アメリカの小型機専門航空会社に勤める、裕坊といいます。こんにちは。
昨日月曜日4日間のフライトから帰宅して、4日間のお休みをいただいています。通常、裕坊が乗務するような小型機専門で、担当がほぼアメリカ国内線のみの会社の場合、勤務パターンは4日連続、もしくは5日連続でフライトをこなして、その後3日ほど休日をもらうのが一般的。
で、お休み1日目は大抵動けません……
裕坊自身が50代ということもあり、余程大切な用事がある時以外は、休日1日目はソファの上でゴロンと転がったまま、寝たり起きたり……することがあるとすれば、フライトから持ち帰った着替えを洗濯するくらい…
社歴が長い順に自らの希望を入力して、各月ごとのスケジュールが決まるのが、アメリカの航空会社のやり方。これをアメリカの航空業界では、シニオリティ(Seniority)と呼びます。社歴が長い人がシニア(Senior)で、逆に入社したてだとジュニア(Junior)。ちなみにこのシニオリティというシステム、希望する機種であったり、機長か副操縦士かなどの選択、他にも所属する空港、有給休暇の日程など、ほぼ全ての領域に影響してきます。
社歴が長ければ長いほど、全ての領域において自由が効くようになるのがアメリカ流。ただ会社が保有する機種の選別をしたり、保有機数などを調整したり、機材の各空港への割り振りなどを決めたりするのは、あくまでも会社側。裕坊のような小型機専門の会社の場合、親会社であったり、提携先となる大手の航空会社のマーケティングに左右されるので、保有機数などの調整はそれにも影響を受けます。 さらには旅客航空需要は、景気による影響を受けますし、地域による上下動なども発生して、人員の割り振りがそれに影響を受けることも少なくなく、今日改めて異動の発表がありました。
裕坊が勤めるエンデバー航空(本社、ミネアポリス)の基点は、全部で5箇所。その中でニューヨークが社内では1番規模が大きかったのですが、コロナウィルスの感染拡大とともにニューヨーク発着便の需要は激減。ニューヨークでは3月中旬以降、感染爆発が起きて、医療機関は大パニック……死者数が激増して遺体安置が追い付かず、一時的に遺体を保管するための冷凍トラックが病院に横付けされるなど、一時はパニックを極めました…
現在ではニューヨークでの感染は、ひと頃に比べて落ち着きを見せ、フロリダ州やテキサス州、カリフォルニア州などの感染拡大が続いている地域から空路ニューヨーク入りした場合などに、2週間の強制隔離が課せられたりするなど、他州との立場はむしろ逆転しましたが、航空需要はまだまだかなり弱含み……尋常ではない感染爆発を経験した地域ですので、移動に対する警戒心が植え付けられてしまったかも知れません。ちなみに今では広く浸透したアメリカ国内でのマスク着用、ニューヨーク州、ニュージャージー州における定着は、他州に比べて非常に早かったそうです。
小型機を専門に扱う我が社の旅客便でも、需要はほとんど回復しておらず……9月1日(火)の運航状況を見ても、その弱含みの需要に呼応するように便数は極端に少なく、ケネディ空港からの発着で合計9往復。ラガーディア空港に至っては、4往復のみ……一時はアメリカの東半分の各都市からの就航便が一斉に集まっていたラガーディア空港。多い時は、1日で150往復もの便が発着する日もありました。今はすっかり閑古鳥が鳴く空港になってしまっています。裕坊自身、ニューヨークは3月下旬以来、一度も行っておりません…
就航便数がめっきり減った基点に、会社としても乗務員を置いておくわけには行かず、この度異動が発表になりました。9月1日付発表で異動が発効するのは11月1日。ニューヨークに所属しているパイロットが合計で120名異動になります。ここ最近、運航便が集中しているデトロイト、アトランタに大半が転籍し、しばらく基点規模が縮小する一方だったミネアポリスにも、若干名が異動することが決まりました。
ちなみに我が社のパイロットは1,927名。そのうちニューヨークに所属しているのが、およそ700名。50名仕様のCRJ−200型機は、ニューヨークを近日中に全機引き払うことが決定していて、200型機乗務の90名と合わせると、合計で210名が異動することになり、全社で1割が異動となる事態になっています。
航空会社各社では、人員調整も始まっており、現在適用になっているコロナウィルス対策緊急助成金の延長が実現しないとなると、各社ともかなりの一時雇用凍結をせざるを得ない状況になっていますが、我が社にもその波がとうとうやってきたかも知れません……
まだ会社からは、『一時雇用凍結』を示唆する文章の発表こそないものの、コスト削減策の一環として、一時帰休の募集が上記の移動とともに発表されることになりました。募集人員は、今のところ180名。全社のほぼ1割。
もしこの一時帰休を取得すると、パイロット契約の規定上、1年復帰できなくなるので、今のままでは会社の希望する人数が応募するかどうかは、流動的……ただもし応募人数が少ないとなると、一部での強制的な一時解雇措置は避けられなくなりそうです。 この時の一時解雇の対象となるのは、社歴が浅いパイロットたち……こんな時でも、アメリカの航空業界でのシニオリティは影響することになります……
先日ユナイテッド航空、元最高経営責任者であるオスカー・ミュノス氏(現会長)が、今後航空会社の需要は以前の半分ほどに落ち着く可能性がある、と言っていましたが、
問題なのは、現在の航空会社はビジネス利用が極端に減っていること……航空会社の利益の根幹は、特に大手の航空会社であれば、ビジネス利用であることが多く、ビジネス利用が少ない現在では需要減以上に収入減の影響が出ていて、ユナイテッド航空では現在でも1日あたりの赤字額が40億円ほどになっているそうです。
然るに、コスト削減は避けられません……ただこのままでは、需要は減る一方。ここから新たな需要をどのように喚起するのか、旅客航空各社は、今こそ知恵を出し合う時期に差し掛かっています。
裕坊、あと3日ほどお休みをいただきます。