yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 6/12

アメリカの小型旅客機専門の航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。

コロナウィルスによる影響が航空業界全体に大きく及ぼし、乗務員たちもほとんどが自宅にて待機状態……裕坊が所属するデトロイトは、110名の機長が所属。そのうち57名が航空業界で欠員補充要員で、裕坊自身も今月は補欠……フライトの数はまだ増えておらず、今月はまだ一度も操縦桿すら触っておりません……本来であればこの時期は、4日間飛んでは2日の休日、時には6日連続のフライトをこなして休日は1日などというスケジュールは当たり前……

 

それが今月のフライト、未だにゼロ……今後の予定も今のところ、ナシ………

そんな中、来月のスケジュールの入札が始まりました。裕坊が勤めているのは、デルタ航空の子会社。乗務しているのはCRJ−900型機というリージョナルジェット機で、客席は76名仕様で地方路線が中心。今月6月の計画飛行時間は、全社合計で9,285時間。 それが7月度は一気に増えて、全社で16,365時間。

 

今月と比較して7割増し……

急に強気に出たなぁ、とも思われるのですが、それでもまだ通常の半分以下……コロナウィルスの影響が全く考慮されていなかった3月の計画を見てみると、総飛行時間は35,117時間でしたので、まだまだ平常時の半分以下……現在では感染防止策として、76名仕様の旅客機を満席にせず、乗客同士の距離を保つために座席販売数を制限していて、1便当たり発券しているのは40まで。

 

CRJシリーズの客席は、通路を挟んで両側に2席ずつ。(ファーストクラスは、通路を挟み、片側が2席で、反対側が1席)

この2人がけの席に1人ずつお座りいただくことでウィルスの蔓延を防ぐ、という手段を取っています。ミシガン州では外出制限が緩和されつつあり、人の動きも増えていて、その中で搭乗率を6割前後にとどめておく必要があるので、本数をここ最近の需要増に合わせる形になったものと想像します。 さらには親会社であるデルタ航空が、日計算でまだ赤字状態………少しでも赤字解消へと舵を切りたいという本音もあるでしょう。

 

国際線の需要も徐々に回復しつつあり、バハマカンクン(メキシコ)、アルーババミューダ)、ボゴタ(コロンビア)などの中南米行き旅客便などが再開されるようになってきました。今後の旅客便数については、需要の増減に応じて臨機応変に対応するようです。

 

ただコロナウィルスの感染が収まっているわけでは決してなく、病院での受け入れ態勢に若干の余裕が出てきているだけのこと。夏の時期は私たちの免疫力も上がりますし、ウィルスの一般的な法則がコロナウィルスにも当てはまるでのあれば、この時期はウィルス蔓延も一段落。3月の一番ヒドかった時期に比べれば落ち着くのも納得できます。

 

 

でも絶対に第2波はやってくる。その為の備えはしておかないといけません……

 

 

本当であれば、アメリカとしての大統領だけではなく世界的にも影響力が大きいトランプ大統領には、せめて自らコロナウィルスへの対策で世界を牽引し、自国の感染症対策なども強く宣伝してほしいところなのですが……恐らく氏の頭の中は、今年の選挙戦のことでいっぱいに違いない………

 

フォードの工場を見学の際には、工場長の強い勧めでマスクをしてはいたものの、

 

最近は選挙戦演説でも一切マスクをつけることなく……

結果的にマスクをつけている上の写真は、とても貴重な一枚になりました。トランプ大統領がマスクをしないのは、マスク=新型コロナという全米に宿る概念があり、コロナが蔓延していて大変だという懸念を与えたくない、ということなのかも知れません………

 

ただトランプ大統領の考え方が、ここアメリカでも極端なのかというと………

 

実はそうでもなく、むしろ保守層の間ではむしろ標準的な考え方にすらなっています。元々共和党支持者は、特にレーガン政権以降は『小さな政府、税の削減、規制の緩和』を徹底して掲げていて、『勝ち取った自由の権利』を声高に強調する徹底的な自由主義者たちの集い。

保守派にとっては、コロナ蔓延下でも経営するお店の営業を続けるのは『彼らの自由』。

例え感染防止に役立つと理解していても、見た目がよくない上に、着け心地が悪いので、マスクをしないことだって『彼らの自由』。

外出規制で以って自分たちの『行動の自由』を制限されるのは、長年の闘いの中で勝ち得てきた「自由の権利の『侵害』」………

裕坊にはフェイスブック上に航空業界の乗務員仲間の友人がいるのですが、彼らの投稿を見ていても、保守派の間では、

『たとえ200万人が感染していようとも、感染率で換算するなら1%にも達しておらず、外出規制をかける意味はない』

『死者数は10万人ほどで、人口の1%にも遠く及ばない。2017年から起きたインフルエンザでもほぼ同等の死者数が出ている(実際には、およそ62,000名)』

が当たり前……

 

民主党大統領候補者のジョー・バイデン氏のマスク姿を見るにつけ……

「そんなにコロナウィルスが怖いのか、臆病者さん」

「コロナウィルスがどこにいるのか、教えてくれよ」

と嘲笑する投稿なんて、日常茶飯事……

 

民主党支持者はマスク着用を徹底し、共和党支持者はマスクを拒否という構図が出来上がるほどの徹底ぶり……たった一枚50円ほどの小道具が、政党支持の象徴にすらなっています……

 

現在のアメリカにおけるコロナウィルスによる死亡者数は、6月12日(金)現在で、114,669名。対人口10万人当たりで換算すると、およそ35名の方が亡くなっている計算になります。アメリカの人口は、日本のおよそ3倍ですから、同じ比率で死者数が出ていたと仮定すると、日本での死者数は35,000人(実際の死者数は、6月12日(金)現在で924名)を超える計算になり、もしこれが本当に日本で起きていたとすると、恐らく日本はパニック状態に陥っていたことでしょうが、アメリカでは保守層が圧倒的に強い中西部だと、『こんなの大したことない……何で営業許可を出さへんのや』という感覚……

 

ただ規制緩和により、アメリカでは一部の州で報告感染者数は上昇しつつあります。数字にはちゃんと表れます。検査体制拡張で報告者数が増えたことも要因の1つにはあったようですが、入院者数が実態を物語ります。既にテキサス州では、入院者数が3日連続で過去最高を更新。ヒューストンでは、市長がプロフットボールNFLの競技場を、臨時病院に転用する考えを表明しています。

写真は、会見するシルベスター・ターナー、ヒューストン市長。

 

アリゾナ州でも入院者数が過去最高の1,291名に上り、州保健当局が各病院に集中治療室の収容能力をあげるように要請したそうです。集中治療室の占有率が75%にまで上がっているのだとか……… ノースカロライナ州でも、集中治療室の病床の空きが、13%まで減少。サウスカロライナ州フロリダ州アーカンソー州でも前週比で増加率が30%を超えました。

本来ならこれから数ヶ月は感染数が落ち着き、秋以降への第2波に備える時。何の対策も取らずに放置するとどうなるか、ブラジルを見れば明らかなはず……

 

そのブラジル、報告感染者数も死者数も、いずれもとうとうワースト2位の地位へと躍り出てしまいました………(6月12日(金)現在、報告感染者数:828,810名、死者数:41,828名)。ブラジルの各医療機関が大変な状況になっているのが、容易に想像できてしまいます。インフルエンザと比較することなど、全く意味はありません……

 

 

まだまだコロナ渦が続くことだけは確かです。

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 6/9

アメリカ国内リージョナル航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。

コロナウィルスの影響による大幅な需要減に見舞われるアメリカの航空業界。3月から4月にかけては需要が昨年比で9割を超える大幅減になるほどの影響を受け、乗務員も半数以上が欠員補充要員となって自宅で待機。フライト自体も7割が削減されて、担当するフライトもなく、先週木曜日から続いた裕坊の6日間のスタンバイ待機は、フライトなしのまま終わりました。

 

需要が減れば、当然のことながら旅客機の需要も減ります。特に国際線機材用の受注に大きく影響が出ていて、例えば全日空の場合ですと、

2階建ての大型旅客機のエアバス380型機、ドリームライナーことボーイング787型機を含めた13機の納入が延期。

 

デルタ航空でも、25機確定発注になっているエアバス350型機のうち、10機の納入が延期されることになっています。

ただしデルタ航空の場合は、同時に中近距離用のエアバス321型機を30機、新たに発注することになりました。しばらく長距離国際線の需要が拡大せず、国内線もしくは近距離国際線に重点を置くのが得策、と見込んだ上での発注だったのでしょう。

 

大型国際線機材を多く保有する航空会社の代表格といえば、こちらエミレーツ航空アラブ首長国連邦)。

超大型の4発機を、3桁抱えているのは、世界広しといえどもここエミレーツ航空だけ。世界の航空会社が国際線用機材を双発機に鞍替えし、A380型機の生産が終焉を見据える中、現在でも2階建て旅客機A380を115機も保有し、まだ8機の納入を控えています。

 

ただ、その8機のA380型機の納入は延期。国際線航空旅客需要は、蒸発したと表現して構わないくらいの影響を受けていて、ほとんどの機体が駐機状態………ひょっとするとエアバス社との契約の内容によっては、発注をA350型機などの双発機へ切り替えなどという筋書きが、どこかで起きるかも知れません。

ちなみにエミレーツ航空は、エアバス350型機を50機発注していて、現在の契約では2023年以降の納入が予定されているそうです。

 

 

しかし航空機の発注、納入に関していうと、必ずしも慎重姿勢の航空会社ばかりではなく、強気の姿勢を保っている会社も少なからず存在します。先週のニュースでは、合計で4社に跨がる430機ものエアバス機の発注を、契約通り遂行するという会社の名前が上げられました。

 

 

会見に応じていたのは、アメリカ、中南米、東欧にそれぞれ拠点を置く4社の経営を統括する、インディゴー・パートナーズ社の最高経営責任者、ビル・フランク氏。

かつてはアメリカウェスト航空(様々な経営統合を経て、現在はアメリカン航空の一部になっています)の最高経営責任者も務めていたこともありました。その後も、シンガポールの格安航空、タイガー航空の経営者を務めたり、アメリカのフロリダ州に本拠を置く、スピリット航空の経営者を務めるなど、複数の航空会社経営に携わってきた格安航空会社のカリスマでもあります。

 

2017年年末に、インディゴー・パートナーズ社の社長として、エアバス社の史上最大発注となる430機のエアバス320型機、321型機の契約を締結、航空業界を仰天させました。

 

 

その内訳を見ていくと……

 

 

まずはアメリカ、コロラド州デンバーに本拠を置くフロンティア航空。

1993年にデンバーでチャーター航空会社として立ち上げられ、その後はノースダコタの4都市を結ぶ小規模の定期運送会社になるなど、順調な拡張を続けていたのですが、格安航空の老舗であるサウスウエスト航空デンバーへの本格参入によって収益が落ち込み、経営が破綻。一旦は破産法下に置かれることにもなりました。

 

その後はサウスウエスト航空からの吸収合併交渉を持ちかけられたものの、交渉は不調に終わり破談………一時はリージョナル航空会社(リパブリックエアウェイズ、本社インディアナ州インディアナポリス)の傘下にまでなった時期もありました。

現在ではインディゴー・パートナーズ社の傘下になっていて、デンバーの他に、オーランド、ラスベガス、シカゴ(オヘア空港)、マイアミ、フィラデルフィアの6空港を拠点に、98機のエアバス機を保有しています。新規発注は、100機のA320型機と34機のA321型機の合計134機。現在保有する機体数よりも発注数が多く、インディゴー・パートナーズ社の強気な姿勢が窺われます。

 

残り3社を見ていくと、

 

まずはメキシコに本社を置くボラリス航空。メキシコとコスタリカを拠点に、北米中米を結びます。

発注は46機のA320型機に、34機のA321型機で、合計は80機。

 

チリに本社があるジェットスマート。運航拠点はチリとアルゼンチンで、中南米の各都市を結ぶ役割を果たし、チリ、ペルー、ブラジル、コロンビアなどへ運航しています。

56機のA320機と14機のA321型機が発注になっていて、合計が70機。

 

そしてウィズ航空。東ヨーロッパのハンガリーに本社があり、ここ数年ほど急拡大をしていた格安航空会社で、最近になって新しく4つの拠点を開設することになったそうです。従来からあるハンガリーポーランドブルガリアルーマニアなど現在ある14の運航拠点に加えて、イタリア、アルバニアウクライナキプロスの4拠点が加わることになりました。

インディゴー・パートナーズ社が統括する4社の中でも、運航規模が最も大きく、発注数も最大。A320型機で72機、A321型機で74機の計146機が加わることになっています。

 

ちなみに航空会社の塗装に詳しい方の中には、上のウィズ航空の塗装をご覧になって、かつてアイスランドに存在した格安航空会社のワオ航空(WOW Air)を想像された方がいらっしゃるかも知れません。

実際、昨年3月のワオ航空の経営破綻前の2018年11月には、インディゴー・パートナーズ社による買収の話が持ち上がって、仮契約まで至った時もありました……しかしその後、破談………ただイタリアの投資会社による買収の交渉が続いておりますので、この紫の機体を、いずれまたヨーロッパの空で見られる時が来るかも知れません。

 

 

フランク氏によると、今後しばらくはコロナウィルスの影響が続いて、航空需要は冷えた状態が続き、供給過剰が2年ほどは続くだろうと述べています。

4社に跨がって、合計で430機もの発注を入れているフランク氏ですが、その計画に変更の余地は全くないそうで、相当な自信に満ち溢れているようです。2023年を皮切りに各社へのエアバス機の納入が始まり、ちょうど航空需要が回復する時と合致する形になって、潜在的に拡大の要素がある旅客航空需要を、他社に先んじる形で取り込みたいという狙いがあるようです。

 

 

フランク氏の見込み通りに、2年後には航空需要が本格回復することを、心から期待しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 6/8

アメリカで、小型旅客機に乗る、裕坊といいます。こんにちは。

コロナウィルスの影響下で旅客便が減便する中、裕坊のフライトも減っています。今月は1ヶ月間全て自宅待機で電話待ち。まだ今のところフライトは入っていません。予定飛行時間はゼロ……ただ、フライトの割り当てを示す乗務員用のインターネットを見ていると、需要が見込まれるところから、徐々に臨時便が入り始めています。まだ昨年比で7割減であることには変わりませんが……

 

裕坊一家が住んでいるミシガン州では新規感染のペースは明らかに落ちていて、感染者を受け入れる病院の空き病床にも若干の余裕が出てきているのでしょう。徐々に規制は緩和されて、日常を取り戻しつつあるような雰囲気になっています。裕坊も先週末は友人宅へ招かれて、久々にバーベキューなどを楽しみました。ミシガン州のみならず、全米で同じような動きになっていて、多くの州では規制解除の方向に動いています……

写真は先週、規制解除の記者会見を行う、ウィトマー・ミシガン州知事。

 

ミシガン州では6月15日(月)より、規制解除の第5段階に入ることになり、ネイルサロンであったり理髪店、美容院なども再開できるようになりました。同じミシガン州内でも、州北部は感染数が元々南部に比べるとかなり少ないので、マスク着用などの条件をつけた上で、映画館ですとか室内ジム、室外スポーツ施設などが今週水曜日6月10日より再開可能に。デトロイト近辺でも、これらの施設が解禁になるのは近いことでしょう。

ではアメリカにおけるコロナウィルス感染拡大は、このまま終息するのか……もちろんその方向に向かって欲しいですが……

 

 

残念ながら、おそらくそうはならないでしょう。裕坊思うに、あくまでもこれは一時的……

 

 

ブラジルの状況を見ていると、北半球の各国、各地域における数ヶ月後の状況が見えてくるような気がします……ブラジルのボルソナロ大統領は、経済最優先を臆すことなく押し出すトランプ流の政策を取ってきましたが、その結果………

感染が爆発的に拡大……報告感染者数は70万人に迫る勢い(6月8日(月)現在、691,758人)で、死者は3万6千人超え(同36,455人)。とうとう報告感染者数では世界第2位、死者数でもスペインやイタリア、フランスを超えて世界ワースト3位となってしまいました……

 

たった2ヶ月の間に、コロナウィルス対策を巡って保健相を2名立て続けに更迭してみたり……

写真中央は5月15日(金)に更迭されたタイシ保健相。元々トランプ大統領を臆面もなく私淑するボルソナロ大統領。トランプ大統領が一時期使用していた抗マラリア薬のクロロキンを、盲目的に国内で推奨したりまでしていました。ところがその後行われた治験で11名が死亡し、クロロキンはブラジルにおける治験も中止……

 

ちなみにボルソナロ大統領。昨年は「アマゾン森林には、経済的可能性がある」として焼畑農業を国民に推奨。昨年のアマゾンにおける森林火災件数が前年比で2倍近くにもなり、ブラジル森林火災に対する無策ぶりを批判したフランスのマクロン大統領と、大舌戦を繰り広げた人物でもあります……

トランプの弟かというほどのトランプ私淑派が、コロナウィルスの脅威を一切顧みず、経済だけに政策を重視させるとどうなるのかという結末を、しっかりと示している気がしてなりません……

 

 

全く裕坊個人の見解にはなってしまいますが、少なくとも数年はコロナウィルスと付き合いながら、時には都市封鎖をし、また解除をし、経済とのバランスを考えて封鎖と緩和を繰り返しながら、これから数年は乗り切るしかないのではないかと思っています。個人的には、寒さが本格化する11月以降に大きな第2波が北半球に訪れると考えていますので、今のうちに医療を崩壊させないための準備が必要になるのではないでしょうか。

 

過去の歴史を見ても、数十万という大規模な数の死者を出すほどのインパクトがある感染症は、これまで1年で終息したことはありません……

 

 

そもそも過去の感染症の中でも、根絶に至ったと認識されているのはただ1つ。天然痘だけ。1977年にソマリアで発症した人を最後に、その後の感染が記録されず、WHO(世界保健機構)が1980年に世界根絶宣言を出しています。

直近の感染症では2002年に中国広東省で最初の感染者が記録された、SARSがあります。2003年以降は罹患者の記録は出ておりませんが、世界保健機構による終息宣言は出されていません。ただこの時の総患者数は8,000名で、死者は700人ほど……パンデミックと呼ばれるほどの感染症には至りませんでした。

 

 

ではコロナウィルスはどうなのか………

 

報告済み感染者数は世界で700万人で、死者数は40万人を超えています。SARSやMERSなどでは「封じ込み」に成功したとされていますが、同じように「封じ込み」ができるのか、人間社会から完全に追い出すことができるのか……裕坊の勝手な個人の意見に過ぎませんが、終息するとしても少なくとも2年は見ておいて損はない、が裕坊の考え。

 

100年ほど前に世界で大流行したスペイン風邪を、教訓にするのであれば……

このポスターは、スペイン風邪が日本で流行した際に対策を呼びかけたポスター。『「談話の時は4尺(1.2m)」「咳のときは10尺(3m)」飛沫が飛ぶから注意しろ』という注意書きなどもあったそうです。 第一次世界大戦終結を早めることになったとまで言われるスペイン風邪。1918年に始まった流行は当時の人口およそ18億人のうちの6億人に感染し、5000万人もの人が死亡。日本にも入り込んで、当時人口がおよそ5,500万人だった日本国内だけでも2,300万人が感染して、およそ39万人死亡の記録が残っています。

 

この時は1918年3月に米国とヨーロッパを皮切りに、北半球の春と夏に第1波が発生。感染性こそ高かったものの、致死性は低かったのだそうです。 そしてやってきた第2波。致死性は大幅に跳ね上がり、15〜35歳の健康な若年層において最も多くの死亡が見られました。死亡の99%以下が65歳以下にて発生していたのだとか……致死率で比較すると、第1波ではおよそ1.2%ほどだったのが、第2波では5.3%にまで跳ね上がっていたそうです……

コロナウィルスと比較すると毒性やウィルスの性質、特徴などはもちろん同じではありませんし、スペイン風邪の毒性自体はコロナウィルスよりも強かったそうですので、あくまで参考にしかなりませんが、過去の感染症を教訓にして損はないと思います。

 

 

ウィルスや細菌など、微生物の歴史は人間のそれを遥かに凌ぐ40億年。そもそもウィルスを根絶することなど不可能ですから、今年になって新しく人間に感染を始めたコロナウィルスともしばらくは付き合っていくことになるでしょう。手洗い、うがいを怠らず、マスクで飛沫の飛散を防ぎ、免疫力が落ちないような生活に普段から心がけ、マスク、消毒液などの衛生用品などは、今のうちから備蓄を増やしておいて損はないのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 6/5

米国のリージョナル航空会社の操縦士を務める、裕坊と申します。こんにちは。

コロナウィルスの影響は、航空業界にはとても甚大。旅客便が昨年比で7割以上の減便になり、乗務員の担当する便も大幅減。平常時であれば、7割ほどの乗務員は担当便が決まっているスケジュールが入り、残り3割ほどが欠員補充になるのですが、6月はそれが逆転。裕坊が所属するデトロイトにおいても、110名在籍するパイロットのうち57名がリザーブと呼ばれる補欠要因になっています。裕坊も今月はリザーブ

 

今日6月5日(金)は、今月3日目のリザーブになりますが、今のところ連絡はなく、今後のフライトの予定も一切入っておりません……

57名のリザーブパイロットのうち、今月のフライトが入ったか、もしくは今後入っているリザーブパイロットは8名だけ……他は今月のフライト実績は未だにゼロで、今後のフライトすら入っていません……

 

フライトの本数も通常の3割程度で、ここ数ヶ月の運航実績が1日当たり1便だけ、という空港もありました。各航空会社も保有現金の枯渇を防ぐために数々の策を打ち出し、早期退職や無給での一時休暇による人員整理、保有する機種の整理などを進めてきましたが、次なる手段として考案したのが、就航する空港の整理。今日6月5日(金)、デルタ航空の運航実績、旅客実績の少ない空港のうち、11の空港を整理の対象とすることが決まりました。

 

対象になったのは、

 

メイン州バンゴー空港(BGR)

 

ペンシルベニア州エリー空港(ERI)

 

ミシガン州フリント空港(FNT)

 

ネブラスカ州リンカーン空港(LNK)

 

イリノイ州ピオリア空港(PIA)

 

ペンシルベニア州スクラントン空港(AVP

 

その他、アーカンソー州フォートスミス(FSM)、ノースカロライナ州ニューバーン(EWN)、カリフォルニア州サンタバーバラ(SBA)、ノースダコタ州ウィリストン(XWA)、コロラド州アスペン(ASE)。 合計11の空港です。元々都市の規模自体が小さく、就航していた機体はほとんどが50名仕様の小型機。費用削減の一環の中での選択となりました。

 

連邦政府による緊急支援金の給付を受ける際、一定の運航規模を確保し、従業員は9月30日までは会社都合での解雇はできない、などの条件を受け入れているので、今回の撤退に際しては、他の航空会社による運航が今後も継続されること、当該空港に勤める職員のお給料は9月30日までは確保されること、10月1日以降の再就職のオファーが確保されているなどを確認。連邦運輸局との折衝もあったらしいです。

実施になるのは、7月8日(水)以降。各空港とも7月7日(火)がこの計画ですと運航最終日になります。

 

もう1つ発表になった整理対象の空港があり、

カナダの首都、オタワ空港からのデルタ航空の完全撤退が決まりました。6月20日(土)が最終運航日になります……オタワの宿泊滞在の際では、ダウンタウンのホテルに宿泊していて、時間に余裕があった時は国会議事堂なども訪れていました。このご時世ですから、こればかりは仕方がないです……

 

デルタ航空では3月中旬の1日あたりの赤字額が1億ドル(日本円換算でおよそ110億円)を超え、現金枯渇がかなりの速度で進んでおりましたが、様々な事業整理が進み、現在の1日あたりの赤字額はおよそ5,000万ドル(同55億円)まで減っており、年末には1日あたりの赤字は解消できる見込みだそうです。ただコロナウィルスの第2波、第3波への備えは必要。普段であれば移動客が劇的に増える6月中旬以降でも、需要の推移を注意深く観察しながら徐々に増便という慎重姿勢。まだ未知のことが多いウィルスだけに、様子見は正解だと思います。

 

 

徐々に徐々に外出規制等が解除されつつあるアメリカにあって、最近目にするのはミネアポリスにおける警察官による黒人殺害に端を発した、全米でのデモ活動……

 

明けても暮れても、凄まじいばかりの現状を報道するニュースが、次々に入ってきます。

 

もちろん、これはやりすぎ……

 

特定のスーパーなどを標的とした略奪、放火事件を受けて、スーパーの中には一時閉店を決めたところもあります。

ミネアポリスに本社を置くスーパーのターゲット。既に店舗破壊の被害を受けた店舗もあり、全米で47軒が一時閉店をすることになりました……

 

ただ多くは、人権尊重を謳いながらの行進によるデモ。

 

警察官の中には、このデモに同調して参加する人が出るなど、

 

全米で少なくとも380を超える都市に広がって、今も収まる気配を見せていません……

黒人を含む有色人種の潜在意識の中にある被差別意識は根が深く、ジョージ・フロイド氏の死がきっかけとなって、その想いが爆発してしまい、デモの動きは未だに広がっているようです。

 

ここまで長続きするデモの、本当のモチベーションとは何なのか……実際には人種差別という問題だけでなく、貧富の差も相当絡んでいるものと、個人的には思っています。

経済指標の中にジニ係数というのがあります。0から1の間で示される係数の中で表わされ、0であれば所得が完全平等で住民間による差がないことを示し、逆に1になると1人の住民が収入を独り占めし、完全不平等であることを示します。 今のアメリカの収入格差は、20世紀初頭に起こった金融恐慌前の状況よりも酷くなっているそうです。現在のアメリカはジニ係数による収入格差が、暴動や革命が歴史上起きやすいとされている0.4。

 

資産の差で見ると超富裕層と貧困層では、数百倍にも広がっているらしく、超富裕層は海などが見晴らせる丘の上に、敷地面積が広く、様々な装飾に彩られた豪邸での優雅な生活を楽しむ一方で……

 

貧困層と呼ばれる人たちの生活は、日々の食料を手にするので毎日が精一杯………

お給料は州の定める最低賃金での劣悪条件の職場も少なくなく、貯金などは貯めようにも貯められないのが現実……コロナウィルスのニューヨーク州における感染の爆発的な拡大も、この劣悪労働条件が一役買ったことは、調査でも既に判明しています。

 

落合信彦さんが過去に書かれた本の中に、ニューヨーク南部ブロンクスの取材のお話が出てきたことがありましたが、その中で煉瓦建て高層アパート住宅の住民のほとんどが、電気代もガス代も水道代も払えず、建物全体に悪臭が漂っていたということがありました。

30年以上も前の本にはなりますが、この現実を知って衝撃を受けた記憶があります。現状は今でも多くは改善されていないように思います……

 

貧富の差を象徴したのがこの一件でした。写真の方はフォード工場に勤めるロバートソンさん。フォードの工場に勤めていながら、自ら運転する車が故障し、当時の時給が1時間あたり10.55ドルでとても次の車を購入できず、10マイル(およそ16キロ)の道のりを、風の日も雨の日も雪の日も、ひたすら徒歩で通っていたそうです。しかも10年間も……

2015年の一件で、全米でニュースにもなりました。アメリカでは感動する話題として取り上げられたのですが、裕坊自身は複雑な思いでこのニュースを見たのを覚えています……

 

まだ煉瓦建てのアパートに住めるのはマシだという現実を、目の当たりにすることもあります。

デトロイト近辺でもよく見かける、モバイルホーム。キャンピングカーを改造したような造り……全米じゅう、貧困地域と呼ばれる周辺を通ると、必ずと言っていいほど見かけます……もちろん住環境は劣悪、それでも雨風が凌げるだけマシなのかも知れません……

 

大都市のダウンタウンだけでなく、高速道路の出口交差点付近でもよく見かける、ホームレス……

これがGDPで今も世界で1番の国なのか、と目を疑いたくなる現実……アメリカの夢とは一体何なのか、こういった方達を見るにつけ、考えさせられるのです。

 

アメリカンドリームからは程遠い環境で生活をしている人たちをたくさん見るにつけ、そして裕坊自身、いつ同じ生活に陥るとも限らない現実に苛まれるにつれ、

デモに声を上げて反対、とはとても言えないジレンマがあります。

 

ですから、今現在デモをしている人たちを指差す気には、裕坊はとてもなれません……

懸念があるとすれば1つ。各都市で次々と外出規制などは緩和されていますが、コロナウィルス感染そのものが完全に終息した訳ではありません。あくまで病院の受入容量に若干の余裕が出てきているだけのことです。

 

 

コロナウィルス感染者が、デモによって広がらないことを祈るばかりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 6/3

米国で、小型旅客機を扱う航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。

コロナウィルスの影響が、他の業種に比べても大きな旅客航空業界。乗務員がこなすフライトの数も減って、裕坊が勤める会社では、欠員補充要員を務めるリザーブの数の方が、通常のスケジュールを割り当てられた乗務員の数を上回っています。裕坊も今月は欠員補充要員。今のところ、まだ次のフライトの予定は入っていません…

 

裕坊が担当する機種は、入社から一貫してCRJシリーズ。2014年までは、50名仕様のCRJ−200型機に乗務。全てエコノミークラスでファーストクラスはありません。

元々はボンバルディア社製のビジネスジェット機の派生型で、胴体を少し伸ばした上で無理やり50席を据え付けているので、かなりアンダーパワー……夏場になると30,000フィートまで上昇するのがやっと……

 

冬場は、離着陸の際に使う補助翼が構造的に氷結を起こしやすいという欠点があり(700型機以降は改良されています)、

着陸の準備に入って補助翼が作動しなくなり、補助翼なしで着陸したこともありました……

 

2014年9月以降は、胴体延長型の900型機(76名仕様)に乗務しています。こちらはファーストクラスを12席用意。

こちらは旅客機として使うことを前提に、大幅な改良を加えられた機体なので、エンジン性能も飛躍的に向上。37,000フィートまで問題なく上昇するだけの性能を持っています。故障も少ない名機だと思いたい……裕坊の場合、他のジェット機の経験がないので、他機種との比較が出来ないのですが……ただ飛行記録をつけるログブック上では、200型機も900型機も同じCL−65になります。

 

100人分以下しか座席がない小さな旅客機でしかも低翼機の場合、機体の高さが十分に取れないので、主翼の下にエンジンを据え付けると高さが確保できません……そのため、エンジンを機体後方に据え付けることで、地上からの高さ確保の問題を解決することが多いです。

 

 

同様に機体後方にエンジンをつけている旅客機の代表といえば、マクドネル・ダグラス社製のMD−80、90シリーズ。

写真はデルタ航空のMD−90型機。デルタ航空では長らくこのシリーズであるMD−88型機、MD−90型機を多数保有し、国内線の主力機材として活用してきましたが、コロナウィルスの影響を受けて旅客航空需要が激減。機材の整理を進める上で、マクドネル・ダグラスシリーズの全機退役が決まり、昨日6月2日(火)がデルタ航空における両型機の、旅客便運航の最後の日となりました。

 

ダグラス・エアクラフト社時代にDC−9として開発され、その後様々な改良が加えられた胴体延長型のMD−80、90シリーズ。

日本でもかつては日本エアシステム(現在の日本航空)が、数種類の機体を保有していましたので、日本の空でも見ることが可能でした。

 

ダグラス・コマーシャル9型(DC−9)として始まったこの機体。当時は3名運航が定期旅客便運航の標準で、しかも3発エンジン旅客機が主流の時代。そんな中にあって2名体制で運航でき、しかも低燃費、低騒音。1970年代以降はボーイング727型機の製造を中止に追い込むほどの人気を博し、かつてのノースウエスト航空では、米国内の国内線主力機材として、長年大活躍しました。

裕坊が現在の会社に入社した当時の、提携契約先はノースウエスト航空(2010年1月31日に、デルタ航空経営統合)。地方都市へのデッドヘッド(客席に搭乗しての移動のことを指す、業界用語です)の際には、必ずと言っていいほど、お世話になっておりました。

 

日本でも日本エアシステムの前身である東亜国内航空が積極的に導入を進めて、地方路線の中核を担いました。

日本エアシステムは、2004年に日本航空へと経営統合。そこでも塗装が日本航空仕様になってMD−90型機は、16機が国内線用の機材として活躍。

 

東亜国内航空時代から、合計ほぼ40年に渡る現役生活を続けたDC−9シリーズの、日本での最後のフライトになったのは、2013年3月30日。広島発羽田行き、JL1614便として運航されたのが最後の活躍の舞台でした。

日本航空でも16機が受け継がれていたMD−90型機。退役後も、海外からのMD−90型機の購入を進めていたデルタ航空によって16機全機が購入され、それまでデルタ航空保有していた80機ほどのマクドネル・ダグラス社製の機体に仲間入り。その後も7年ほどアメリカの空を飛び続けました。2019年時点におけるデルタ航空保有機のうち、MD−88型機は65機でMD−90型機が32機。実にデルタ航空保有していたMD−90型機の半数が、日本の空を飛んでいた機体だったことになります。

 

最後の活躍の場であったアメリカで、順調な飛行を続けていたマクドネル・ダグラス90型シリーズ。コロナウィルスの影響も、3月中旬まではほとんど受けていなかったアメリカでしたが……

急激な感染拡大を受けて需要が激減。各社とも保有現金の枯渇を防ぐために、様々な事業整理を迫られることになり、機齢が古く燃費効率で劣る機体を整理対象に……デルタ航空では、マクドネル・ダグラスシリーズを半ば強制的に退役させることになりました……コロナウィルスの影響さえなければまだまだ一線で活躍できる機体だっただけに、ちょっと悲運でした……

 

6月2日(火)はその同シリーズ機の最終運航日。MD−88型機の最終便はDL88便。

機番はN900DE。

 

ワシントン・ダレス空港を午前8時14分に出発して、アトランタに午前10時4分に到着。

この写真は昨日の最終便となったデルタ88便、アトランタ空港の到着ゲートA4への到着時に撮影された、実際の機体の画像だそうです。

 

そしてMD−90型機としての最終便は、DL90便。ヒューストン国際空港を、午前5時54分に出発。

 

アトランタ空港には午前8時46分に到着して、その役目を終えることになりました。

その後はアラバマ州アリゾナ州の、航空機保存用の敷地がある空港に保管されることになるということです。

 

サバイバルモードに突入している、各旅客航空会社。デルタ航空では機種の整理が進める上で、同じくDC−9シリーズの派生型のボーイング717型機も、若干数を保存状態に置くことになりました。

ただこちらは完全退役を目的としたものではなく、あくまでもコロナウィルス渦中での現金枯渇回避を目的としていて、恐らく景気回復と共に現場へと復帰するものと思われます。

 

見た目にはMD−88型機、MD−90型機とほとんど変わらないボーイング717型機。

マクドネル・ダグラス社によってMD−95型機として元々は開発されていた機体。マクドネル・ダグラス社のボーイング社への経営統合後も、開発、生産が引き継がれた数少ない機体のうちの1つ。その中でボーイングの社名が入った唯一の機体となりました。

 

見た目はほとんどMD−90型機などと同じながらも、完全グラスコックピットを採用しています。

ハワイアン航空でも、各諸島間を結ぶ機材として、現役バリバリの活躍を続けていますし、デルタ航空での本格的な現場再投入は、景気の動向次第ということになるでしょう。コロナウィルスが終息し、景気が回復基調になれば、またたくさんのマクドネル・ダグラス社の魂が受け継がれた機体が見られるものと、期待しています。時間はまだかかるかも知れませんが……

 

 

明日より6日連続での、電話待ちのリザーブの日が始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 6/2

米国小型旅客機専門航空会社、操縦担当の裕坊と申します。こんにちは。

航空業界の大幅需要減に対応して、各航空会社とも運航便を大幅に欠航。6月以降はコロナウィルスの需要減を見込んだスケジュールが組まれ、乗務員へのフライトの割り当ても通常とは大きく異なっています。平常時であれば、各所属先で7割ほどのパイロットが、担当便が既に決まった通常のスケジュールとなり、残りの3割ほどは欠員補充要員。アメリカの航空業界ではリザーブと呼ばれます。

 

アメリカの軍隊でもスタンバイ要員、部隊は同様にリザーブと呼ばれますので、おそらくこの呼び名は、軍隊から来ているのでしょう。

デルタ航空の子会社のエンデバー航空の所属先は5箇所で、最大のパイロット人員を抱えるのはニューヨーク。ラガーディア空港とケネディ空港の、2空港を管轄します。76名仕様のCRJ−900型機の機長で、ニューヨークに所属しているのは、現在250名。2019年6月エンデバー航空によるニューヨーク両空港合計での運航便数の平均は、1日当たり302便だったのに対し、今年6月は1日平均で10をやっと超えるほどですので、大半がリザーブになっています。通常のスケジュールを割り当てられたのは48名で、残り202名は全員リザーブになりました。

 

裕坊が所属するデトロイト空港でも、ニューヨークほどには歪ではないものの、6月はリザーブ機長の数が通常スケジュールを持つ機長の数を上回っています。裕坊自身も今月はリザーブ……会社の呼び出しから、最短で12時間後に出勤するパターンのリザーブで1ヶ月を過ごします。

 

12時間後に出勤のパターンですと、一旦呼び出しがかかってから出勤までの間に、連邦航空法上必要とされる地上での休息時間10時間を十分取ることができるので、24時間7日体制でリザーブ待機をすることも可能。このパターンは、業界ではロングコール(Long Call)と呼ばれます。裕坊はこのパターンを利用して、6月17日(水)までを毎日リザーブシフトで過ごすことになりました。

ちなみにリザーブのパターンには、代表的なもう1つのパターンがあり、呼び出しから最短で2時間後(我が社の場合、1時間45分)に空港に出勤するタイプがあり、業界ではショートコール(Short Call)と呼ばれます。

 

このパターンですと、電話呼び出しから空港への出勤までに連邦航空法の規定する10時間という休息は取れませんから、会社が指定する時間から業務が始まったものと見なされ、法律上も連続して6日を超えてリザーブ業務を入れることができないのが、ロングコールとの大きな違いになります。これは小型機専門のリージョナル航空会社特有のパターンで、大手でこの方式を採用している旅客航空会社は、現在はほぼなくなりました。

 

連邦航空法には、リザーブ、通常のスケジュールに関わらず、もう1つ順守しなければならない規定があります。それは連続する168時間のうち、どこかで連続する30時間の休息時間を取得しなければならない、というもので、例外は認められません。

リザーブの場合、フライトが入らなかったからといって全ての時間が休息と見なされるわけではなく、30時間の休息時間の割り当ても、会社から予め通達しておく必要があります。実を言いますと、このブログを書いている途中に、会社からアプリ経由でリザーブ時間の短縮の連絡が入り、早速明日丸一日と木曜日の午前中6時間が、連続する休息時間として割り当てられることになりました。

 

今日6月2日の運航便数は、デルタ航空管轄内で合計1,253便。内訳はデルタ航空本体が681便、エンデバー航空303便、スカイウェスト航空(本社ユタ州)233便、リパブリック航空(本社インディアナ州)28便。これは先週からすると177便、約16%の増便。また6月1日にTSAが管轄する、保安検査場を通過した人の数は全米で353,900名となっていて、先週火曜日からすると3.5%の増加だそうです。アメリカでは多くの州ではコロナウィルスの新規感染が落ち着きつつあり、客足も徐々にではありますが、戻ってはきているようです。ただ絶対運航数自体がかなり減っていますので、今月裕坊が操縦席に座るかどうかは、ちょっと微妙なところではありますが……

 

 

それに呼応するかのように、ミシガン州でも昨日6月1日(月)には、新たな州施策が発表になり、6段階ある規制のうち4段階までが解除されることになりました。新規感染も死者数も継続して減少しており、感染症科の病床数にも余裕が持てるようになってきているようです。

写真は、昨日6月1日(月)にミシガン州都ランシングにおいて会見を行う、グレッチェン・ウィトマー・ミシガン州知事。段階的に規制解除には向かっているものの、第2波への警告を忘れていなかったのが印象的ではありました。

 

まず各家庭に課されていた外出規制は全面的に解除。6月12日(金)までの延長を掲げていた外出禁止令を、前倒しして解除することになり、理由を問わず自由に外出ができるようになりました。そして段階的に再開ができる業種を細かく列記しています。

 

まず6月4日(木)に再開できる業種は、一般小売店。先週までは予約制で対応が可能な一般小売に限り再開していたものの、予約なしでの小売販売も可能になります。

 

そして6月8日(月)に再開可能な業種は、レストラン、バー、スイミングプール、図書館、美術館、博物館など。ただスイミングプールは、消防法で定められた定員の半数以下にとどめることが条件だそうです。

アウトドアでのフィットネスクラブなどの営業も、来週月曜日から解禁されることになりました。人口密度が低く、感染者数も死者も少ないミシガン州中部から北の地域にかけては、さらに進んだ規制解除に動くようです。

 

ただ第4段目の規制解除を以ってしても、強制閉鎖を課されたままの業種は残ります。その代表格が映画館……

室内で換気が保証できないとされる施設では、今後も再開はできません。他にも劇場であったり、ジム(室内型)、フィットネスセンター(室内型)、室内型スポーツ施設など。美容院であったり、ネイルサロンであったり、マッサージ施設などもしばらく休業を課せられ、カジノ、ボーリング場、遊園地、スケートリンク、ダンススタジオなどもこのまま営業不可の規制が課されたままになります。

 

再開が許可される施設でも、州から遵守すべき要項は出されているようで、マスク着用の義務づけ、他人との2メートルの距離の確保、定期的な消毒作業の義務づけなど、コロナ感染を食い止める最大の努力を課すように指示されています。

 

 

3ヶ月間ずっと閉鎖しっぱなしだったデトロイト空港の事務所も、先週になってようやく業務再開。従業員証がやっとのことで更新できました……

毎年本人の誕生月の月末までに更新をするのですが、今年は3月から5月中旬まで事務所が閉鎖……待ちに待った挙句の業務再開となりました。従業員証の更新ではオンライン予約を取った上で更新を受付、いざ建物へ入る際には入場できる人数を制限した上での手続きという徹底ぶりでした……当然事務所へ入るには、マスクは全員着用義務付け。

 

 

まだまだコロナウィルス渦前の日常生活を取り戻すには、時間がかかりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 6/1

アメリカの小型旅客機を操縦する、裕坊と申します。こんにちは。

先週金曜日からの4日間のフライトは、3日間に短縮。一度も操縦席に座ることなく自宅へと戻り、今日1日は自宅待機となって明日からはひたすらスタンバイ待機。旅客便が通年に比べてほぼ8割減ですので、先月先々月はスタンバイで待機しているパイロットの中には、フライトが全く入らない者もおりました……

 

通常定期航空会社のパイロットは、操縦技術保持を目的とした法律がいくつかあり、そのうちの1つに90日以内に離陸着陸をそれぞれ3回ずつこなさなければならない、とあるのですが、旅客便は激減していてフライトの機会がほとんどないパイロットもたくさんおりますので、アメリカでは連邦航空局が特例措置として、期限を通常の90日から150日へと延長しています。

もし離陸着陸をしないまま期日を過ぎてしまうと、シミュレーターがある施設に呼ばれて、離陸着陸をそれぞれ3回こなします。これで期限更新……ただ手順操作などのおさらいなどもしなくてはならない上に、パートナーを組むもう1人のパイロットも同様に期限切れになってることが多いので、大抵2時間たっぷりのフライト訓練を課されることにはなります……会社にとってはこの訓練は余分なコストになるだけなので、スタンバイのパイロットであれば、期限切れ前に3日間のフライトを入れたりして、3回の離陸着陸を半ば無理矢理にでもさせていますが……

 

一年に一度の座学も義務付けられますが、3密を避けるために今現在も座学用の施設は閉鎖中。こちらも期限を3ヶ月延長の措置がなされています。対策としてオンラインによる講義を我が社では模索していたようですが、その後の進展にはついては、全く会社からの音沙汰なし……秋以降もコロナウィルスが感染再拡大の可能性は十分ありますし、世間一般の学校でもオンライン授業は徐々に導入されていますので、航空業界でも、オンラインはいずれ取り入れられるものと個人的には思っていますが……

 

需要が激減している旅客航空便に比べると、航空貨物便は堅調に推移しています。旅客利用の代表的空港であるアトランタ空港を例にとってみると、昨年まで世界で最も忙しい空港である地位を、ほぼ20年に渡って維持してきたアトランタ空港。平均の1日当たりの発着便数は、昨年には旅客便だけで2,000超え(年間旅客航空便数の合計:735,523便で1日平均2,015便でした)を達成していたのですが、今年3月中旬以降は大幅に減り、今年の5月2日(土)では529便。同日におけるアラスカ州アンカレッジ空港では、744便の貨物機の発着があり、アトランタ空港を発着数で抜き去るということが起こりました……

つい先日51歳になったばかりの裕坊と同年代であれば、アンカレッジ空港と聞くとかなり懐かしい響きがあります。まだ航空機の航続距離が長くなく、ジャンボジェット機を以ってしても、日本からアメリカ大陸への直行便は、西海岸までならなんとかなるという時代。ニューヨークへの直行便となると、ニューヨークまではギリギリ飛べても、もし着陸できなかった場合の代替空港へ行くには航続距離が足りない時代……またヨーロッパ行きの便も冷戦の影響で、シベリア上空が使えませんでしたので、アラスカ経由がほとんど。経由地はアンカレッジ空港で日本人の利用者も多く、空港内には日本語が話せる店員がいるお店や、うどん屋さんなんかもあったんだそうです。

 

氷河クルーズがあったりするなど、観光地としても名高いアラスカ州

デトロイトからでも、この時期はアラスカの観光需要が高くなるので、平常時ですとアンカレッジ行き直行便が運航されます。もちろん今年2020年は観光需要自体がほぼ消滅しておりますので、直行便などはなく、もし今アラスカにデトロイトから訪れる場合は、シアトル経由にはなりますが……

 

 

ちなみにアメリカにはアラスカ航空なる航空会社が存在し、アラスカ原住民の象徴ともいえるエスキモーが尾翼に施された機体を使っています。

ただこのアラスカ航空、アラスカを名乗ってこそいるものの、本社はワシントン州シアトル近郊にあり、運航もシアトル・タコマ国際空港が起点……

 

そのアラスカ航空、長らくボーイング737型機のみを保有する中堅航空会社だったのですが、数年ほど前にバージンアメリカ航空という航空会社を買収。

現在ではエアバス機をも保有する航空会社になりました。

 

 

アンカレッジ空港に話を戻しますと、1990年代以降はソ連崩壊後、ロシアも積極的にシベリアルートを解放、さらには航空機のエンジン性能が飛躍的に上がって、双発機での長距離洋上飛行なども可能になり、アラスカに寄港する必要がなくなってアンカレッジ空港の需要は大幅に減少。現在では日本からの旅客機による直行便はなくなっています。

 

ただ航空貨物の世界では、まだまだ存在感が高いアンカレッジ空港。

アメリカの貨物航空大手、フェデックス社もUPS社もアンカレッジに重要拠点を今でも置いていて、乗務員の所属先の空港の1つにもなっています。

 

アメリカ大陸の西北端に位置するアラスカ州

日本からアメリカ大陸東海岸へのルートでは、ほぼ中間点に位置。地理的に非常に良い条件で、先進工業国のほぼ90%を、航空路で10時間以内に到達できるところに位置するそうです。

 

その利便性から小規模の航空貨物航空会社もいくつか本社を置いていて、アメリカ人ですらほとんどの人がその存在すら知らない、ノーザン・エア・カーゴ社もアンカレッジに本社があります。

航空貨物便は、到着先での荷物配達を昼間時間帯に持ってくるため、さらに空港利用料を安く上げるために深夜早朝を狙って発着するのが基本。その為、国内線での運航は深夜になることがほとんど。

 

裕坊はかつて一度だけ、フェデックス社の本社があるテネシー州メンフィスからデトロイトまで、帰宅用の足として利用させていただいたことがあったのですが、この時も出発は深夜3時……

昼間は静かでほとんど人の行き来もなかった駐機場に、日が暮れる頃になって荷物が集まり始め、深夜になると超多忙になるという不思議な光景が繰り広げられる航空貨物の世界。深夜中心の運航になりますので、パイロットたちは必然的に引退後の平均余命が短くなる傾向にあります。航空貨物の世界で生きるパイロットの宿命。これは国際線を主に従事するパイロットと同じ運命にあります……

 

ボーディングブリッジなどはなく、専用の階段を使って飛行機を乗り降り……

オンラインによるショッピングが増えて、個人でも利用すること機会が多くなった貨物運搬会社。航空貨物も例外ではなく、コロナウィルスの影響下で、ますます需要を伸ばしています。縮小する業種が溢れる中で、これからますます伸びていきそうな業界の1つになりそうです。