yuichibow’s blog

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 3/14

皆さんこんにちは、リージョナル航空会社サラリーマン、裕坊です。

今日は2日だけ続く『リザーブ』シフトの1日目。お天気もまずまずで、欠航や欠員が出ることもなく、特に『機長の交代要員』も必要ではなかったのでしょう。このまま次回の訓練のために、土曜日のミネアポリスへ出発するまで、フライトが入る可能性が非常に低くなってきました。

 

そんな中、アメリカでは航空業界に大きく影響するニュースが入ってきましたね。

6ヶ月の間に2回の墜落事故を起こしたボーイング社の737型機の最新鋭版であるMAXシリーズが、全世界的に運航停止を発表し、アメリカもその世界の動きに加わることになりました。

 

トランプ大統領から直々に、今週水曜日3月13日に発表。

アメリカ国内では、アメリカン航空が24機、ユナイテッド航空14機、サウスウエスト航空が34機をそれぞれ保有。MAXシリーズによる運航を予定していた便を、代替機に置き換えたり欠航扱いにしたり、影響を強いられているようです。

 

昨年の10月、ライオン航空………

 

そして今回のエチオピア航空……………

この2回の墜落事故で、合計346名の方が犠牲になりました。事故で亡くなられた方々には、心よりご冥福を申し上げたいと思います。

まだ詳しい事故原因は、調査結果の報告を待つ必要がありますが、

 


このMAXシリーズには新たなシステムが一つ、従来の737型機から加えられていて、少なくとも昨年10月のライオンエアの事故では、その新しい装置が墜落にかなり直結しているのは確実なようです。

その新しいシステムとは、MCAS(Maneuvering Characteristics Augmantation System)(操縦特性増強システム)。

 


 

パイロットであれば、この図を見ただけで、すぐに理解できるかも知れませんが、これは先日の裕坊ブログでも取り上げた、航空力学に大きく関連している項目ですので、もう一度航空力学を簡単に解説してみたいと思います。

航空機が飛行中に、航空機にかかる基本的な力の要素は、全部で4つ。Lift(揚力)、Thrust(推力)、Drag(抗力)、Weight(重力)。推力を作り出して飛行機を前進させ、得られる空気の流れを主翼に受けて揚力を発生させ、空中に飛行機を『釣り上げる』仕組み。

 

主翼の翼面はなだらかな曲線を描いていて、空気がその主翼上面を通過すると、その曲面を通過する空気の流れが早くなり、その主翼上面には低気圧が作り出されて、主翼が『釣り上げられる』のです。

巡航中は、ジェット旅客機であればおよそ時速900キロというスピードが出ていますから、空気の流れも十分にあり、安定した揚力を得ることができるのですが、

 

離陸着陸時には、離陸滑走距離、着陸滑走距離を短くする必要がありますので、速度を遅くして飛行する必要があります。(それでも離着陸時には、ジェット旅客機の場合、平均およそ時速230キロ前後のスピードは出ています)

補助翼などを利用することで、遅い速度での飛行を可能にします。

さらには空気の流れに対する主翼の翼面の角度を変えることによって、揚力を増やすという方法も取られます。主翼翼面の空気の流れに対する角度が大きくなれば大きくなるほど、揚力は増すのですが…………

ある一定の角度を超えてしまうと、主翼上面上の空気の流れに乱れが生じ、揚力を生み出すことができなくなり、機体の高度を、結果として落とすことになってしまいます。これが俗に呼ばれる『失速』状態。

『失速』状態から回復するためには、主翼の空気の流れに対する角度を小さくすることで、なだらかな空気の流れを回復させる必要があるのです。そのために必要な操作とは、『操縦桿を前へ少し押してやること』

 

 

今回、ボーイング737型機のMAXシリーズにおいて、新たに装着された『MCAS』とは、それを助けるための装置だったのですが…………

 

 

『失速』状態であることを感知するためには、空気の流れの主翼翼面に対する角度を知る必要があります。

そのために取り付けられているのが、AOA Vaneという装着。Angle of attack vaneと英語では呼ばれ、主翼翼面における空気の流れの角度が分かるようになっています。大抵の旅客機では、コックピット周辺に取り付けられているのが普通。空気の流れの角度が大きなりすぎ、『失速角度』に近づいてくると、コックピットでは警告が鳴ったり、操縦桿を自動的に前へ押したりして、『失速』を防いでくれるのですが………

 

今回のライオンエアのケースでは、この『AOA vane』がどうやら問題になっていたらしいです……

事故機は、事故が起こる数日前から、機長席側、左側の『AOA vane』が度々誤作動をしていたようで、パイロットも整備課には報告を上げていたようですが、それをライアンエアの整備課が修理しきれないまま、事故機を送り出していた、ということだったようです。

 

同機は事故当時、誤作動が発生していた『AOA Vane』からの誤った情報が原因で、『異常なまでに操縦桿が押された状態になり』、機首が異常に下がった状態になって、時速800キロというスピードで海面に墜落したそうです………

 

今回新たに装備された、この『MCAS』システム。どうやらボーイングからは、各航空会社に対する取り扱いの説明も十分ではなかった、という報道も目にしました。アメリカン航空サウスウエスト航空パイロット達の話を聞いていると、マニュアルには新たに装備されたばかりの装置に関する記述が、まだなかったそうです。

 

アメリカン航空の機長で、全米パイロット協会の通信委員長を務めるデニス・タジャー氏によると、「ライアンエアの今回のMCAS故障問題は、システムに関する知識不足で発生したもので、飛行中にエンジン故障に遭遇して対処法を知らず墜落した事故と同じケースと言える」だそうです。

 

恐らく防げたであろう事故、本当に残念で仕方ありません………