yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 3/24

米国リージョナル航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。

コロナウィルスの感染拡大の勢いが、とどまるところを知らないアメリカ。

 

3月24日(火)現在で、既に確認されている感染者のおよそ半数を占めるニューヨーク州を始めとして、デラウェア州ルイジアナ州オハイオ州カリフォルニア州コネチカット州イリノイ州オレゴン州ニュージャージー州インディアナ州ミシガン州ウェストバージニア州ウィスコンシン州ハワイ州ニューメキシコ州ワシントン州の16州では外出制限令が出され、他の州でもフィラデルフィアセントルイスカンザスシティニューオーリンズアトランタなどでも同様に、外出制限が課されています。

 

そんな中、昨日月曜日は、シカゴまでやってきておりました。降り立っていたのは、シカゴ・ミッドウェイ空港。

シカゴのダウンタウンからですと、南西におよそ車で20分ほど。

 

住宅地の真ん中に位置するといった表現がピッタリとはまる空港で、立地的な条件もあって、滑走路は長いものでも2,000メートル。

周辺の道路や住宅との安全間隔を保持するために、着地点もやや滑走路の端から離れて設定されていますので、着陸に使える滑走路の長さは1,800メートル。着地点への正確な着地が必要となる、やや操縦技術が問われる空港の1つです……

 

実は格安航空の老舗、サウスウェスト航空の主要基幹空港の一つで、中西部の中心的な役割を果たしています。

実際に行き来している旅客機は、ほとんどがサウスウェストの塗装のボーイング737型機ばかり。

 

ターミナル内の壁にも、あちこちサウスウェストのポスターが掲げられているのですが……

 

今日は数えるほどしか機体が見当たらず、少なくとも裕坊の周りには、一機も止まっておりませんでした………

 

普段であれば、搭乗手続きを終えて保安検査へと長い列が続くのですが……

 

昨日からずっとこの状態で、並んでいる人の姿はなく……

 

座る場所を見つけるのすら苦労することが多いフードコートなども……

 

今はひっそり……

 

お土産屋などもたくさん並んで賑わっている出発ゲート付近などにも……

 

人影はなし……

もちろん、旅行者やビジネス需要が激減していることも、影響しているのですが……

 

実はもう一つの事情が、影響しておりました……

ミッドウェイ空港を管轄する、空港管制塔……ここの職員の中から、コロナウィルスに陽性の結果が出た人がいたらしく、管制塔がほぼ1週間に渡って閉鎖されることになり………

 

発着できる便数が、激減………

 

空港管制塔が機能していれば、到着便と出発便の間隔を調整することができるので、供用できる滑走路が1本だけでも、1時間あたりおよそ60便を捌くことができるのですが……

空港管制塔が業務停止状態になると、到着便が滑走路からおよそ10キロ先まで入ってきたあとは、離陸準備が整っている出発便に離陸許可を与えることができなくなるので、必然的に到着便と出発便の間隔を普段の倍以上開けなくてはならず、許容量が相当落ちてしまいます。

 

ですから、サウスウェスト航空を始め、ミッドウェイ空港を発着する航空会社は、便数をかなり削減していたという事情が重なっておりました。

 

そんな訳で、今朝のミッドウェイ発デトロイト行きを担当した裕坊も、いつもとは違う手順にて出発。 いつもなら、操縦席備え付けのコンピューターに送られてくる、航空管制からの出発承認(飛行計画に対する承認のこと、計器飛行に対する飛行計画承認になるので、英語ではIFRクリアランス(Instrument Flight Rules Clearance)と呼ばれます)を受け取るのですが、

通常、飛行承認を送信してくれる空港管制塔が、今日は業務停止状態でしたので……

 

空港周りを管轄するターミナルレーダー管制(管制区管制)に、まずは電話をして飛行承認を取得……

 

そのあとは誘導路上を運転して、離陸用滑走路まで………

普段ですと、ここで空港管制塔から離陸許可が出た段階で離陸滑走を始めますが……

 

今日はターミナルレーダー管制にここでコンタクト。往来が極端に少ない状態で、滑走路へと入ってきている到着便はありませんでしたので………

着陸機がいないことを確認して、すぐ離陸となりました。

 

そのシカゴ・ミッドウェイ空港は、3月24日(火)午後から、管制塔の業務再開。通常の運用が再開となっています。ただデルタ航空の利用客は未だにかなり減っている状態で、アトランタからの直行便はしばらく欠航が決まっています。シカゴからデルタ航空にてお出かけの際は、デトロイトミネアポリスを経由していただくか、お隣オヘア空港からのご利用となりますので、ご注意を。

 

ちなみに、ラスベガス空港でも同様に、航空管制官の方の中からコロナウィルス感染の方が出て、しばらく業務停止が続いておりましたが、こちらも3月24日(火)に業務再開になっています。

 

 

今日はそんな中、ちょっと心温まる話題を一つ見つけましたので、ご紹介。

 

 

世界じゅうの国々で渡航制限が発令される中、イングランドに住むあるカップルにも影響は及んでいました。とある総合病院に勤める男性看護師のOさん、交際している同い年の女性と、アイスランドに旅行に行く計画を立てていたそうです。しかも、ただの旅行ではなく、旅行先でプロポーズをする、大勝負に打って出るつもりだったのだとか……

ところが英国も渡航禁止令が発令され、旅行はキャンセル……しかし、既に気持ちを固めていたOさんに、気持ちを止める手立てはなく、別の手段でプロポーズを強行することに……

 

Oさん、ある日の夕方、彼女を誘って夕食へとお出かけ。そしてレストランへと向かう途中、「ちょっと買うものがある」と彼女の手を引いて、とある場所へと向かったそうなのですが、その向かった先というのがこちら……………

北欧の「アイスランド」ではなく、近所にあるスーパーの「アイスランド」………

 

誰もいない通路を見つけ、突然ひざまづき、プロポーズ……

 

彼女は恥ずかしそうな表情を浮かべながらも、婚約指輪を受け入れたそうです。

Oさん、愛する彼女の心を射止め、世界中に蔓延する閉塞感に、心温まる笑いを提供してくれました。ほっこりする、とてもいいお話だと思いませんか。

 

 

アメリカ国内の航空便の数週間に渡る全面運航停止の噂が囁かれる中、裕坊水曜日から残り4日間のフライトです。