yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊 3/17

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

昨日はアトランタ経由でフロリダ州はジャクソンビルまでをお客さんとして乗ってきた裕坊。自ら頭を使わなくていいので、業界用語でデッドヘッドといいます。大抵のクルーは実際に頭が死んでます。周りの乗客を安心させるには、パイロットが客席に座るときには、寝て過ごすのが1番。あぁこんなに揺れてても飛行機は大丈夫なのか、と普段は飛行機に乗り慣れないお客様がホッとするのです。ですからどんなに揺れにも動じてはいけません。頭を壁に打ちそうな揺れが来ても、心臓がたとえドキッとしようとも、最低でも寝ているフリをするのです。

そのフロリダ州ジャクソンビルから担当したのがニューヨークのラガーディア空港行き。ラガーディア空港を離発着するときは、日記を書くにもブログに書くにもネタに困ることがありません。昨日も早速1時間の遅れ。定刻の出発は夕方の6時45分。昨日は管制塔からの指示で、離陸指定時刻が7時47分。狭いリージョナルジェット機の中に1時間以上も押し込めておくわけにはいかないので、搭乗も遅らせます。発表では7時20分へと出発を遅らせ、搭乗は6時50分ごろに始めることに。

昨日も少し触れましたが、ニューヨークエリアには旅客用の空港が3つ。この3つの空港の配置の仕方、大阪地区の空港の配置にとても似ています。

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ラガーディア空港はマンハッタンにほど近く、実際この空港に着陸するときは風向き、着陸用の滑走路によってはマンハッタンの摩天楼を真横に見ながら空港へと近づいて行くことも。大阪でいうなら伊丹のような位置づけ。ここには入国管理局がないので、一部のカナダからの便を除くと国内線専用。

日本からのニューヨークへの玄関口になるのがケネディ空港。距離的にはラガーディア空港からだと30キロほど南に位置します。各国の国際線大型機がやってきます。日本航空全日空も1日2便の運航。ジャンボ機ことボーイング747もたくさん飛んできますし、機体全体が2階建てになっているエアバスA380もここだと色んなバリエーションが見られます。大阪でいうところの関西空港にかなり近い位置付け。

マンハッタンからハドソン川を挟んで西へと橋を渡るかトンネルを潜るかすると、ニュージャージー州へと入ります。ここにも大型国際線機材が発着する空港が一つ。それがニューアーク空港。ユナイテッド航空ハブ空港の一つにもなっていて、ヨーロッパ行きの路線を中心にここも忙しく旅客機が行き来をします。大阪地区でいうなら神戸空港に近いでしょうか。3つの空港同士の距離や関係も大阪のそれにかなり似ています。

この3つの忙しい空港で空域を分け合います。昨日のように南西からニューヨークへと入っていくときは、ラガーディア空港到着便がニューアーク行きの到着便の経路とケネディ行きとに挟まれる形でほぼマンハッタンの南を目指します。ほぼ例外なく通るのがニューヨークの南部のブルックリンとステイトンアイランドを結ぶ、ベラザノ橋の上空。南西方向への着陸の日は、かなりの確率でここからハドソン川上空を通過。ベラザノ橋上空を通過してアッパー湾へと入ると、自由の女神が左手に見えます。夜でもライトアップされるので、左手に座っていてラガーディア行きのフライトに乗っているときは、ニューヨークに近づいてきたときに注目しておくといいかも。

ただ主要空港に挟まれるように、川の字の真ん中を抜けますから、空域としては広くありません。着陸便の列が滞ると例外なく上空待機が待ち構えます。そんなときは速度を少し落として燃料消費を極力最小限に落とします。上空待機とは早い話がホールディング。目的地には全然近づけないので、燃料消費を抑えなくてはいけません。

航空管制としても無駄な燃料消費を航空会社にいちいち強いるわけにはいきません。ただ悪天候時の航空管制の捌ける到着便の数はどうしても減ります。雨や雪、霧や強風時は管制官がレーダーによる各到着便の誘導をして滑走路へと到着便を送り込なければならないので手間が増える上に、1機当たりに費やされる空域自体も増えて、管制官の捌ける到着便の数はどうしても減ってしまうのです。

そこで管制官がニューヨークに向けて出発する便を出発地で待機させます。それが離陸待機。昨日はほぼ1時間ジャクソンビル空港で離陸までの時間を費やしました。そのためニューヨークにおける宿泊滞在も短くなって、昨日はホテルに着くなりバタバタです。シャワーを浴びて歯磨きをしたら、すぐベッドにゴロンです。

今日はこれからカンザスシティまでひとっ飛び。そのあとそこで4時間ほど待機してまたニューヨークへと舞い戻ってきます。昨晩と同じホテルに滞在です。

 

 

裕坊

裕坊 3/16

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

またお出かけです。今回は5日間出ずっぱりになります。ほとんど住所不定状態です。職務質問されてどこに住んでいるのか聞かれようものなら、多分住所を忘れたと真顔で答えると思います。リージョナルの航空会社に勤めていると、月の半分以上は家を空けてしまうので、自分がデトロイト近郊に住んでいる実感が本気でなくなることがあります。老後少しでもラクに暮らせるよう、愛妻ちゃんも裕坊も老体にムチ打って今日も頑張ります。

昨日は久しぶりのオイル交換。裕坊の乗っているセダン、もう既に乗り始めて10年以上が経過しています。オドメーターを見ると145,000の数字。これマイルでの表示ですからキロに換算すると23万キロ。一度エンジンに震えが来て、ちょっと高めの修理費を払ったことはありますが、あとは大きな故障といえば冬の1番寒い時期にエアコンが壊れてしまったことくらい。もちろんその時は、大きく目を見開いてフル装備で運転をしていました。

3年落ちの中古で購入。裕坊が今のリージョナル航空会社に雇われたときに買った、ちょっと大きめの中古車セダン。走行距離が出ていたとあって値段は相場に比べてもなかなかのお買い得。払ったのは10,000ドルほど、日本円にしてほぼ120万円くらい。もう十分元は取っています。ただ、まだ愛妻ちゃんの乗っているワゴンのローンが終わっていませんので、まだまだ乗り続けます。エンジンはまだまだ元気。

ただ新車の時からすると、既に16年が経過する年代物。さすがにガタは隠せません。ただでさえミシガン州の道は、冬の間は雪が降った後の除雪作業の際にコンクリートアスファルトもしっかりと剥がされてしまい、穴ボコだらけ。その穴にハマるたびにシートがお尻を突き刺してきます。サスペンションがさすがにかなり痛んでいたようで、その応急処置をしてもらいました。オイル交換のあとの作業はかなり時間がかかり、そのうちに不満を訴えてきた裕坊のお腹がデモ行進を始めます。3時間待った挙句、やっとのことで精算。応対をしてくれた男性の前で、裕坊のお腹からドラムの音が響き渡ります。応対してくれた男性従業員、苦笑いを浮かべて申し訳なさそうな顔をしておりました。

今回のトリップはひたすらニューヨークのラガーディア空港を行ったり来たり。今晩と明日はニューヨークでの宿泊も入っています。

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写真を見ていただくと何となく想像していただけると思いますが、ここは実は元々遊園地があった場所。遊具を取り除いたあと、川沿いに滑走路を作って、町側にターミナルを作り、その間に取りあえず誘導路を敷いてみました的な作りになっているので、今の空の旅を前提にはもちろんしていません。天気が穏やかな時はそれでもまだいいのですが、一旦雨や雪が降り出すと、途端に飛行機の流れが滞ってしまいます。離着陸はまだ管制官の腕で何とかなったとしても、駐機のスペースが絶対的に不足しているので、一旦遅れが出だすともうあとは雪だるま方式で全てがあっという間に数珠繋ぎになることに。

施設自体もとても古いので、中に入ると、タイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。70年も80年も昔の建物を使っているのですから、無理もありません。さすがに全面的な建て替えが必要ということで、つい最近になって完全に新しいターミナルを建設するというプロジェクトがスタートしました。一部では既に新しい建物の輪郭が出来上がっています。

すぐ南にはニューヨークへの国際線玄関口のケネディ空港、ハドソン川を挟んでニュージャージー州側にはニューアーク空港に囲まれていてあまり空域に余裕がない上、滑走路も国内線機材がようやく離着陸できるという長さ。旅客航空会社のパイロットとしても、様々な面でちょっと技術を要する空港の一つです。今回の担当フライトをネタに、話題を提供できるかと思います。

これからまずデルタ航空のお膝元、アトランタへと乗客の1人として移動するデッドヘッドで移動し、短い時間で乗り換えをして再びお客さんとして、フロリダ州ジャクソンビルまで。そこから裕坊の担当便。1便だけを担当してニューヨーク、ラガーディア空港を目指します。夜はそこで宿泊です。

 

裕坊

 

裕坊 3/15

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

昨日は予定通り3時ごろには3つのフライトを終えて4時過ぎには自宅へと帰っていた裕坊。普段なら飛行ログブックに4日間分のフライトの記録をつけて、そのあとはゆっくり。昨日はゆっくりするヒマもなく、踵を返すように散髪屋のクーポン抱えて伸びに伸びた髪を切りに、散髪屋へと走りました。愛妻ちゃんの乗っているトヨタ製のミニバン、ここ最近の雪で融雪剤がこびりついています。洗車が出来るように、更に給油もできるように愛妻ちゃんのワゴンで出かけます。帰りは髪を革製のシートに撒き散らさないように、タオルをターバンのように頭に巻いて運転。傍目に見ると中東商人のように見えてしまいます。それにしても何て愛妻思いの夫なんだろう…………

本来の予定では今日と明日とがお休み。それをたまたま担当機長が決まっていない5日間のフライトが、我がリージョナル航空の社内のウェブサイトに上がってきてしまいました。ちょっと迷ってしまったものの、結局本来担当するはずだった4日間のフライトをそちらへと交換。土曜日早朝の出勤が、金曜日のお昼の出勤になることに。ただお陰で早朝早起きの刑から解放されることになりました。お休みは1日減ることになるものの、朝早くても6時までゆっくりと寝ることができます。お休み1日返上してでも、そちらに担当便を変更するだけの価値があります。ただ休日が減る分、こなしておきたい予定は済ませておかないといけません。

裕坊が乗っているセダンくん、もう数週間前から「はよエンジンオイル、交換しろや」と警告しています。エンジンをかけるたびに、黄色いランプでそろそろオイル交換した方がええんちゃうか、と忠告してきます。ただそれを無視して走り出すと、セダンくんも諦めの境地に入ってしまうのか、忠告をやめてしまいます。気付いたらエンジンオイルの警告灯も消えてしまっています。ただ裕坊、製薬会社でのセールスをやっていた当時、お得意様の車のエンジンが焼き付いてしまったのを目の当たりにしたことがあるので、忠告はやはり無視は出来ません。そのときは、エンジンオイルが完全にカラになってました。今日は忠告に従って、整備工場へと向かいます。

今日1日のうちに洗濯を済ませて、乾燥機に移し替えて、制服をアイロンがけして、荷造りして……………………休みが終わるのは本当にあっという間です。

昨日も早起きだった裕坊。最初のフライトはピッツバーグからニューヨークのケネディ空港行きでした。6時過ぎの出発で東へ向かうとこんな景色が見えることもあります。

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新月に近い月が東の空から上がり、それに続いて太陽が昇ってきています。月と太陽の競走のような天体ショーが拝めることもあるのです。iPadを使っての写真なので、暗さに弱く、画質が今ひとつ鮮明でないのがちょっと残念ですが、雲の上に出てくる月や太陽を正面に見ることができるのは、コックピットならでは。ただドアで施錠されて密室状態となっている副操縦士とロマンチックなムードに陥ることは絶対にありません。未来永劫ありません。

この景色を堪能しながらケネディ空港へと到着した後は、ほとんど間髪をおかずにノースカロライナ州のシャーロットへと向けて出発。ここは元々US エアウェイズの大きなハブ空港として機能していたのですが、そのUS エアウェイズは最近になってアメリカン航空と合併。元々ノースカロライナ州最大の商業都市ということもあって、ここ最近は飛行機の出入りが以前とは比べものにならないくらいに増えています。昨日も着陸後、ゲートのある駐機エリアへと入っていくと、軽く30機以上の出発便が大人しく乗客を乗せたまま自分たちの順番待ちをしていました。

デルタ航空系が使用するターミナルは1番北側に位置するAコンコース。その更に北には新しいターミナルが立ち上がっていて、その輪郭はほとんど完成しています。今は内装の工事の真っ最中。駐機エリアの行き来がかなりややこしい空港なので、ここを出入りするときはどうしても気を使ってしまいます。ここのお目当てはフードコート。規模の大きさがハンパないです。お店の数だけで軽く10以上。バーベキューにお寿司、ピザ、サンドイッチ、もう何でも揃ってます。結局お寿司にありついてしまった裕坊。でも食べたの5切れだけと、勝手に自分に言い聞かせて納得しています。落とさないといけない体重は、一向に減りません。

洗濯機がガラガラと音を立てながら、裕坊の着替え類を洗ってくれています。乾燥機に移し替えて40分ほどしたら、すぐオイル交換へと出発です。

ところで昨日、車椅子の天才科学者と呼ばれたスティーブン・ホーキング氏が亡くなりました。ベストセラーにもなったスティーブン・ホーキング、宇宙を語る、裕坊も何気なく立ち寄った本屋で購入して、何度も読み返していたのを思い出しました。一時帰国のときは、本棚を探してみようと思います。裕坊にとっても共感できる発言や興味を惹かれる発見をしていた天才物理学者、本当に惜しい人を亡くしてしまいました。もっともっと彼の新しい発見を見てみたかったです。合掌

 

裕坊

裕坊 3/14

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

ここ最近、ほとんど毎日朝が究極に早い裕坊。ご褒美は普段よりも早く家に帰れること。ほぼ数ヶ月ぶりに太陽が沈まないうちに家に帰れるという、普通のサラリーマンでは決して味わえないご褒美を得られます。もちろん条件はつきます。それは飛行機が壊れないことと、裕坊を含めた他のクルーが寝坊しないこと。

朝一で飛行機に乗るときには、整備庫のある空港から出発する場合を除いては、大抵飛行機の電源は自分で立ち上げます。これが夏だとまだ涼しいうちに出発できるので、大抵操縦席も客室内もとても快適です。朝早く起きたことに対するご褒美を実感できるときで、機内はクルーの笑顔で包まれます。冬の間はシンシンと冷えた空気の中で電源を立ち上げますので、自分の吐く息がハッキリと見えます。生きていることを示す証拠がハッキリと目に見えます。客室乗務員からの圧力が時間が経つにつれて大きくなります。そんなとき、妻帯者は例外なく操縦席に座ってボタンを2つほぼ同時に押しています。既婚者の方であれば、それが何を意味するか、ご想像いただけると思います。

そのときに操縦席でパイロットが立ち上げているのが、APU。Auxiliary Power Unitの略で、業界人の間では普通にAPUと呼びます。このAuxiliaryというのは補助的な、付属的なという意味。早い話が補助動力装置です。言葉からして補助的に電源を確保するための機械というのは何となく想像していただけると思います。

普段の飛行中の電源はエンジン。回転部品が高速で回転することによって発する力を電気エネルギーに変えて得られる電気が電気源。発電機の原理自体は自動車と同じ。最近の旅客機は一部の大型機を除いてはどれもエンジンが2つずつついていますから、発電機も2個。ジェットエンジンは回転数が高く得られる電力も高いので、十分な電気が確保できます。

ただジェットエンジンは出力が高い分、かなりの燃料を食うのでゲートに止まっているときにエンジンをかけっぱなしにしておくと、あっという間にタンクがカラになってしまいます。しかも排気ガスの圧力がすごく、アイドリングの状態でもバスのガラスを力強く揺らすことができる力を持っています。ですから一旦ゲートに止まると、主エンジンは切るのが原則。でもそれを切ってしまうと電源を確保できません。そこで登場するのが補助エンジン、APU。

メカ的には飛行機の主力のエンジンとかなり近い構造。基本はタービン。ミニジェットエンジンと呼んでも構わないくらいエンジン構造は似通っています。空気を圧縮してタービンを回転させ、電気エネルギーを発生させます。こちらもそれなりに燃料は消費しますが、主エンジンに比べると半分くらいの燃料消費なので、節約は出来ます。電源をこれにて確保。飛行機の後ろの方に小さな排気口があるのを皆さんお気付きになったことがあると思います。まさしくAPU用の排気口と思っていただいて間違いありません。

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空気もかなり圧縮できますから、その圧縮された空気をエアコン用にも確保できます。温度調節もできるスグレモノ。冬の寒いときにAPUを立ち上げたら、少し客室の温度設定を少し高めにして、乗客の皆さんが搭乗を始める前に客席を暖めておきます。もちろん、温度設定はときどき変えて、ちょうどいい温度にしておくことは機長の必須業務項目。怠ると後方の客室乗務員からのインターホンが鳴り、放送禁止用語をいくつも聞かされることになります。

ちなみに最近では、電源もエアコン用の空気も、飛行機がゲートで停泊しているときはほとんどの空港で外部から確保できるようになっています。黒い大きなコードが地上を這うように飛行機に繋がれているときは、そこから飛行機が電源を確保してもらっていると思っていただいて、ほぼ間違いありません。春や秋の気候のいい時は敢えてエアコンの空気を客席に送り込む必要がないので、外部から電源を引いてAPUを切ってしまいます。これでまた少し燃料が節約できます。

今日はピッツバーグを出発してまずはニューヨークのケネディ空港まで。そのあとノースカロライナ州のシャーロットを経由してデトロイトまで帰ります。シャーロット空港のフードコートには、とても美味しい豚肉バーベキューがあります。お寿司屋さんもあります。誘惑に負けないようにしなくてはいけません。

 

裕坊

裕坊 3/13

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

昨日はミネアポリスからひとっ飛び、カナダのトロントまでやってきました。飛行機の整備上の問題が発生して少しミネアポリスを出発するのが遅くなったこともあり、昨日の宿泊滞在は正味11時間と外を出歩く余裕は到底なし。それでもコーヒーメーカーはついているので、いつものパターンでコーヒーを沸かして眠い目を無理やり開ける裕坊。

カナダはアメリカと陸続きとはいえ、アメリカからすると外国。到着後宿泊滞在をするときは、一般の乗客と同様、入国管理局を通らなければいけません。カナダ最大の都市トロントには、ニューヨーク同様数多くの外国からの到着便がやってきます。アメリカでも最近よく見られる傾向に倣って、機械に自ら情報を入れたりパスポートをスキャンしたり。以前よりは流れがよくはなりました。ただ入国者の数はやはり多く、しかも入国管理局用のスペース自体があまり大きく取られていないので、いつも大混雑。

翌朝カナダから空路でアメリカ入りするときは、トロントバンクーバーモントリオールといった主要都市からの場合、カナダ側で入国管理局を通過します。ホテルは当然早めに出発。行きも帰りも大抵30分ずつ余分な時間がかかるので、実質の滞在時間は1時間ほど削られます。さらに税金もアメリカに比べると高め。食事に行くとどうしても高くついてしまうので、アメリカ人のクルーはカナダの宿泊滞在を敬遠しがち。

今朝の裕坊の空港ショーアップは5時45分。アメリカ国内の田舎町であれば5時半にホテルを出発すれば余裕で間に合います。トロントでは出発前に入国管理局、税関を通る上、アメリカでは設置されているクルー専用のセキュリティーレーンがないので、一般の乗客とともにセキュリティーを通過。しかもホテルが少しばかり空港から離れたところにあり、送迎シャトルは40分おきの出発。裕坊の送迎シャトルの予約は4時40分。今朝は2時45分に目覚ましをセット……………………………………でもそれより早く目が覚めてしまう自分って何なんだろう、と考え込む裕坊。相変わらずの小心者です………

書面上では13時間となっている宿泊滞在ながら、実質ホテルにいるのは11時間ほど。シャワー浴びて日記書いて一晩寝てブログを上げて着替えを済ませてカバンに詰めて、なんてやっていたら落ち着くヒマもありません……

そういえば昨日こんなことがありました。飛行機に乗っているとたまにご褒美があります。機内食のお裾分け。たまに訪れるおまけです。たまにです。昨日の朝のノースカロライナ州のローリーからミネアポリスの便での機内食です。で、内容がこんな感じ。

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念のためにもう一度確認しておきます。たまにです。国内線の場合、900マイル以上のフライトで提供されるのが原則。ただビジネス客のお客様が多く搭乗されるシカゴからニューヨークの便ともなると、900マイル以下でも食事が付いてきます。シカゴからケネディ空港の直線距離はおよそ700マイル。しかも大抵東行きになると追い風のフライトになり、飛行時間がせいぜい1時間ちょっとなんてことも。ファーストクラス担当の客室乗務員が走り回っているのが、ドアを通して聞こえることもあります。

今日はこれからミネソタ州ミネアポリスを経由し、鉄鋼の町で知られるペンシルベニア州ピッツバーグへ向かいます。順調に行けば、お昼頃には終了の予定です。あとは飛行機が壊れないことと、客室乗務員が寝坊をしていないことを祈るばかりです。

 

裕坊

裕坊 3/12

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

今朝も早くからクロワッサンとコーヒーの組み合わせ。今泊まっているインディアナポリスのホテルでは無料で朝食が食べられるのですが、朝が早すぎるためまだ朝食の用意はなし。仕方なく部屋の中で持参のクロワッサンをかじる裕坊。朝がめちゃ早いか、夕方極端に遅く出発するか、究極のスケジュールを行ったり来たりするのが、ザ・リージョナル。

昨日はデトロイトを出発からお客さんとしてピッツバーグまで。夏時間に変わって1時間寝る時間を損したあとの早朝の朝一のフライト。普段はそれなりに混んでいる日曜日の早朝もさすがに昨日はガラガラ。空席も多く、座席はファーストクラスへとアップグレードされてご満悦。でも一旦離陸したあとの飛行時間はせいぜい40分ほど。仮眠を取る間もなく終わってしまいます。唯一残るのは中途半端感…………

ピッツバーグでは次のケネディ空港行きのフライトまで2時間待ち。1時間ほど待ったところで飛行機がやってきて、パイロットが交代。ボーディングブリッジでフライトを終えたクルーを迎えます。そこで降りてきたのは、裕坊ともう1人同じ会社に所属する日本人パイロット。今勤めるリージョナル航空に在籍する日本人は裕坊とその彼の2人だけ。ずっと長らく他の副操縦士から彼の名前を聞いてはいたものの、なかなか会う機会に恵まれでいなかったのが、ようやく昨日会う機会に恵まれました。

我がリージョナル航空、今は4つの配属先があり、パイロットは合計で1,600名ほどが在籍。リージョナル航空会社はほとんどのパイロットにとって初めて勤める旅客航空会社。しばらく経験を積んで、大抵は大手へと移っていきます。裕坊が入社した当時にいた日本人女性パイロットは、裕坊が入社して3年ほどで大手へと移り、他にも1人がやってきては他へと移っていきました。寂しいですが、リージョナルの航空会社の性質上仕方ありません。

裕坊が日本人同士で飛ぶ機会に恵まれたのは2回。一度は副操縦士として、一度は機長として。日本語でお話ができる貴重な機会です。普段は話を半分ほど聞いて、数日経つと内容を忘れてしまう裕坊の頭にも、話した内容が細かく記憶に刻み込まれます。改めて裕坊は日本人なのだ、と実感する瞬間。

各航空会社とも数は決して多くはないですが、確実に存在する日本人のクルー。他のリージョナル航空会社にも数名裕坊の知り合いが働いていますし、大手で既に国際線専用の大型機材に乗っているものも。日本人しか知らないテレビの話題などで花が咲いたりなど、とても楽しいひとときを過ごせます。

昨日初めて会うことができたSくん、既に機長に昇格済み。ミネソタ州に住みながら今はニューヨークへと通い、お客さんを各地へと運びます。既に大手航空会社本体から内定をもらっていて、機長としてもうしばらく飛んだあとはそちらへと転籍。大手の航空会社はパイロットの大目標。その中でもアメリカのパイロットの多くが憧れる航空会社への内定を得ました。彼の大目標達成はもうすぐそこまで迫っています。彼がひとたび去ってしまうと今のリージョナル航空会社では日本人パイロットはまた裕坊1人だけになってしまいますが、Sくんの大手航空会社移籍の際には、快く送り出したいと思います。

今日はインディアナポリスを出発してまずはノースカロライナ州のローリーを経由し、我がリージョナル航空会社の本社があるミネアポリスまで。そしてしばらくぶりにカナダの最大都市トロントへと飛んで宿泊です。

 

裕坊

裕坊 3/11

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

眠い目をこすりながら何とか4時前には起き上がり、半目でキーボードを叩く裕坊。今日からアメリカでは一部の地域を除いて夏時間が始まります。昨日まで6時だったところが7時になるという計算。我が家では昨夜あちこちの時計の針を1時間早めたり、デジタルの時計の設定をし直したり。今朝の4時起きは実質的には体の時計でいうと、ほぼ3時…………こんなスケジュールが来るのも、まだまだ社内における優先順位が低い証拠。

幸いにも今朝の1本目はピッツバーグまでのデッドヘッド。自ら頭を使う必要はありません。一般の乗客の皆さんと同じタイミングで搭乗し、一旦客席に座ったらあとはゲームをしてようと寝ていようとイビキをかこうと本人の自由。着いた先からのフライトに備えることさえできれば、クルーが何をやったって会社は知らぬ存ぜぬ。操縦席に座っているときはちゃんと起きていられるのに、客席に座るとちゃんと他の人と一緒に寝られるのですから、不思議なものです。

何をしていても自由とはいえ、デッドヘッドもフライトスケジュールの一部。客席に乗って一般の乗客の方と座席を共有するとはいえ、制服は着た状態で搭乗。会社でも定められた規則です。一旦到着したらすぐそこからの担当便に備えるのですから、当然といえば当然。ほとんどのアメリカ人はムダにガタイが大きくて、脂肪という名の自己防御毛布にしっかりと覆われていますから、長袖のセーターとかは必要ありません。半袖シャツに肩章がついた状態で座っています。一目見てパイロットだと分かります。

裕坊のデッドヘッド。同じような厚みのある毛布には覆われていませんから、ジャケットを羽織って座席に収まります。カバンの中にはタブレットが3枚。それぞれに用途があります。一枚は空港の情報やマニュアルなどが満載のiPad。仕事用です。もう一枚のiPadはプライベート用。ブログ用のキーボード付き。日記も書けます。テキストにも便利。野球ゲームでも遊べます。そしてもう一つの小さめのサイズが読書用。大抵読書用の小さいのを取り出して、本を読み始めます。離陸時までには睡眠波を出して、裕坊を眠りへと誘ってくれます。ですからムダなエネルギーを消費しなくて済みます。とても便利!

アメリカ人パイロットのデッドヘッドでの過ごし方は様々。ゲームに興じる者もいます。でも朝早い便だと大半は窓にもたれかかって目を瞑ります。しばらくすると鼻から大きな音を鳴らして、呼吸を整え始めます。到着地からの担当便に備えて、無念無想の境地へと入ります。これこそ究極のアメリカ式精神統一。自ら担当するフライトに向けての準備を怠りません。

周りに座る一般の乗客の方からは笑顔がこぼれます。どんなに揺れの激しいフライトであろうと、彼らの精神統一が揺らぐことはありません。揺れが激しくなればなるほど、鼻からの呼吸音も大きくなります。微動だにしないのがアメリカ流。ちょっとやそっとのことで簡単に乱される神経の持ち主ではないのです。そのたくましい精神に周りは安心感を覚えます。少々の揺れでは飛行機の安全性が脅かされることはない、と威風堂々とした態度を示します。おかげで周りに座る一般の乗客たちは安心感を覚えるのです。

デッドヘッドで到着したピッツバーグで2時間ほど待機した上で、今日はまずニューヨークのケネディ空港まで。そのあと更に3時間待機した上で、インディアナポリスへと向かいます。裕坊もデッドヘッドのフライトでは、アメリカ流精神統一に勤しみたいと思います。

 

裕坊