米国航空会社に勤務する、裕坊です。
11月に入ってもしばらく暖かい日が続き、10度台中盤まで気温が上がることもあったデトロイト地方でしたが、
先日はちょっとした冬景色。いつもより暖かい冬になりそうな予報になっているミシガン州ですが、降水量はやや多くなるかも知れないとのこと…
そして秋の季節に入って目にしたのは、米国格安航空会社、スピリット航空の破産法11条申請のニュースでした。
スピリット航空といえば、事業規模は米国内格安航空会社としてはサウスウェスト航空、ジェットブルー航空に次いで3位。(全米の旅客航空会社としては7位)旅客航空シェアは全米内5%ほど。
全米だけでなく中南米への路線も網羅するスピリット航空。機体全体を黄色の塗装が覆い、遠く目でもはっきり判別が可能な特徴のある機体なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
コロナ禍以前は比較的経営も順調に推移していた格安航空会社の一角でしたが、コロナ禍以降、経営的に苦戦が続き、2020年以降は毎年ほぼ5億ドル相当の赤字が続いています。
本来であればドル箱路線になるはずのデンバー空港、アメリカ合衆国の首都ワシントンにあるレーガン空港からの路線撤退まで余儀なくされるほど、業績が芳しくないスピリット航空。
ここ2年間は同業他社との合併を模索して、経営危機を乗り切る戦略へと舵を切っていました。
特にライバルの一社でもあるジェットブルーとの合併交渉は順調に進み、両社による合意の調印がなされ、連邦司法省による承認を待つに至るところにまで漕ぎ着けたのですが、意外なことに司法省からの通知は、
合併案却下でした………
両社を合算しても全米シェアは10%ほど。老舗のサウスウェスト航空の旅客航空シェア17%には遠く及ばないため、確実に承認されると思っていただけに、司法省による判断は裕坊には意外でした。
2008年のデルタ航空とノースウェスト航空の合併(現デルタ航空)に始まり、ユナイテッド航空とコンチネンタル航空(現ユナイテッド航空)、アメリカン航空とUSエアウェイズ(現アメリカン航空)と続いて、サウスウェスト航空によるエアトラン航空の買収などもあった米旅客航空業界。ごく最近ではアラスカ航空とハワイアン航空の合併までも承認になっていただけに、久しぶりに聞く旅客航空業界における合併案却下でした…
ちなみに古くは、経営危機へと陥っていた嘗てのアメリカ随一のフラッグキャリア、パンアメリカン航空もノースウェスト航空との合併を模索し、経営危機を乗り切る方針を固めていたことがあります。
その案件は結果的に流れてしまい、パンアメリカン航空は結果的に完全経営破綻、会社の倒産に到りました(1991年)…しかしこの時は3名からなる投資家によってノースウェスト航空が買収され、合併案が実現しなかったという事情があります。
スピリット航空はジェットブルーとの合併案が否決されたあと、事業規模がスピリットよりもやや小さく、全米旅客シェアがおよそ4%のフロンティア航空との合併交渉へと赴いていたのですが、こちらも結局は不調のままに終わり…
連邦破産法11条の申請へと至りました(2024年11月18日)。破産法11条は日本での民事再生法による手続きに相当します。完全破綻の際に適用となる破産法7条への申請ではありませんので、これまで通り旅客便の運航は続くことになります。
ただしこの5年間での損失額は22億ドル…赤字をこれ以上垂れ流すわけにはいきません。既に保有機全体のうちのおよそ10%に相当する20機ほどをリース会社へと売却。従業員も一部で休職扱いにするなど事業規模をやや縮小し、債権者との再建計画の交渉にあたるなどして2025年初頭までに破産法申請からの再建を目指すことになります。
ここ20年間の全米における航空会社の再建は、同業他社との合併を模索する形で解決してきている事例が圧倒的に多く、合併を伴わない完全独立体での再建の事例は、裕坊の記憶にはほとんどありません。相当な困難が伴うのを承知の上で、経営陣がどのような舵取りで財務危機を乗り切るのか、裕坊は個人的にその行方を追っています。
10月から11月にかけては、長時間滞在でペンシルベニア州の鉄鋼の町、ピッツバーグを何度も裕坊は訪れておりました。
デトロイトと同様、ラストベルトの都市の代表的な町でもあったピッツバーグ。一時期はかなり荒廃が進んで、ダウンタウンはとても街歩きできるような所ではなかったそうなのですが、
再開発が進み、今では観光都市としての立地を確立しました。
並行する川が2本、町を挟む形で流れていて、さらに鉄鋼の町ということもあり、町の至る所に橋がかかっています。
その本数は400本を超えるのだとか…
町の南へと行くと小高い丘もあり、ケーブルカーで丘を上がることもできます。
ちょうど紅葉の時期だったこともあり、秋晴れの中で見渡せる街並みは、絶景そのものでした。
10月から11月初頭にかけては忙しい日程をこなしながらも、続けていたピアノの練習…
11月には裕坊の講師が主催する発表会もあり、
裕坊はベートーベン、月光第1楽章を披露したのですが、
前年に続いて、またも曲の中盤で玉砕……
ステージという魔物に、またも跳ね返されたのでした…
鍛練の日々は、これからも続きます… また12月にお目にかかります。