yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 11/5

米国内の小型旅客機の操縦士をやっている、裕坊といいます。

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湿気がやや多い最近のデトロイト地方。早朝は霧が深い日が続いたのですが、日が射してくる時間になると、

朝焼けの日差しに紅葉が映し出され…

 

そんな時に足を伸ばしたくなるのが、季節限定リンゴ搾りジュースとドーナツが買えるリンゴ農園。

のどかな風景が延々と広がり、

 

農園によっては、柵越しに山羊さんが放牧されているところなどもあったりして、

 

愛嬌ある姿を見せてくれます。

 

ただこの季節、避けられないものといえば……

 

庭じゅうに広がる落ち葉………

 

ブロワーと呼ばれる機械を使って、

 

落ち葉を庭の奥へと寄せ集めて、

 

寄せ集めて…

 

一段落すると…

もう日が暮れかけとる……

 

あとは袋へと落ち葉を詰めるだけ…

 

さすがに寄せ集めるだけでも、クタクタになっておりましたので…

全部を袋詰めするには至らず…

 

それでも、頑張りました…

ミシガン州に住む者ならではの、この季節の風物詩……

 

そして米国のエアラインパイロットのここ最近の風物詩といえば…

契約更改時における、パイロット組合主催の抗議集会。

 

米国の航空会社は、ほぼ全社(地域航空会社の中に、1社例外が存在します)が所属パイロットによる組合を形成していて、通常5年を目処に会社との労働契約が締結されるのですが、ここ最近は契約更改時になっても会社側が更改交渉に素直に応じないため、抗議集会が風物詩化しつつあります。

デルタ航空でも最近になってストライキへの賛成票が多数を占めることになり、先日日本のメディアで報道されるまでになりました。

 

前回の更改交渉は2016年。その時の抗議集会では、制服帽に上着のスーツを全員が着用しての集会だったのですが、

今回はコロナ禍を挟み、更改交渉が異様なまでに長引いていることもあり…

 

ほぼ全員が制服帽を脱いだ上での参加に至っています…

実は各空港内でデルタ航空パイロットたちが制服帽を着用していないのは、そのため…

 

まぁ元々帽子を被りたくないという人は多く、カバンの後ろポケットに挟んだまま空港ターミナル内を闊歩しているパイロットは、以前もよく見かけておりました…

ただ今後デルタ航空をご利用の方の皆さんにご報告申し上げておきますと、ほぼ100%の確率で年内にストライキが起こることはありません…

 

なぜかというと、今も連邦法上効力がある『鉄道労働に関する規定(英語ではRLA:Railway Labor Actといいます)』の縛りがあるため…

鉄道と航空会社の従業員は、労働契約や契約更改交渉における不満がある時でも自由にストライキを決行する権利はなく、合法上ストライキを行うためには、いくつかの経緯を経る必要があります。

 

そのうち最も時間がかかるとされているのは、首都ワシントンに事務所を置く国家調停庁(NMB:National Mediation Boardといい、従業員はわずか38名)による労使間の仲裁を経ること。

 

調停庁から具体的な仲裁案が提案され、再び労使間における協議を重ねた上でそれでも再び隔たりが大きい時は、交渉の最後の日から30日間の冷却期間へと入ります。

それでもお互いが平行線のまま締結に至らなかった場合に限り、ストライキが合法的に許可されることになります。

 

ちなみに米国内では、1番最近では12年前の2010年初夏にスピリット航空パイロットによるストライキがありました。

 

そもそも「鉄道労働に関する規定」は、19世紀にボルチモアオハイオ州を結ぶ鉄道会社が、1年の間に従業員の給料を3度も下げたことから、大きな抗議活動が起こったことに端を欲したのですが…

当時は国の大動脈の役割を担った鉄道。流通が止まってしまうとアメリカ全体における経済の停滞を波及させかねないという事情が大きく関わっていました。ただし、現行法が施行されたのは、もう今から80年以上も遡る1936年…

 

到底現在の状況を反映した法律とは言い難く、労働者の立場からすると労使交渉の大きな足枷になっていることは間違いありません。鉄道会社の労働条件は現在に至るまで思わしくないようで……

中でも北米最大級の貨物積載量を誇るBNSF社(本社、テキサス州フォートワース)では、現在進行形で労使交渉が大きく決裂したまま、不穏な空気を抱えています。

 

BNSF社は、最近になって各労働者に勤務実績をポイントで評価するという、一見フェアにも見える制度を導入したのですが、実は家族の扶養のための休暇や病欠という、本来寛容であるべき休暇ですらポイントが次々に減るという仕組みだったらしく、組合は激怒…

先ほど説明した30日間の冷却期間は既に9月16日(金)に失効…

 

急遽大統領のバイデンさんが仲介しての、緊急調停を招集する事態にまで至っています。

 

航空会社を一瞥しても、最近になってユナイテッド航空パイロット組合が、会社からの昇給案を拒否したのに続いて、

 

アメリカン航空も会社案を拒絶…

 

フランスでは、航空管制官が昇給を要求して1日ストライキを実施し、当日はパリのシャルル・ド・ゴール空港を発着する便の半分が欠航…

裕坊は必ずしも組合推しではありませんが、現状に見合う労働条件への交渉には会社側も素直に応じて欲しい、に一票。裕坊の憶測では、デルタ航空の契約締結はおそらく年明け…毎日送付される組合からのメールを読みながら、契約交渉の成り行きを見守っています。

 

 

そして数日後にはいよいよ久しぶりの出勤。

 

しばらく水漏れが続いていた水道の元栓のことが、頭から離れませんでしたが……

 

なんとか漏れが完全に直りました……

 

 

 

 

 

やれやれです…