yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 6/18

アメリカ国内線を中心の小型旅客機操縦担当、裕坊と申します。こんにちは。

米国の旅客航空業界では3月以降極端な減便措置を敷いて、裕坊自身の担当する便も5月以降は極端に減っておりましたが、6月に入って徐々に定期便も増え始め、今月1ヶ月間をスタンバイ要員として過ごしていた裕坊にも、フライトが入りました。

 

金曜日の出発で、担当便の出発は夕方、向かうのはウィスコンシン州グリーンベイ

グリーンベイといえば、人気NFLチームが本拠を置く町。市民によってプロスポーツチームが運営される、全米唯一の町でもあります。

 

フットボールの球技場は空港からやや北東にあり、 デトロイトからほぼ真っ直ぐ西方向に機首を保ったまま滑走路へと入ってくると、左側の窓から1957年にオープンした老舗のフットボール球技場、ランボー・フィールドも見えてきます。

今年秋以降のシーズンが開催されるかどうかは、コロナウィルスの感染状況次第になるでしょう。開催できればいいですが………

 

 

実際には、かなり微妙な気がする…………

 

 

今月はフライトがなかなか入ることなく、ずっと自宅待機。前回の先月末の3日間のフライトでは、結局操縦席に座ることすらありませんでしたので、結果的に1ヶ月ぶりのフライトになってしまいました……有給を取った時ですら、こんなに期間が空いた記憶はない……できれば、明日は副操縦士に操縦の担当をお願いしてみます……

 

3月後半に、アメリカにおいて感染が急拡大した時は、空港での雰囲気はかなり張り詰めたものがありました。出発直前になって欠航が決まったことも……まだまだ3月の冬の寒さが残る中で、咳一つするのですら憚られたのを思い出します……まさに先が見えない、未知の世界を生きている感覚でした……

空港を訪れる人の数はみるみるうちに減り、空港内のお店は次々に暖簾を下ろし、各便とも乗客数は一桁台。しばらくは空の状態で飛んでおりました……そこで乗客数が違ってくると、飛行機の飛び方も変わってくるのか、というと………

 

 

裕坊が乗務しているCRJのような小型機ですと、半端なく影響が出ます……

 

 

76名仕様のCRJ−900型機の、最大離陸重量は84,500ポンド。およそ38トンほど。

さすがに1番重たい状態で離陸することは稀ですが、80,000ポンド前後で離陸することは珍しくなく、その状態での離陸時の離陸時の速度は、平均で140ノット(時速約250キロ)くらい。そこから10,000フィート(およそ海抜3,000メートル)までは1分あたりの上昇率が2,500フィートの状態を保ちます。 ところが、お客さんをほとんど乗せていない状態ですと……………

 

まずは離陸時の重量が60,000ポンドほどに下がります。トンに換算して27トンほど…………普段と比べると10トンも軽い状態で離陸することに………当然のことながら、離陸時の速度も下がります。130ノットを切れる状態で、まずは機首起こし………平均ではおよそ127ノットほどで、時速にするとおよそ230キロくらい。

機体が軽くて加速も速いので、あっという間の離陸操作開始………離陸直後は、空港付近の障害物を避けるために、まずは第一段階として、地上から300メートルの高度を稼ぎます。機首上げ角度は15度くらい。これで離陸瞬間の速度と比べて、10ノットから15ノットほど速い状態を保ちます。地上からの障害物を避けるために一定の上昇角度を保つ必要があるので、この時の速度は速すぎてもいけません。運航管理課で計算された最初の上昇速度を保つ必要があります。通常なら15度前後機首を上げた状態で、それを保つのですが………

 

機体が軽いと、飛行機は同じエンジンからの出力でもかなり加速しようとするので、機首をさらに上げることによって速度を抑え込まないといけません……ほとんどお客さんがいない状態ですと、20度を超える角度を保つことも………

操縦しているパイロットには、本当にこんな感覚になります………

 

一旦地上300mを過ぎて機首上げを緩めるのですが、この時も通常時とは比較にならない上昇率……

 

速度計の横には、高度計や上昇率を示す計器なども配置されていて、高度計を見るとグングン上昇しているのが一目で分かり、普段なら1分あたり2,500フィートずつの上昇率になっているのが、1分あたり4,000フィートを超える上昇率になることも珍しくなく………裕坊自身の記憶では、たまたま上昇気流が発生した時と、機首上げのタイミングが重なって……

1分あたり6,000フィートに迫ったこともありました………

 

ほんの一瞬なら、ロケットとも競争ができるかも知れん………

 

ちなみに機材の運用上の関係で、飛行機を他の空港に回送しないといけないことがあり(これをアメリカでは、フェリーと呼びます)、空の状態でのフライトというのは、平常時でも旅客航空会社に勤めるパイロットにとってはよくあることなのですが、ここまで頻繁にこなすのは、コロナウィルスが蔓延するまではなかったことでした。会社からの報告によれば、ここ最近の平均搭乗率は、我がエンデバー航空の担当便で40%ほど。ただしばらくは、搭乗率は最大でも60%に抑えるそうですので、これからも軽めの機体を操縦する期間が続くことになりそうです。

 

 

感染ペースが全体で落ち着きつつあるアメリカで、旅客便も増加傾向。ただまだまだ油断はできないです……フロリダやテキサスなどでは、報告感染者数が増加傾向。両州の州知事は検査体制を強化したため、ということを言っておりましたが、中程度の症状から重篤症状を患っての入院件数だけで見ても、フロリダ州で昨日6月17日(水)が188件。集中治療室の占有率は通常ですと50%を下回り、60%まで埋まってもまず問題なく捌けるのですが……

 

現在のフロリダ州全体での集中治療室の病床占有率は82%……

ちょっと病院関係者は、余裕がなくなりつつある状態だと想像します。

 

 

3月の時点ではまだ分からないことだらけだったコロナウィルス。解明されてきたことも多く、有効な感染防止法なども議論されていますので、具体的な活用を始める時期でしょう。なんとか第2波、第3波を防いでいきたいです。