yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 7/7

米国航空会社に勤める、副操縦士の裕坊です。

 

アメリカにおける夏季最大のイベントといえば、7月4日の独立記念日。各地で夏祭りが開催され、7月4日当日は打ち上げ花火が夜空に次々に舞い上がります(今年はイベントで集まる人を狙って、テキサス州ルイジアナ州などの各地で銃乱射事件も発生してしまいましたが…)

 

夏の空の風物詩の代表といえば、空高く上がる入道雲。「積乱雲」と呼ばれる雷雲ができるための条件は3つあり、

 ① 水蒸気を多く含んだ湿った空気

 ② 不安定な大気

 ③ 空気を上昇させる物理的作用(上昇気流など)

 

気温が30度近くに上がる時期になると、これらの条件が揃いやすくなります。

 

パイロット用レーダー画面でもハッキリと映り出される入道雲、色が濃い部分(赤や紫など)が危険領域になります。上昇気流と下降気流が激しくぶつかり合っていることも少なくなく、無理に通過すると最悪機体の損傷を招くことも…迂回は絶対条件になります。

 

木曜日に終えた5日勤務。合計の担当便は7だけとラクなシフトになるはずだったのですが、最初の2日間は迂回を繰り返しておりました…

 

湿度が高い状態では、霧も発生しやすくなります。霧で有名な観光名所といえば、サンフランシスコのゴールデンゲート橋。紅く彩られた橋が霧に包まれる様子を眺めるのは、とても絵になりますが……

 

パイロットにとっては、着陸時の厄介のタネ…

視界が極端に悪いと離陸時も神経を使いますが、エンジンの故障などさえなければ、操作そのものにそれほど高い技術は要求されません。

 

集中力がより必要になるのは着陸時。通常のお天気だと10キロ先からでも十分滑走路が視界に入り、目視で着陸が可能になるのですが、

 

視程と呼ばれる指標が下がると遠くから滑走路を目視することができなくなるので、計器着陸システム(ILS:Instrument Landing System)という地上からの電波を頼りに着陸します。視程が1/4マイル(0.25マイルで、およそ400メートル)以下にもなると、滑走路直前まできても視界がすぐに開けることはなく……

外は真っ白…

 

着陸寸前およそ500メートルになって、滑走路から伸びる誘導灯を確認するのがやっとで…

 

誘導灯の両側に位置する赤色誘導灯が加わり、着陸に漕ぎ着けられるようになります。

それでも着地時の窓から見える光景はこんな感じ……

 

3日目深夜に到着したメイン州ポートランド到着時は降下下限高度ギリギリまで降下し、やっとのことで滑走路が目視できるといった具合でした。

積乱雲を2日間避け続け、3日目の深夜は周囲が真っ白な中での着陸。ひたすら神経をすり減らし続けました…

 

 

 

疲れた……でも4日目は……

 

 

 

担当便が一切入らないご褒美の日…

 

 

 

2ヶ月ぶりに30時間連続滞在が入り、メイン州ポートランドを満喫する1日になりました。ニューイングランド地域ではマサチューセッツ州ボストンに次ぐ港湾都市。19世紀のビクトリア様式の建築の影響を大きく残しているポートランドは、ダウンタウン周辺は煉瓦建ての建物がたくさん建ち並んでいます。

 

公園の一角には姉妹都市の東京都品川区から寄贈された、昭和世代にとって昔懐かしの郵便ポストが2つ立っています。

 

ジャガイモを主成分にしたドーナツ屋さんもダウンタウンの目玉の1つ。(ホーリー・ドーナツ(Holy Donuts))

メープルベーコンなどの変わったメニューもありますが、裕坊的に気に入ったのは、オースドックスなオールドファッションドーナツ。

 

クルーズ船を係留したシーフードレストランもあり、そこでは夕食をいただきました。

 

東海岸のシーフードの定番といえば、クラムチャウダー

 

それにロブスターサンドイッチ。

 

お値段は張りますが、こちらも外せない蒸しロブスター。

新鮮な魚介類豊富なお食事。3日間神経を使うフライトが続いた上に、4日目は1日中ダウンタウンを歩き続けていたので、とっても良い栄養補給でした。

 

せっかくここまでやってきていたので、ダウンタウンから車で20分ほどの距離の灯台へも足を伸ばし、

 

ポートランド最古の灯台、『ポートランド・ヘッドライト(Portland Head Light)』を見学。

1791年完成と2世紀以上を既に経過していますが、立派に現役として運用されています。ポートランド空港から真東に位置し、有視界飛行状態で着陸進入する際の目印の1つにもなっています。

 

先にはエリザベス岬が広がり、雲がない快晴のお天気の中では夕方の太陽の光が海に注いで、幻想的な景観が広がっておりました。

翌日5日目は空港出勤時刻、午前4時35分… 最終日は始発便1便だけを担当。

 

デトロイトへと戻ってくるとかつて勤めた地域航空会社の元同僚が控えていて、5日間同乗した女性機長とともに記念撮影。

笑顔で5日勤務を締め括りました。

 

 

 

 

有給でしばらくお休みをいただく予定です。