「アメリカ合衆国」という単語を耳にして日本人の頭の中に浮かんでくる言葉は、人それぞれ。それでも『契約社会』、という言葉を聞いて、アメリカという国に当て嵌まらない、と感じる人はまずいないでしょう。それほどまでにアメリカとは契約社会、至る所で契約社会。日本でも車や住宅の購入時は、ローン会社や保険会社との契約は付き物。レンタカーを借りる時でも、契約書にサインをするのは日本でもよくある話。製薬会社でのサラリーマンの経験がある裕坊にとって、契約社会であるアメリカと日本との違いを大きく感じたのは労働契約の存在でした。
既に大手の航空会社へと入社して1年。その間もパイロット組合と会社側が締結している労働契約の中で、裕坊はパイロットとしての業務を遂行しています。お給料の具体的支給金額は、1セントの単位に至るまで細かく記載されていて、担当機種の選択、配属先の選択方法、勤務体系(空港出勤時刻、拘束時間、担当便数の上限などなど)、そのページ数は我が社、デルタ航空のパイロット組合契約では、なんと568ページにも上ります…
誰がそんなページ数を、読みこなすっちゅうねん……と思いがちなのですが、それを多くの従業員が読みこなしてしまっているのが、契約社会であるアメリカというお国柄……
例えば……
第23条、11項目、C規定、条文11に記載されている内容では、空港出勤時の規定で州外通勤者への駐車料の一部が会社負担になる………
第25条、21項目、A規定、条文3では、スタンバイの際の呼び出し時刻が18時間から2時間へと短縮された際、休日の権利が1日発生して、それを勤務に振り替えた場合は最低保証給に対して給与が5時間分加算される……などなど
こんな条文をまさに生き字引のように記憶していて、規約違反が見つかると間髪置かずに本社内の乗務員勤務管理課、または組合へと問い合わせの電話……まぁ労働契約書の記憶能力に関しては、頭抜けて世界一であることだけは疑いの余地すらありません…
大抵パイロット契約は3年から5年おきに更新される条文が記載になっていて、契約締結失効が逆算すること1年前から大抵の場合、次の契約更改交渉が始まります。
デルタ航空では、パイロット契約は2019年に失効。失効後は失効時の契約が履行されることが通例。2020年以降のコロナ禍のこともあり、契約更改交渉はかなり伸び伸びになっていました。本格交渉が再開したのは、客足の戻りに本格的な波がやってきた2022年以降。契約交渉は思うようには進行しない中、昨年度中の締結の見込みはほとんどないと見られていたのが、年末になって驚きの仮契約締結。そしてその後様々な経緯を経て、この度3月1日(水)に正式に新たな契約の元での勤務がスタート、ということになりました。
内容は基本的には、従来の契約が元になっていて、そこに昇給、有給休暇の改善、スタンバイシフトの改訂などが加えられています。ページ数は以前と変わらず、568ページ……
本は割と好きで、子供の頃からそれなりに読んではきましたが……
お給料もちょっと上がることですし、読んでみるとしましょうか……