yuichibow’s blog

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊 3/2

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

昨日、ミシガン州デトロイト周辺は裕坊がブログの送信ボタンを押して数時間もしないうちに雨が雪に大変身。雪が消えてようやく春の訪れを感じるかと思いきや、お天道様は何を思ったか透明の雨粒をいきなり大粒のボタン雪へと変えてしまいました。1時間もしないうちに辺りはあっという間に銀世界。どうやら春の訪れの前の倉庫の大掃除、残っていた雪をハタキで払い出したようです。

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我が愛妻ちゃんは仕事帰りにミドルスクール、日本でいうところの中学校へと寄り、息子くんを拾い上げて帰ってきます。どうやら雨が雪に変わるタイミングがよくなかったようで、何ヶ所か交差点でブレーキが効きにくく、怖い思いをしたとのテキスト。実は飛行機も同じで、ある一定条件下だと飛行機は止まりにくくなります。

忘れもしない3年前の真冬の真っ只中。ミネアポリスからニューヨークのケネディ空港への担当。気象条件が悪く、デルタ航空本体ですらほぼ全便が欠航になる中、我がリージョナルジェット機、小さな鉛筆のような飛行機だけが遅れながらも運航となりました。当然のことながらどうしてもニューヨークに行きたい乗客でごった返す結果となり、76人定員に76名の乗客。さらに操縦席に1つ、客室乗務員がドリンクサービスを用意するギャレーにも1つ用意された観察者用の座席、ジャンプシートにも1人ずつが乗り、立錐の余地もない完全満席。

ケネディの気象情報に目をやるとFZRAとあります。このうちのRAとはRain、つまり雨。その前に着いた2文字。実はこれが曲者。ここにあるFZとはフリージングの略で、凍らせるという意味。このFZRA、フリージングレイン、雨氷という現象、液体の状態で降ってきた雨が地面や物に当たるとその途端氷に変身してしまうという厄介者なのです。しかも視界が極端に悪い日で着地直前まで滑走路が視認できない夜。

この日はカテゴリー2と呼ばれる操縦で滑走路へと進入して行きます。副操縦士が操縦桿を握り、その副操縦士は目の前の飛行機の計器とにらめっこ。速度や高さ、滑走路の中心線に合わせて滑走路に近づく作業などを全部計器を見ながら1人で担当。機長は滑走路付近に設置された滑走路への誘導灯や滑走路灯などが見えないか、窓の外に目を凝らします。

着地5秒前、飛行機の高度がギリギリ30メートルを切ったところで誘導灯が視界に入り、裕坊が操縦桿を握り、飛行機を着地させます。ただ夜の視界の極端に悪い状態で飛行機の着地姿勢が自分でなかなか把握出来ず、飛行機もすぐには着地せず、いつもより3秒ほど着地が遅れたというのはありましたが、いざ着地後ブレーキペダルを踏んでみると……………………ブレーキが効かない…………………………

このときは真面目に大手新聞の1面が頭をよぎりました。しかし既に逆噴射装置を作動させているので、ここから着陸を中止し再離陸することはできません。逆噴射装置が稼働した状態でそこから再離陸を試みると、エンジンの出力が上がるまでには最低でも5秒はかかります。時速250キロで滑走路上を動いていますから、下手をすると大事故は必至。ここはこのまま減速を最大限試みるより他に選択肢はありません。

ひたすら祈りました。逆噴射装置を最大限稼働。それだけが頼りでした。タイヤはほとんどグリップしていませんから、横風にもかなりの影響を受けてしまいます。完全向かい風で、しかも風速10メートルほどだったことも幸いしました。ギリギリ滑走路の端から30メートルほどのところで停止。滑走路の最先端を示す赤い一列の灯りが、ほんの目の前まで迫っていました。

元々お天気には敏感で、気象予報などもマメには確認していた裕坊ですが、その便以来さらにフリージングレインに極端に反応するようになったのは言うまでもありません。雨氷の怖さを思い知らされました。最近では航空気象情報には滑走路の状態を示すコードも一緒に記載されるようになり、滑走路の減速具合を計算で把握できるので決断には役立つようになりましたが、雨氷と聞くとどうしてもあの晩の一件を思い出してしまいます。

今日は道路事情が回復せず、デトロイト周辺の学校は軒並み休校。愛妻ちゃんも息子くんもつかの間のお休み。裕坊は夕方遅く6時ごろ我が家を出発。オハイオ州シンシナティへと1便だけを担当してきます。

 

裕坊