米国小型機航空会社、前方オフィス専門係、裕坊といいます。こんにちは。
裕坊が勤める小型機専門の航空会社の本社であるミネソタ州ミネアポリスへと火曜日からお出かけし、昨日木曜日に3日間の訓練を終えて、我が家のあるデトロイトまで帰ってきました。
先週ほどの大きさではなかったものの、寒気団が入り込んでいて、最低気温がマイナス16度を記録していたミネアポリス………
訓練が終わって、空港内へと入ってやれやれ………
3日目の昨日木曜日は、トレーニングセンターへの出勤時刻5時………
ホテルを出発するシャトルは、4時半発………
起きたの2時30分…………徹夜やん…………
それでも、3日目のフライト試験、無事合格…………
たまには、自分にご褒美でもせんといかん…………
というわけで…………
気になっていたミネアポリス国際空港のメインフードコートに位置するお寿司屋さんで、お寿司購入………中央部に大きく構えているので、探すのに苦労をすることはありません……
ポケ丼がとても気になっていたのですが、めちゃお腹も空いていたし、ポケ丼を作っているのを待つほどの余裕なし………
ということで、オーソドックスに普通のお寿司………
大きなサーモンが入った巻き物が4切れで、お値段9ドル………
どのような流通手段でお魚類を仕入れているのかは分かりませんが、ネタは新鮮です。ただ昼食、夜食でお腹を満たしたいなら2パックは必要かも………
飛行機の座席に座った途端、完全に夢の中へと入り込んでおりました……
デトロイトでも、ちょっと雪が降っとったんやね……
こちらが火曜日から木曜日まで3日間、1日当たり4時間を過ごしたシミュレーター。昨年までは2日間だった年次訓練。
昨年4月に新たな項目が加わることになり、1日増えてそれ以降は3日間に渡る訓練となっています。
ただ自宅で少しでも多く時間を過ごし、勤務先での時間は1分といえども減らしたいアメリカ人の意向に合わせて、スケジュールは超過密……
初日が、午後12時半から夜7時まで。
2日目が午前8時から午後3時過ぎまで。
そしてフライト試験となる3日目は…………
午前5時から午前11時まで………
ただ新しく加わった訓練項目自体は…………
受けてよかった、と素直に言い切れるものでした。
新しく加わった項目というのは、先日お亡くなりになってしまった野村克也さんの名言のうちの1つをお借りして表現すると、
『「失敗」と書いて、「せいちょう」と読む』
を、連邦航空局がまさに体現したもの。
具体的には、2つの航空事故の教訓を生かして、それを将来に渡る航空安全に繋げる、というものでした。
まず1つ目の事故とは、ナイアガラの滝に程近い、ニューヨーク州バッファロー空港近辺に於いて起きた、コンチネンタル3407便墜落事故。運航していたのは、現在は我が社エンデバー航空の一部にもなった、当時のコルガン航空。機体はターボプロップ旅客機、ダッシュ8−400型。
事故を起こした機体は滑走路へとアプローチ中。速度が極端に低下し、主翼上面では滑らかだったはずの気流が乱れ始めていて、失速に近づいていました。
正常な揚力(機体を空気中に浮かせるのに必要な力)を回復させるには、操縦桿を若干前へと押すことにより、機首下げを行なって、主翼上面の空気の流れを正常な状態に戻す必要があるのですが、
その便の機長は逆に、操縦桿を目一杯引いてしまい………
機首は大きく上へと向いてしまい、機体は完全失速。コントロールを失った機体は地上へと叩きつけられ、大破…………
乗客乗員の方49名に、地上にいた方1名の尊い命を失う惨事となりました………
パイロットとして覚えておかなくてはならないのが、たとえ滑走路に近い低空といえども、失速状態からの回復には、機首下げが必要だということ。
かつての年次飛行訓練、フライト試験では、失速状態、あるいはそれに近い状態に入った時、その状態のまま高度を落とさず保てなければ試験失格にすらなっていたのですが、却ってそれは失速からの回復を奨励せず、失速状態を助長するだけだった、と連邦航空局も過去の過ちを素直に認めています。少なくとも我が社の試験項目からは、失速状態での高度維持の条項は完全に消え去り、高度を落としてでも失速からの完全回復を訓練に盛り込むように、はっきりと指示するようになりました。
そして連邦航空局が、もう1つの教訓としたのが、エールフランス447便。
事故を起こした機体と同型機の、エアバス330−200型機。リオデジャネイロを出発して、パリへと向かう途中の大西洋上での巡航中に、コルガン3407便と同じく失速状態に陥り、パイロットがこれまた同じように操縦桿を引いてしまい…
大西洋上に墜落……
写真は、機体の破片の一部。
原因となったのは、実は洋上飛行中に発生していたある装置の氷結。
その装置とは、機体から前方に向かって飛び出ている、恐らく誰もが一度は耳にしたことがあるピトー管。これが氷結していたのです。
ピトー感とは、機体の前面が直接受けている空気の圧力を測定する装置。これに外気温であったり、外気圧などの要素を加味することによって、空気中での移動速度(対気速度と呼ばれます)を測定することができます。それに風の方角、速度を加味すると、地球上に対する移動速度も測定可能(対地速度)。これが氷結してしまうと、空気圧は当然測定できなくなります。
事故直前、飛行機はピトー管の凍結によって、計器上の速度が不安定になっていたのですが、残念なことにパイロットは機体が失速状態に近いことを把握できていませんでした。状態が把握できないままパイロットたちは、操縦桿(現在のエアバス機は、ほとんどが操縦席横にあるサイドスティックを採用しています)を引いてしまい、機体は完全に失速状態へと入ることに………
さらに悪いことには、ピトー管の氷結が一定の条件で起こると、上昇時に計器上の速度が速くなり、下降時には逆に計器上の速度が低下するといったことが起こります。この時も計器上では高度計が上昇を示し、それに合わせて本来なら下がるはずの速度計までが同時に上昇していたのです。最後まで機体の状態の把握ができなかったパイロットは、機体を失速から回復させることができないまま………エアバス機はそのまま大西洋へと墜落しました。
座学の上では理解できていても、現場に出た時にすぐそれが応用できるかとなると、それはまた別の話。その状態を的確に視認できるようになるためには、飛行訓練中による経験が航空安全への不可欠条件として、2013年11月に米国連邦航空局によって新たな訓練項目に加えたそうです。
ただシミュレーターのプログラムの書き加え、シミュレーターの負荷耐性の承認などに時間がかかり、実現には6年の歳月を要することになりました。
航空技術がこれだけ発展した現代でも起こり得るこれらの事象。航空安全の追求は、航空界には永遠の課題であることを痛感した3日間でした。
息子の剣道大会などが週末に入るため、休日返上などのフライトは入れず、月曜日までお休みをいただく予定です。