米国航空会社で、短距離路線に従事する、裕坊といいます。
年末年始の繁忙期に合わせて、1日のお休みを挟んで、10日連続のフライトへと出かけています。
別名をノーイースター(Nor‘easter)とも呼ばれる、ブリザート級の猛吹雪が東海岸へと近づきつつあるアメリカ大陸。
今回は低気圧が広範囲にアメリカ大陸を覆い、中西部のミネアポリスなどでも積雪の予報が出て、既に欠航になる便も発表になりました…
そんな中アメリカにおける年末年始、通称ホリデーシーズンと呼ばれる休暇が本格的に始まるのは、クリスマスから。
今回の勤務は、シカゴでの宿泊滞在から…
デルタ航空は、シカゴ・オヘア空港では長らく発着していた第2ターミナルEコンコースから、発着ゲートを国際線用ターミナルへと11月に移転したのですが、
コンコースの中央には、免税品店も充実…
早い休暇を取得して家族の元へと向かう人の数も多く、到着口は海外からやってきた大きな荷物を抱えた人で、すごく賑わっていました。
もちろんシカゴ観光目的で訪れていた方もいたでしょうが、
恐らく多くの人が向かっているのは、 家族や親戚の元…
家族親戚との繋がりを特に大切にするアメリカ人にとって、クリスマスシーズンとは俗に言うファミリー・リユニオン(Family reunion)の季節。
何家族もの親戚中が一軒に集い、家族団欒の時間を過ごします。
数十人が一堂に集うことも珍しいことではなく、1年ぶりにひと時を過ごし、
写真には、たくさんの笑顔が映し出されます。
海外からであったり、州外から集まってくる人の数も少なくなく、航空便を利用する人で旅客機はこの時期は大混雑。特にコロナ禍明けとも言える今年の年末年始は、しばらくぶりに会えなかった家族親戚の元へと向かうため、各機体の稼働率は最大になり、搭乗率もほぼ100%に近い状態になっています。
どんな人でも、この家族親戚の中に加わりたいのですが…
この輪に加われない人も、残念ながら存在します……
その代表とも言えるのが、一度出勤するとしばらく地元を遠く離れ、数日フライトへと出かけたままになる航空会社の乗務員たち…
家族や親戚が集まる輪の中に加わることなく、ずっと出先で飛び続けます…
親戚じゅうで撮る写真の中には自分の姿はなく、
そんな写真を見るにつけ、周囲にはどんな笑顔を見せていようとも、どんなに意気軒昂に振舞っていようとも、心の底で襲われてしまう孤独感…
家で待っている家族たちだけで親戚の元へと向かうことはできるものの…
『あなたの旦那さん、今回も来れなかったの?そういえば、あなたの所の旦那さん、パイロットだったものね…』 幾度となくこう言われ続けて辛い思いをする奥さんや子供たち……
次第に親戚から心が離れてしまうことも少なくないそうです…
2019年には、アメリカの航空会社の乗務員、特にパイロットという職業に就いている人の75%が一度は離婚を経験しているという、衝撃的なデータが上がったこともありました。乗務員の家族が抱える過酷なまでの現実を、如実に物語っています。
アメリカの航空会社のスケジュールは、純粋なまでに社内在籍歴によって全てが決まります。通称シニオリティ(Seniority)と呼ばれ、会社在籍歴が長い者から優先して、自ら希望するスケジュールを選択します。
在籍歴が長ければ長いほど、自ら希望する休日を取得し、中にはクリスマス前の1週間前から有給休暇を取得したりなど、12月は前半2週だけ勤務してホリデーシーズンを悠々と過ごす人もいるのですが、
多くの乗務員たちは、出先でのホテルで1人で過ごすことも少なくなく、
むしろそんな時は、仕事をしている時の方が気が紛れるほどです。
裕坊は今年は転籍による移動で、6月から正式にデルタ航空の社員になりました。
子会社から親会社への移動でこそあったものの、新しい職場では新入社員…
ですので在籍歴に関して言うなら、ゼロからの再スタート…
新人研修での座学講習には60名が在籍する大所帯でしたが、全員例外なくクリスマスはフライトが組み込まれていて、ホリデーシーズンに休暇を取得しているのは一名たりともおりません…
こちらはフロリダ州のデイトナビーチ空港での、外部点検中の1コマ…
アトランタからの往復便でしたが、両便とも完全に満席になっていました。
1日の勤務が終了し、ホテルへと向かう途中の、閑散とした旅客ターミナル内…
その制服姿などから憧れる人も多いとされる、航空会社の乗務員。一見華やかにも見える職業なのかも知れませんが…
ちなみに、写真は裕坊本人です。
地元を離れる機会が多く地元との結びつきでさえ希薄になって、孤独を感じる場面も少なくない航空会社の乗務員。
顔では笑っていても、心の中では泣いていることも少なくありません…
ただこの宿命を知っていて、乗務員となることを選択したのも乗務員たち本人…
アメリカの航空会社の乗務員である以上、例外なく誰もが一度はこの道を通ることになります。
デルタ航空への転籍を決断した時点で、既にこの宿命を負っていた裕坊…
自ら選択した人生。心への負担は大きいですが、これを乗り越えることも乗務員ならではの宿命です。
ホワイトクリスマスになりそうです。