yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 2025年5月

米国航空会社に勤務する副操縦士、裕坊です。

 

就学期間が実質8ヶ月ほどしかないアメリカの公立大学。4月には授業はほとんど終わり、試験が終わると5月初旬には夏休みへと入ります。息子くんは大学の2年目を修了。アパートを引き払って荷物の一部をレンタルスペースへと預けてきました。

 

他の学生も次々と荷物の預け入れに来る中、親もカゴを引っ張りだしてのお手伝い…

 

デトロイト地方でも比較的暖かい日が多くなり、時には25度近くになることもあります。ただ5月のアメリカ中西部は寒い週と暖かい週とが交互に訪れることも多く、気団が擦れ合うところでは前線が発生して、入道雲が上がることも少なくありません。 先日は担当した3便全てが、お天気の影響で通常の飛行経路からの大きな迂回を余儀なくされていました。

デトロイトからミズーリ州セントルイスへの往復便の航跡。大きな積乱雲がインディアナポリス周辺に上がっていて、両便とも大幅に北回り…シカゴ付近でも大きな積乱雲発生していて、シカゴ・オヘア空港へと向かう便が軒並み上空待機を課せられる日にもなっておりました…

 

そして当日の最終便、ニューアーク行き。遅延およそ30分。

 

遡ること2週間前に担当した、ミネアポリスからのニューアーク行き。遅延は1時間30分…

この時もお天気の影響は若干あったものの、直接的にはニューヨークの航空管制の機能低下に影響されての迂回になっていました。通常はニューヨーク拠点の航空管轄センターの空域を通ってニューアークへと向かうのですが、この時はボストン管轄空域を経由…

 

定刻から1時間27分遅れての到着になり、到着時刻は午前1時を回っていましたが、当日は日中の遅延時間がなんと4時間22分…裕坊が担当の便もすぐには離陸許可を与えられず、離陸前におよそ1時間の地上待機が入っておりました…

日本でもニュースで取り上げらていますが、ニューアーク空港では航空管制機能が大幅に低下しています。お天気などの影響がある時は、ニューヨークへ向かう旅客便が1〜2時間遅延するのは珍しくないのですが、さすがに4時間を超える遅延は稀…

 

原因になっているのは、航空管制を司るシステムの老朽化と人員不足。

 

特に航空管制で使用されている装置は老朽化が顕著で、

現在でもフロッピーディスクが現役として使用されているのは、先日ニュースでも取り上げられたばかり…

 

レーダー機能もかなり経年劣化による老朽化が顕在化していて、一時的に各航空機の位置の把握ができなくなるなど、経年劣化が隠せなくなってきました。

 

航空管制官の慢性的な不足も表面化しつつあります。全米でおよそ3,000名が足りないとされ、長時間労働を余儀なくされる環境になっているそうです。

ニューアーク管制区ではたびたびレーダーの機能停止などまでが発生し、職場環境に愛想を尽かして退職した人もいたのだとか…

 

さらに要因として重なったのが、ニューアーク空港の主要滑走路の工事…

200トンを超える大型旅客機が頻繁に離着陸する空港では、滑走路のコンクリートの定期的な張り替えは必至…

 

主要滑走路の工期が以前からこの時期に予定されていて、遅延に拍車をかけることになりました。

並行滑走路のうちの西側の滑走路(4L/22R)が通常は離陸用として供用になるのですが、工事のため閉鎖中。

 

施設の刷新と人材補充は一朝一夕では到底解決できないので、当面はニューアーク空港発着の便数を制限することで乗り切ることになりました…

全米の各主要空港の受け入れ可能な発着便数は、滑走路1本につき平均的に1時間約60便。それをおよそ半数となる30にまで減らした上で対応することになるそうです。

 

ニューアーク空港を基点空港の1つとして運用しているユナイテッド航空は、既に1日40便の減便を実施して対応しています。現在でもレーダー機能障害はたびたび起こっていますので、さらなる減便も必要になるかも知れません。

 

2023年8月に新Aターミナルが開業し、空港ターミナル施設の刷新は続いていますが、航空管制設備の刷新も急務になっています。

 

ちなみにニューアークでのデルタ航空の契約先ホテルは3ヶ所。通常は大都市でも2ヶ所の契約になるところ、3つのホテルとの契約が交わされる珍しい空港になっています。短時間滞在における宿泊先は空港最寄りのホテルで、13時間以上17時間未満の比較的ゆったりの滞在の際は、ハドソン川の西にあるニュージャージー州側で宿泊。

ハドソン川の向かいに高層ビル群が見える立地のホテルに宿泊しています。

 

ホテル付近には川沿いのボードウォークなどもあり、お天気が良い日は高層ビル群を眺めながらゆっくりと過ごすことも可能。

 

ニュージャージー州は、中西部に比べると物価は比較的高めではありますが、マンハッタンと比較すると明らかに安め。ハドソン川の地下を通ってマンハッタンへ10分ほどで行けてしまう地下鉄(Path train)がありますので、ニューヨーク周辺で比較的安価で宿泊したい時には、選択肢として考慮しておくのもいいかも知れません。

 

ジャージーシティと呼ばれるハドソン川沿いの都市からだと、世界貿易センターの真下まで繋がる路線と、タイムズスクエアへと直結する2路線があります。

 

ジャージーシティには路面電車もあり、市内移動は便利。

 

街並みはニューヨーク周辺とよく似ていて、

 

くら寿司もあります。

 

17時間以上の長時間滞在の時は、マンハッタンでの宿泊。

 

今年に入って契約ホテルが変更になり、現在はグランドセントラル駅直結のホテルに宿泊するようになりました。

 

立派な駅舎のグランドセントラル駅構内。

 

厳かな駅舎を保ちつつも、鉄道駅としての機能が失われる都市が多いアメリカにあって、今も鉄道の拠点としての機能を保つグランドセントラル駅。

 

路線数も豊富。

 

クイーンズを経由するロングアイランド鉄道は地下深くからの発着で、プラットホームへと続くエスカレーターは、東京駅の総武線地下ホームへと続くエスカレーターさながら。

 

30時間滞在が入る時もあり、その時は1日ニューヨークで過ごすことも可能。先日は縁あって、ニューヨークに長く滞在している現地日本人の方にお会いする機会にも恵まれました。

 

当日は快晴でブルックリンから拝むマンハッタンのビル群を見る景色が絶景。

 

川沿いには憩いの場となる公園(ガントリープラザ州立公園)などもあり、

 

気持ちのいい日差しの中で、ゆったりと過ごす人で賑わう1日でした。

 

 

 

 

また6月にお目にかかります。