yuichibow’s blog

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 6/13

米国リージョナルジェット専門航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。

アメリカでのコロナウィルスによる航空旅客便の大減便が、3月下旬から本格的に始まって以来、約3ヶ月。一時期は平常時と比べて90%以上の減便措置がなされておりました。

 

減便措置が行われながらも、3月から4月にかけては、乗務員は残り少なくなっていた定期便を運航するのに、ほぼ通常通り出勤していましたので……

こんな風に乗客の姿が全く見えない中でも、ずっと行き来を続けておりました……

 

すれ違う人は、社員証や乗組員証を胸からぶら下げた、従業員だけという有り様……

 

お店も軒並み暖簾を下ろして、

 

出発の準備が整いながら、出発直前になって欠航が決まったこともありました……

今でも覚えているこのニューヨーク・ケネディ空港発、ジョージア州サバンナ行きの往復便。この時は往路便の予約が2名、復路便が1名だったのを覚えています……

 

一部では電気代節約などのために、ターミナルの一部が閉鎖にまでなる事態に……

 

各航空会社では、運航の効率化を図るために、一部の空港への就航を取りやめたり、保有する機体の半分以上を空港の駐機場に一時待機状態に置いてみたり……

 

一部の機材の退役を前倒しにするなど、保有現金の枯渇を防ぐ手段を、次々に繰り出してきました……

こちらは、マクドネルダグラス社製MD−88型機による最後の旅客便となった、デルタ航空DL88便の最後の勇姿。この機体も、既にアラバマ州の空港で保存状態に置かれています。

 

 

ただアメリカの多くの州では感染は落ち着きつつあり、経済再開の方向へ舵を切り始めています。秋以降の感染再拡大には備えないといけないはずなのですが、社内における今後の予測などに目を通していると、既にコロナによる影響は遠くへと過ぎ去ってしまったと思わせてしまうものばかり……社内報によれば、まだ感染の行方、需要の推移などには注視していくとの但し書きもありましたが……

 

裕坊が勤めるエンデバー航空(デルタ航空の完全子会社)では、無給による一時帰休を斡旋するなどして人件費の節約に努めていたのが、客室乗務員に関しては、一転して8月以降は全員を呼び戻す方向だそうです。同様に、各便の運航計画の作成などに当たる運航管理の職員なども、夏期の一時的な増便に伴い、1人当たりの勤務時間を増加するなどして対応するそうです。パイロット向けに一時は交渉が進められていた早期退職制度。需要回復に伴って延期、もしくは制度そのものの廃案の可能性も示唆されることになりました。

 

便数全体で見てみると……

コロナウィルスの影響が出る以前は、デルタ航空本体で1日平均の旅客便数が3,203便、子会社である私たちエンデバー航空は902便。昨日6月12日(金)の運航実績は、デルタ航空で750便、エンデバー航空で311便でした。7月以降のエンデバー航空における平均運航便数は、今のところ510便で、8月の最盛期には1日最大840便の運航を予定しているそうです。乗客数の推移を見ていても、一時は一桁台の乗客数が続いていたのが、搭乗率全体で50%にまで回復しているそうです。

 

空港での運航状況も少しずつ変化が現れ始め、ほぼ2ヶ月に渡ってリージョナルジェット機による運航を取りやめていた、ニューヨーク・ラガーディア空港では、

便数こそまだまだ少ないものの、6月2日(火)から4便が再開しました。ケンタッキー州の北端に位置するシンシナティ空港と、ノースカロライナ州の州都ローリーへ、それぞれ1往復が始まっています。

 

新しい『新常態』も取り入れられるようになっていて、全米のほとんどの航空会社では、出発前には入念な除菌作業をやっていますし、

最近では大きなタンクを背中に背負って、スプレーの噴霧までやっています。

搭乗の際には、マスクの着用が必要になり、

 

乗務員も含めて、搭乗前の体温測定も行うようになりました。

最近では、おでこからの検温の装置が普通に使われるようになっています。

 

一時はオンラインによる年次講義座学を模索していて、オンライン研修用のアプリの開発に着手したこともありましたが………こちらは結局止まったままになってしまいました。コロナウィルスだけでなく他の感染症が急拡大した場合に備えて、アプリだけでも開発していてもよかったのでは、と思っていたのが……全てが従来通りの方向に向かって走り出しています。やはり『今まで通り』というのが心地いいのでしょう……

 

 

コロナウィルスの感染率や死亡率などを見ていると、報告されている数字を見る限り、感染率が世界で最も高いカタール(6月13日現在、報告感染者数:78,416名、同死者数:70名)を見ていても、対人口比率での感染率は2.8%。死者数が人口比率で1%超えた地域は、今のところはまだありません。アメリカではそれ故、特に保守層の間では、コロナウィルスはパンデミックとは呼ばない声があるのが事実………

 

しかし3月の感染爆発期のニューヨークの実態を思い返してみると………

 

病床が足りなくなり、集中治療室の病床もあっという間に埋まってしまって、

 

一時は資料室や廊下などにもベッドが置かれて、治療が続いた時期がありました……

 

懸命の治療にもかかわらず、亡くなる方は後を絶たず………

 

遺体安置が追いつかなくなって、冷凍トラックが病院に横付けされ、そこに遺体を保管した時期すらありました……

アメリカの保守層の一部で叫ばれる、『死者が人口比で1%にも満たないのに、パンデミックと呼ぶのは大袈裟だ』という理論は、どう考えても無理がありますし、明らかに暴論だと思います。

 

ここ最近の規制解除や各種の営業再開にしても、感染そのものが100%終息してのものではなく、病院の受け入れ態勢に若干の余裕が出てきたから………免疫力は血液の循環にほぼ比例しますから、寒くなる秋以降はどうしても免疫力が下がりますし、特に冬場以降になると喉が乾かなくなって水分補給の頻度が下がるために粘膜が乾燥しやすくなり、そこから冬場に特に強いウィルスが猛威を振るうようになります。

 

もう一つ気を付けておかなくてはいけないのが、コロナウィルスによる後遺症。完全な無症状のまま回復すれば影響は小さいのかも知れませんが、軽症といえどもコロナウィルスによる肺炎の症状が出ている時は、肺胞の一部だけが炎症を起こす細菌感染からの肺炎と違い、肺全体に炎症が及んで、間質性肺炎に近い症状が残ることが、最近の研究で分かってきました。

一旦間質性肺炎同様の症状が出ると、肺細胞の繊維化が進んで肺細胞が硬くなってしまい、十分な量の酸素が体内に取り込めなくなります。裕坊の父親は間質性肺炎により6年前に他界しており、その症状を間近に見ていましたが、酸素が体内に取り込めないことの苦しさは、見ていてとても辛かったのを覚えています。

 

 

夏の間は免疫力も上がりますし、無事に乗り切れるかも知れません。経済活動の再開で、しばらく欠員補充要員を務めている裕坊には、フライトが入ってくるでしょう。ただ裕坊は同時に、秋以降の第2波を本気で憂いています。今のうちに自らできる対策を考えておきましょう。