yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 5/9

米国小型機専門、旅客航空会社に勤めている、裕坊と申します。こんにちは。

コロナウィルスの被害を世界で1番大きく受けているアメリカ。国内の旅客航空会社は、需要大幅減に対応して旅客便も大幅減便。昨年の同時期に比べると、私たちの仕事も半分ほど減っています。裕坊が住んでいるミシガン州では、今も外出規制が発令中(5月28日(木)まで延長になりました)ですので、買い物などに出かける時、お天気のいい日のお散歩などを除いては、仕事がお休みの時は裕坊も自宅に篭りきり……ただ平常時は家族が仕事や学校で家にいない日を1人で過ごすことも多くあり、裕坊自身は家で過ごすこと自体は苦にはなっていません……

 

中にはフェイスブック等で1日も早い外出規制の撤廃を訴える人もいたり、過激な人の中にはミシガン州の州議事堂に乗り込んで、声高に外出規制の撤廃を叫んだりする人もいました……

ただ調べてみると、それはやっぱり少数派……

 

ABCニュースと世論調査イプソス(ipsos)が行った調査によると、米国市民のうち64%が性急な外出規制の解除には反対しているそうです。

ただアメリカの場合、支持する政党によって考え方も極端に分かれます。民主党支持層、民主党員はほぼ例外なく外出規制の撤廃に反対の立場を貫いていますが、全米の市民全体で見ると3割強は撤廃に賛成。その9割以上が共和党支持層か共和党員。

 

共和党支持層、保守層に根強くあるのは、伝統的に「小さな政府」を理想に掲げ、政府は国民生活や企業活動には関与すべきではなく、できるだけ自由にさせるべきだという考え方。国民皆保険アメリカでなかなか導入に至らないのも、保守層の強い反対があるから。共和党支持層の間では「他人の健康のコストを、なぜ自分が負担しなければならないのか、健康管理は自己責任であるべき」という理念が深く浸透しています。

 

保守層にとっては、コロナウィルスへの対処とて自己管理の範囲内……自分が経営するお店であったり工場であったりなどを、政府の方針で閉鎖させられるのは、彼らにとってはガマンができない、という構図。

政府の緊急助成金が給付にはなっても、ビジネス運営上の固定費が給付金を上回っている場合などは、焦りもあるでしょうし、気持ちは分からなくはない……アメリカの場合は、各州の権限の方が連邦政府のそれよりも上のことも多く、都市封鎖、あるいは解除などは大抵は州の判断に委ねられますが、各州の州都で時々都市封鎖解除を求めるデモが発生するのは、それがかなり影響しています。

 

 

ただ裕坊思うに、ここはやっぱりガマンのしどころ。相手は人間ではなく、未だに我々人間が免疫を持たないウィルスですし、そもそも都市封鎖の第1の目的とは治療に当たっている医療機関、医療従事者の方達への負担を減らすこと。いざコロナウィルスに感染して肺炎が重症化し、治療が必要になった時に医療機関の人的、設備的な余力が残っていなければ、何の治療も受けられなくなってしまいます。それが俗に呼ばれる「医療崩壊」……医療崩壊だけは、絶対に避けなければいけません。

写真のニューヨーク州クオモ知事も、通常病棟、集中治療室の病床を3割を空けておく、ということを都市封鎖の解除に当たっての最低限の条件として、はっきりと明文化しています。

 

一時期感染が急拡大したニューヨーク州では、患者用のベッドが圧倒的に不足する事態となって、通常病棟では到底ベッドが足りなくなり、

 

廊下や資料室、各検査室などにまでベッドが溢れる事態となりました……

 

ニューヨーク州では死者が3月下旬から4月上旬において、夥しい数を記録することになり………

既に5月9日の時点で、2万6千名を数えるまでになっています……

 

だというのに、未だに共和党支持者の中から、致死率はインフルエンザのそれと変わらず、2018年から2019年に全米で猛威を振るったインフルエンザと死者数はあまり変わらない、と言う者まで出てくる始末(大変不謹慎ではありますが、死者の数を単純に比較すると、2018−2019年におけるインフルエンザの死者数は全米で約61,000名、コロナウィルスは5月9日時点で78,800名となっています)……

 

死者の数がインフルエンザと比較してどうの、1%以下の罹患者や死者のために数兆ドル規模の経済の犠牲は払えない、という理論は、医療の現場のことを考えると、ちょっと無理がある……というのが裕坊の意見です…

 

ちなみにニューヨーク州では、新規感染は徐々に落ち着きつつあり、セントラルパークにあった臨時病院や、ハドソン川沿いに停泊していた病院船などは、既に撤収されました。

ただ、私たちのコロナウィルスへの免疫自体が獲得されたわけでは決してありません……治療薬候補は次々に上がってきていますし、改めて今必要なのは「時間稼ぎ」……裕坊も本当に微力にしかなりませんが、「時間稼ぎ」に少しでも協力します。

 

少しずつ外出制限の解除に伴って、ほんの少しずつですが、航空機を利用する乗客の数は増えてきているようです。先週の金曜日(5/1)に、全米の空港で保安検査場を通過した人の合計は17万名。そして今週の金曜日(5/8)の合計の保安検査場通過者、21万5千名。

ただまだ昨年の同時期と比べると、航空機利用者の数は10分の1以下。地方都市を出発する便の中には、未だに一桁の乗客数も珍しくありません。

 

そのため、デルタ航空系統の旅客便では、車で移動が可能な範囲の近辺空港の旅客便を統合して対応することになりました。5月13日(水)から適用になります。

・シカゴ地域(ミッドウェイ(MDW)、オヘア(ORD))はシカゴ・オヘア国際空港(ORD)に統合。

・ニューヨーク地域(ケネディ(JFK)、ラガーディア(LGA)、ウェストチェスター郡(HPN)、スチュワート・ニューバーグ(SWF))はケネディ空港(JFK)、ラガーディア空港(LGA)の2空港へ統合。

・ボストン地域(ボストン(BOS)、マンチェスター(MHT)、プロビデンス(PVD))はボストン・ローガン国際空港へ、

バージニア州ノーフォーク地域(ノーフォーク(ORF)、ニューポートニューズ(PHF))はノーフォーク空港へ、

クリーブランド地域(クリーブランド(CLE)、アクロン・キャントン(CAK))はクリーブランド・ホプキンス国際空港へ、

・ロサンゼルス地域(ロサンゼルス(LAX)、ハリウッド・バーバンク(BUR)、ロングビーチ(LGB))はロサンゼルス国際空港へ、

・サンフランシスコ地域(サンフランシスコ(SFO)、オークランド(OAK))がサンフランシスコ国際空港へ、

それぞれ統合されることになりました。

 

 

裕坊の次の出勤、今のところ来週の土曜日の予定です。