休日なども選択しやすくなったこともあるので、裕坊自身はしばらくB717に乗務する予定にしています。

 

休日の選択肢が大幅に広がったこともあって、10連続の休日を取得することも可能になり、日本を訪れたことなどもありました。

 

1週間ほどの期間を利用して一時帰国した際には、

浅草を訪れたり、

 

小学生の頃、祖父に連れられて何度も訪れていた銀座を歩いてみたり、

 

新しく開業したばかりの豊洲市場千客万来を訪れてみたり、

海鮮ものだけでなく、果物や肉料理のグリルものでも美味など、豊富な食材に舌鼓などを打っておりました。

 

 

実は、この豊洲市場にちなんだお店が、ニューヨーク州のマンハッタン内で開業しています。

 

その場所というのが、マンハッタンのやや南側にある食材スーパー、ウェグマンズ内。

 

アジア系の食材店も多く入居しているスーパーなのですが、エスカレーターで地下へと降りるとすぐ目に入るのが…

豊洲直送の鮮魚が手に入るという、『さかなや』さん。

 

幟があるのですぐ目につきます。

 

毎週火曜日と金曜日に、豊洲からの直送鮮魚の仕入れがあるんだそうです。

 

普段愛妻ちゃんが好んで口にすることがないハマチを試しに購入したのですが、鮮度が驚愕もので美味しくいただいておりました。

 

地下鉄4番もしくは6番電車に乗車し、9番通り沿いになるアスター・プレイス駅から地上へと上がると、すぐ目に入ります。

 

 

 

ところでこの4ヶ月の間、裕坊はどういった過ごし方をしていたか、といいますと…

 

 

 

我が1人息子が昨年8月末より大学生活を始めたのですが、車で30分とかからない完全通学圏内でありながら大学1年目は強制入寮。我が家に帰ってくるのは週末のみ…

 

我が家で唯一ピアノを弾いていた息子が大学寮へと出てからというもの、せっかく高額のお金を払って購入したピアノを遊ばせておくのももったいない、と始めたのですが、どうせやるからにはとことんやらないと気が済まない裕坊。ここ最近は空いた時間はピアノにしっかりと時間をかけておりました。

 

昨年11月のリサイタルで披露することになったのは、ブルグミュラーアラベスクパッヘルベル作のカノン。

 

1つの到達目標地点として、同じアラベスクでもドビュッシー作のアラベスクを視野に入れたいところなのですが、3連符が続く箇所がある上に、指使いの速度がまだまだ今の技術力では到底追いつかない…

音符こそなんとか半分ほど読んではみたのですが、音程を合わせるのが精一杯で、小節の中に全ての音を入れ切るには到底至りません…

 

そこで小指と薬指のしなやかさこそ必要としながらも、速さは要求されることがない超有名曲、ベートーベン作『月光』に焦点を当てて、何とかほぼ完成に近い領域まで持ってきました。

まだやや辿々しい最後の数小節が完成すれば、とりあえずリサイタルでも披露できるところまでは完成させています。

 

 

ただここからドビュッシーアラベスクへの完成へと近づけるのに、何を次に選曲するのか…

 

 

音の響きがいいことから、ドビュッシー版月光などにも取り組んでいますが、今真剣に視野に入れているのが、ショパン作ワルツの第69番第1楽章。もしくはバッハ作平均律クラービア第846番第2楽章フーガ辺り…ただフーガは基本ハ長調なので、黒鍵が登場する機会自体はそれほど多くはない。

 

まずはある程度の速さを保ちながらも、正確に黒鍵を操る技術を身につけないといけないことを実感しつつ、いつの日かドビュッシーアラベスクを、まずは目指します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 11/20

米国航空会社に勤務する、裕坊です。

前回の投稿から2ヶ月が経っておりました。大変お待たせしました。

 

昨年も今回と同様、2ヶ月ほど空白ができたことがありましたが、この時は選択転籍権を行使して地域航空会社のエンデバー航空からデルタ航空へと転籍し、研修の真っ最中。

現在も乗務している機材、ボーイング717型機への機種移行訓練を2ヶ月に渡って受けていました。

 

こちらの写真は、裕坊が以前所属した会社の主力機、CRJ-900型機。

 

そしてこちらが現在乗務しているボーイング717

両機種とも俗称をTテイルと呼ばれ、機体後方にエンジンが据え付けられているのが特徴。尾翼に直接エンジンからの排気ガスが噴射されるのを防ぐ目的で、水平尾翼垂直尾翼の上部に据え付けられていることから、こう呼ばれます。

 

見た目には共通する部分も多いのですが… 中身は全くの別物…

機体設計が古いために、手動操作を必要とする操作系も多く、ボタン類、スイッチ類をかなり覚えなければならなかったとあって、不器用な裕坊はかなり悪戦苦闘しておりました。

 

 

航空機製造メーカーが同一ですと比較的操作系が近いことも多く、培ってきた経験が生きることも少なくないのですが、全く異なるメーカー同士を乗り継ぐとなると大抵の場合0からの覚え直し…アメリカの航空会社の場合、数ヶ月で機種移行訓練が終わるように研修が組まれているので、勉強のペースも必然的に超がつくほど早いペースになります。

 

 

例えていうならロッククライミングとでも言えるでしょうか…

 

ただある程度機種に慣れてくると、機械の操作そのものは大抵同じことの繰り返しになるので、平坦な道を歩くような感覚になってきます。

ここまで来るのに、平均的にかかる時間は早い人だと3ヶ月。裕坊の場合、6ヶ月ほどを要しました。

 

デルタ航空では最初に任命された機種で2年間を過ごさないといけない社内規則があるので、しばらくはボーイング717型機の乗務になります。

一時はデトロイトから東京への路線の使用機材、エアバス350型機への移行を目論んだこともあったのですが、最近の会社の方針でデトロイトからのエアバス350型機の就航便数は減少(その分、アトランタとロサンゼルスからの就航便を増加することになるんだそうです)。

 

国内線中心の機材でありながら、30時間の宿泊滞在が伴う勤務シフトが多いのもB717ならではの恩恵なので(下の写真5枚は、カナダ・モントリオールで撮りました)、

しばらくボーイング717に乗り続けるつもりにしています。

 

 

そして今回の2ヶ月の空白といえば……最初に貼り付けた写真から、ほぼご想像いただけたでしょうが……

 

 

実はピアノなどを始めてしまっておりました。講師が主催する発表会があったのが、先日の土曜日、11月18日…

とりあえず高校時代などは野球に熱中していた裕坊でしたが、音楽関係は全くの初めてで、もちろんピアノなどは全くの素人…

 

 

普通はハノンやバイエルなどをしっかりと学習した上で、曲へと入るところ(愛妻ちゃんの手解きで、ハノンにはしばらく励んでいたのですが)…

 

 

本来辿るべき過程を大きく飛び越えて…

数ヶ月の突貫工事で、結局ブルグミュラー作のアラベスクを完成させてしまいました。

 

ピアノはおろか、楽器すらまともに触ったことすらなかった裕坊にとっては、新たなロッククライミング

実際にロッククライミングをされる方は、岩の角度によって「寝ている岩」「起きている岩」といった表現で難易度を言い表されるそうですが、裕坊にとってのこの2ヶ月はまさしく『起きている岩の岩登り』…

 

 

何とか人前で披露しても恥ずかしくない水準にまで仕上げたつもりだったものの…

 

いざステージに置かれたピアノの前に座ってみると、 鍵盤が視界から消えよった………

 

 

 

 

まだまだ人生修行です……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 9/20

米国航空会社に勤務する副操縦士、裕坊です。

写真はニューヨークのタイムズスクエアにあるレリックシアター。ブロードウェイ主催のハリーポッターの劇版が上演されています。

 

アメリカの中西部は秋の装い。半袖で過ごすにはちょっと肌寒いことも多くなり、朝晩の気温は10度前後にまで下がるようになりました。

 

出発前の外部点検で駐機場へと降りる時も、気持ちがいい日が多い今日この頃。

 

秋になると中西部の各地域では地方都市が開催するイベント類も多くなり、人口数千人規模の小さな町が賑わいを見せるようになります。

こちらはデトロイト空港から北へと車でおよそ1時間の距離にある、ロイヤルオーク市。

 

アーツビーツイーツ(Arts Beats and Eats)と呼ばれるイベントが開催され、夏休み最後となる労働者の日(Labor Day)には多くの人で賑わっていました。

9月第1週の週末が明けると、アメリカでは多くのところで新学年。我が息子くんも大学生。親元を離れての新生活も始まって、3週間が経っています。

 

夏の旅行シーズンが終わって、航空旅客数が落ち着く9月。旅客機の運用も夏の最盛期に比べると減り、裕坊の勤務中の長時間滞在の機会も増えてきます。

裕坊が乗務するボーイング717型機は機体設計が古く(1960年代)、現在運用中の64機の平均機齢はおよそ16年。

 

エンジン等の故障は今もほとんど優れた機体ではあるのですが、経年劣化による細かい部品の不具合は避けられないのも現実…

 

先日も地上で停泊中の電源供給、さらにはエアコンへの供給が可能な空調施設の役割を担う第3エンジンが故障…

通常はその第3エンジンから供給される圧縮空気を使って、主エンジンを立ち上げるのですが、第3エンジンが使えない場合は外部から高圧空気を送り込んで立ち上げます。こちらは高圧空気の取り入れ口。

 

接続されるのは写真の高圧空気供給機。発動の際は独特の音がするので航空界に長く勤めていると、その音だけで何が起こっているのか分かってしまいます。

空調用の空気供給機と違い、圧縮空気を高圧のまま送り込む必要があるので、ホース半径が小さいのが特徴。庭に水を撒くとき、ホースの先端を摘むとホースの水が勢いよく押し出される原理を使うので、ホースが細い方がエンジンへ送り込まれる空気の圧力も高く保たれるというカラクリ。

 

第3エンジンの不具合は通常の飛行には影響がないので、遅延の対象になることはまずないのですが、油圧系統など重要装備品に不具合が生じた場合は、機体の乗り換えは必至…

夜遅くまで、使用可能な機材の到着を待ったことなどもありました…

 

この時はたまたま空きの飛行機が見つかって、乗り換えて夜遅くなりながらも到着した当日。

 

ニューアーク空港へと辿り着いて… ニューヨークのマンハッタンでの連泊が入った日などもありました。

ちなみにボーイング717型機は、最新航法装置を必要とするラガーディア空港、ケネディ国際空港への就航が現在はなく、ニューヨーク地区では3空港のうちニューアーク空港のみの就航となっています。

 

ニューアーク空港では、デルタ航空は新Aターミナルへの完全移転が終了しています。

 

建て替えが進むラガーディア空港に外装も内装もかなり似通っていて、天井は高くなり、間接照明が効果的に使用され、建物内の雰囲気がとても明るくなりました。

 

ただ到着後の出口通過は、二重ドア方式でしばらく順番を待たなければならず、深夜といえども長い時は10分待ち…

 

狭い敷地に半ば無理やり建設されたようなターミナルなので敷地面積も大きくはなく、お迎えにやってくる車も深夜というのに大渋滞…

時間に余裕がある時は問題ないでしょうが、ミーティングの時間が迫っていたりすると、焦ってしまうかも知れません…

 

さらに早朝深夜は並行誘導路のうちの1つが駐機場がわりに使用されるので、早朝6時前後にプッシュバックしようとする時などは、他の出発便といつも競争…

プッシュバックのタイミングが少しでも遅れると、しばらく待たされるハメになります…

 

前回のマンハッタンでの長時間滞在では、幸運なことに週日の昼間にもかかわらず、ブロードウェイの公演があり、

 

ハリーポッターの劇の上演に訪れることができました。

 

ホグワーツの学校を思い起こさせるような造りのレリックシアター内。

 

ブロードウェイというとミュージカルを思い浮かべてしまい、裕坊自身ミュージカルの観劇と思い込んでいたのですが、

実際は劇の上演でした。週日の昼間の公演ですと、チケットも1枚あたり100ドル前後で買えてしまうので、ハリーポッターのファンの方は狙い目かもです。

 

当日は観劇後はタイムズスクエアの雑踏の中を歩いて、

 

豚骨ラーメン専門店の一蘭で、腹ごしらえ。

 

各テーブルがブース式になっていて、

 

注文用紙を係員に手渡しすると暖簾が下ろされ、

 

ラーメンができると、開いた暖簾からラーメンが渡されるという面白い仕組みのお店でした。

ラーメン一杯が、具材最小限でも22ドル。やや高め…たださすがに味は間違いないです。

 

店内には昭和の世代の人には懐かしい、赤色の郵便受け、

 

さらには赤色のコイン式公衆電話などが設置されておりました。

 

最近ではめっきり数が少なくなったT字型の尾翼を取り付けた旅客機による裕坊の冒険、もうしばらく続きます。