yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 6/12

アメリカの小型旅客機専門の航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。

コロナウィルスによる影響が航空業界全体に大きく及ぼし、乗務員たちもほとんどが自宅にて待機状態……裕坊が所属するデトロイトは、110名の機長が所属。そのうち57名が航空業界で欠員補充要員で、裕坊自身も今月は補欠……フライトの数はまだ増えておらず、今月はまだ一度も操縦桿すら触っておりません……本来であればこの時期は、4日間飛んでは2日の休日、時には6日連続のフライトをこなして休日は1日などというスケジュールは当たり前……

 

それが今月のフライト、未だにゼロ……今後の予定も今のところ、ナシ………

そんな中、来月のスケジュールの入札が始まりました。裕坊が勤めているのは、デルタ航空の子会社。乗務しているのはCRJ−900型機というリージョナルジェット機で、客席は76名仕様で地方路線が中心。今月6月の計画飛行時間は、全社合計で9,285時間。 それが7月度は一気に増えて、全社で16,365時間。

 

今月と比較して7割増し……

急に強気に出たなぁ、とも思われるのですが、それでもまだ通常の半分以下……コロナウィルスの影響が全く考慮されていなかった3月の計画を見てみると、総飛行時間は35,117時間でしたので、まだまだ平常時の半分以下……現在では感染防止策として、76名仕様の旅客機を満席にせず、乗客同士の距離を保つために座席販売数を制限していて、1便当たり発券しているのは40まで。

 

CRJシリーズの客席は、通路を挟んで両側に2席ずつ。(ファーストクラスは、通路を挟み、片側が2席で、反対側が1席)

この2人がけの席に1人ずつお座りいただくことでウィルスの蔓延を防ぐ、という手段を取っています。ミシガン州では外出制限が緩和されつつあり、人の動きも増えていて、その中で搭乗率を6割前後にとどめておく必要があるので、本数をここ最近の需要増に合わせる形になったものと想像します。 さらには親会社であるデルタ航空が、日計算でまだ赤字状態………少しでも赤字解消へと舵を切りたいという本音もあるでしょう。

 

国際線の需要も徐々に回復しつつあり、バハマカンクン(メキシコ)、アルーババミューダ)、ボゴタ(コロンビア)などの中南米行き旅客便などが再開されるようになってきました。今後の旅客便数については、需要の増減に応じて臨機応変に対応するようです。

 

ただコロナウィルスの感染が収まっているわけでは決してなく、病院での受け入れ態勢に若干の余裕が出てきているだけのこと。夏の時期は私たちの免疫力も上がりますし、ウィルスの一般的な法則がコロナウィルスにも当てはまるでのあれば、この時期はウィルス蔓延も一段落。3月の一番ヒドかった時期に比べれば落ち着くのも納得できます。

 

 

でも絶対に第2波はやってくる。その為の備えはしておかないといけません……

 

 

本当であれば、アメリカとしての大統領だけではなく世界的にも影響力が大きいトランプ大統領には、せめて自らコロナウィルスへの対策で世界を牽引し、自国の感染症対策なども強く宣伝してほしいところなのですが……恐らく氏の頭の中は、今年の選挙戦のことでいっぱいに違いない………

 

フォードの工場を見学の際には、工場長の強い勧めでマスクをしてはいたものの、

 

最近は選挙戦演説でも一切マスクをつけることなく……

結果的にマスクをつけている上の写真は、とても貴重な一枚になりました。トランプ大統領がマスクをしないのは、マスク=新型コロナという全米に宿る概念があり、コロナが蔓延していて大変だという懸念を与えたくない、ということなのかも知れません………

 

ただトランプ大統領の考え方が、ここアメリカでも極端なのかというと………

 

実はそうでもなく、むしろ保守層の間ではむしろ標準的な考え方にすらなっています。元々共和党支持者は、特にレーガン政権以降は『小さな政府、税の削減、規制の緩和』を徹底して掲げていて、『勝ち取った自由の権利』を声高に強調する徹底的な自由主義者たちの集い。

保守派にとっては、コロナ蔓延下でも経営するお店の営業を続けるのは『彼らの自由』。

例え感染防止に役立つと理解していても、見た目がよくない上に、着け心地が悪いので、マスクをしないことだって『彼らの自由』。

外出規制で以って自分たちの『行動の自由』を制限されるのは、長年の闘いの中で勝ち得てきた「自由の権利の『侵害』」………

裕坊にはフェイスブック上に航空業界の乗務員仲間の友人がいるのですが、彼らの投稿を見ていても、保守派の間では、

『たとえ200万人が感染していようとも、感染率で換算するなら1%にも達しておらず、外出規制をかける意味はない』

『死者数は10万人ほどで、人口の1%にも遠く及ばない。2017年から起きたインフルエンザでもほぼ同等の死者数が出ている(実際には、およそ62,000名)』

が当たり前……

 

民主党大統領候補者のジョー・バイデン氏のマスク姿を見るにつけ……

「そんなにコロナウィルスが怖いのか、臆病者さん」

「コロナウィルスがどこにいるのか、教えてくれよ」

と嘲笑する投稿なんて、日常茶飯事……

 

民主党支持者はマスク着用を徹底し、共和党支持者はマスクを拒否という構図が出来上がるほどの徹底ぶり……たった一枚50円ほどの小道具が、政党支持の象徴にすらなっています……

 

現在のアメリカにおけるコロナウィルスによる死亡者数は、6月12日(金)現在で、114,669名。対人口10万人当たりで換算すると、およそ35名の方が亡くなっている計算になります。アメリカの人口は、日本のおよそ3倍ですから、同じ比率で死者数が出ていたと仮定すると、日本での死者数は35,000人(実際の死者数は、6月12日(金)現在で924名)を超える計算になり、もしこれが本当に日本で起きていたとすると、恐らく日本はパニック状態に陥っていたことでしょうが、アメリカでは保守層が圧倒的に強い中西部だと、『こんなの大したことない……何で営業許可を出さへんのや』という感覚……

 

ただ規制緩和により、アメリカでは一部の州で報告感染者数は上昇しつつあります。数字にはちゃんと表れます。検査体制拡張で報告者数が増えたことも要因の1つにはあったようですが、入院者数が実態を物語ります。既にテキサス州では、入院者数が3日連続で過去最高を更新。ヒューストンでは、市長がプロフットボールNFLの競技場を、臨時病院に転用する考えを表明しています。

写真は、会見するシルベスター・ターナー、ヒューストン市長。

 

アリゾナ州でも入院者数が過去最高の1,291名に上り、州保健当局が各病院に集中治療室の収容能力をあげるように要請したそうです。集中治療室の占有率が75%にまで上がっているのだとか……… ノースカロライナ州でも、集中治療室の病床の空きが、13%まで減少。サウスカロライナ州フロリダ州アーカンソー州でも前週比で増加率が30%を超えました。

本来ならこれから数ヶ月は感染数が落ち着き、秋以降への第2波に備える時。何の対策も取らずに放置するとどうなるか、ブラジルを見れば明らかなはず……

 

そのブラジル、報告感染者数も死者数も、いずれもとうとうワースト2位の地位へと躍り出てしまいました………(6月12日(金)現在、報告感染者数:828,810名、死者数:41,828名)。ブラジルの各医療機関が大変な状況になっているのが、容易に想像できてしまいます。インフルエンザと比較することなど、全く意味はありません……

 

 

まだまだコロナ渦が続くことだけは確かです。