米国航空会社で、小型旅客機を操縦している、裕坊です。
何事にも始まりがあり、終わりがある…遠い遠い遠い遠い彼方のような先を見れば、地球にも必ず終わりを迎える時というのはやってきます。
とは言っても、もちろんそれはまだまだ先の話。人類絶滅の最初の危機は、実は大気中における二酸化炭素濃度の低下が原因となってやってくるそうですが……
ただ様々な危機を乗り越えたとしても、遅くとも20億年後には徐々に輝度を増す太陽光線(1.1億年ごとに、太陽は1%輝度を増しています)によって、地球は水一滴すら残らない灼熱の大地になる運命…地球上に残っている生命は、痕跡すら残すことなく根絶してしまいます。
その時までに人類が手掛ける技術革新が十分に進んで、地球外惑星などに新たな住居が見つかることを期待しておきましょう……
って、いつの話をしてんねん……
航空機は目覚ましい勢いで技術革新が続き、最近では旅客機も2名体制が標準になり、ほんのごく一部に残る貨物機を除くと3名体制の航空機というのは、ほとんどが姿を消していまいました。
航空機の技術推進の経緯は、ボーイング747型機を参考にするととてもよく分かります。
上の写真が、3名体制のボーイング747−100型機で、下が派生型の400型、2名運航方式。
見た目には初期型は2階席が短く、新型の方が2階席が後方に延長になった程度で、大きな違いはないのですが…
操縦室内を一見すると、その違いは歴然…
小さなメーター類、計器類が所狭しと並んでいるのが初期型の特徴。
2名のパイロットが座る操縦席の後ろには、メーターやスイッチ類がズラリと並んだパネルが置かれ、
各機能の調整などを担う航空機関士と呼ばれる乗務員が座ります。
与圧系統や油圧系統、燃料ポンプの調整など、旅客機の運航に欠かせない各種機能を調整する役割を担っていたのですが、
それらの機能はコンピューターを始めとする自動装置に置き換えが進み、2名のパイロットによる運航が可能になって、
操縦室内もスッキリするようになりました。
パネルが除去され、日光もたくさん入るようになって、明るくなったコックピット。
ただし新機能満載の機器類は、製造時に搭載されるのが普通…
ところが……
古い機材そのままに、新しい機能を搭載することだって不可能じゃないやろ、と考えてしまった会社がありました。
世界最大の貨物航空会社、フェデックス社(本社:テネシー州メンフィス)がそれ…
写真は日本の空でもお馴染みだったマクドネル・ダグラス社製のDC−10型機。
旧型タイプで、航空機関士を必要とする3名運航型の機体。
操縦室内にも、丸い計器類がたくさん並べられておりました。
それをあろうことか…………
本当に操縦室内を改造してしまった……
機体そのものには全く改造が施されなかったにも関わらず、新計器類の導入とともに自動化が大きく進んで、2名体制が可能になることに…
2名運航用に開発されていたMD-11型機とメーター類が共有化され、1つのライセンスでどちらの機材にも乗務が可能になった新しい貨物機は、
『MD−10』と名付けられることになりました。
こちらが改造後に導入されたMD−11と共有の計器パネル。
小さなメーター類がスッキリと1つの画面に収められ、当時としては画期的な技術革新の1つでもありました。
ちなみに裕坊が現在乗務しているボーイング717型機も、全く同じものを共有しています。
ボーイング社によるマクドネル・ダグラス社買収前の機体名はMD−95。当時の面影を色濃く残しています。
姉妹機的な扱いになったMD−11との違いはほんの僅かで、
主翼先端に切り立った補助翼(ウィングレットと呼ばれます)がないのが、MD−10の大きな特徴。
ウィングレット付きのMD−11。コンピューター制御操舵の尾翼を採用しているMD−11は、水平尾翼の面積も小さくなっています。
ただ平均機齢が40年と、経年劣化が隠せなかったMD−10型機。
ここ最近のフェデックス社の収益減も後押しする形になり、MD−10は昨年末をもって全機退役となりました。姉妹機のMD−11もボーイング777機による置き換えが進んで、近々の退役を控えています。マクドネル・ダグラス社が手がけた航空機が、またしても空の主役の座から降りることになりました。
そしてそれに変わるように、新たな歴史を刻むことになるかも知れない新旅客機のプロジェクトが立ち上がっています。
プロジェクト名は『サステイナブル・フライト・デモンストレーター(Sustainable Flight Demonstrator)』。
二酸化炭素排出量を削減した航空機の開発に取り組むのだそうです。
単列通路のナローボディ旅客機の開発から遠ざかって久しいボーイング社は、ライバルであるエアバス社に販売数で差を開けられつつありました。新たな商業機材の開発を目指したかったボーイング社にとっても、渡りに船…
でも裕坊の正直な胸の内を明かすと、このセグメントは大規模な市場を抱えているだけに、三菱には旅客機の開発を再開して欲しい〜…
新たなプロジェクト、ちょっと複雑な思いで眺めている裕坊です。