yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 2/3

アメリカの地域航空会社所属の操縦士、裕坊といいます。こんにちは。

月曜日に雪がチラつく中、日帰りのフライトをこなし、火曜日も続けて日帰りのフライトに出かけてまいりました。

 

ほぼ先月の末までクリスマス用リースが飾られていた、デトロイト空港ターミナル内……

やっと日常が戻ってきました。

 

既に2月に入って、我が社の空港内事務所は、バレンタインデー仕様。

 

お正月が終わってやっと落ち着いてきたくらいに思っていたら、

もう2月なんや………

 

火曜日のフライトは、デトロイトからテネシー州メンフィスへの往復便。

往路は客席に乗っての移動でした。

 

最近乗務することが多くなった、70名仕様のCRJ−900型機。

デルタ航空管轄のCRJ−900型機ですと、通常の機体は76席なのですが、そのうちエコノミークラスから座席が6席減って、酸素ボンベや消化器専用の収納棚が新たに設置されたり、化粧室がやや広くなったりしています。

 

ちなみに、こちらが76席仕様……

写真だけじゃ、違いが分からん……

 

ちなみにこれはコロナウィルス感染の前に撮っているので、ファーストクラスには毛布や枕などが置かれています。その毛布と枕のサービスは、国内線は現在休止中……

 

70席仕様には客席にも若干の改良が加えられていて、蛍光色だけではなく、様々な色のライトなども設置されるようになりました。

しかし、なぜ70席仕様をわざわざ敢えて作る必要があったのか、というと……

 

実は親会社のデルタ航空と、デルタ航空パイロットの組合の間で締結されている、契約内容に影響されていて…

三菱航空機が手がけているスペースジェット(2021年2月現在は中断)の開発のエピソードでも話題になったことがありましたが、パイロット組合との契約の間にはスコープクローズ(Scope Clause)というのがあり、そこにリージョナルジェット機に関する細かな規定があります。

 

ちなみに一部をご紹介すると、契約委託先、もしくは子会社の保有する機体の最大座席数は76席、最大離陸重量は86,000ポンド(およそ39トン)。

三菱航空機社がスペースジェット開発中に、やや小型サイズの機体の開発を並行して急遽始めなければならなくなったのは、このスコープクローズの最大離陸重量の範囲内に収めるためでした。

 

そのスコープクローズの中には、76名仕様のリージョナルジェット機の機体数にも制限が加えられていて、デルタ航空の場合は153機。これは既に上限に達しています。

70名仕様の機体の上限は102機。まだ70名仕様の機体ですと若干の余裕があるので、最新の機体が70名仕様になった、というのがカラクリでした。

 

さらには、デルタ航本体の合計便数に対して運航できるリージョナルジェット機の運航便数の割合にも制限があり、今のままだと76席仕様の機体が制限を超えてしまうので、

76名仕様の機体のうち27機を、重整備の際に70名仕様へ改造することが決まりました。

 

平常時であればデルタ航空本体の機材が使用される路線に、需要の減少とともにリージョナルジェット機を多く投入するための、苦肉の策…

 

それでもまだ機体数がスコープクローズの規定を上回ることになってしまっているため、 10機は、短期的に駐機場に置かれることに…

当面の間10機は、通常は重整備が行われるカンザス州サリーナ空港(空港コード:KSLN)に駐機されることになりました。

 

空旅客需要減で、今になって脚光を浴びているのが、この50名仕様の元祖CRJシリーズ。

 

70名仕様、76名仕様が投入できなくなった路線を網羅するために、 アリゾナ州にある大型駐機用空港、キングマン空港(KIGM)から、

 

10機にお呼びがかかって、路線へ再投入されることも合わせて決まっています。

 

デルタ航空からは、2023年度には50名仕様のリージョナルジェット機は、全機退役になることが発表されていますので、

あくまで一時的な措置ではありますが……現在10機ともサリーナ空港で再整備が行われていて、早ければ2月中旬にも再投入されることになります。

 

 

メンフィス到着……世界最大の貨物航空会社フェデックス・エクスプレスの本家お膝元…

旅客航空会社の需要回復率は、アメリカ国内に限って見てみると、コロナウィルス拡大前と比較して、およそ4割ほど…いまだに各航空会社とも、旅客部門での赤字は続いています。

 

それに対して需要が伸びているのが、貨物部門。

フェデックス・エクスプレスの主力機は写真にもある、MD−10、MD−11型機。 ちなみに3名乗務の旅客機だったダグラスDC−10型機からの改造型MD−10型機は、2名運航型。フェデックス社は現在16機保有していますが、全機2022年度末には、退役することが決まっているそうです。

 

昨日は裕坊たちは、夕方5時ごろデトロイトへ向かって折り返し。珍しくその時間帯に、メンフィス国際空港の3本の並行滑走路から、次々に貨物便が離陸しておりました……

 

メンフィスからの昼行便は、今までですとニューヨークやシカゴ、ロサンゼルスなどの大都市に限定されていたのですが……

フェデックス航空の貨物機の出発ラッシュは、深夜だったはず……こんなん、今まで見たことない……

 

友人が数名フェデックス航空に勤めておりますので、挨拶がてらメッセージを送ってみると……

 

 

 

「ワクチン輸送や」……

 

 

 

納得………

 

 

ちなみに、フェデックス航空は、航空会社部門でもグローバル展開を進めている企業で、米系の貨物航空会社にしては珍しく、乗務員の海外拠点空港まであるのですが、

 

そのうち、香港を拠点としているパイロットたちは、全員一時的に帰米しており、サンフランシスコへと戻ってきているそうです。

どうやら乗務員といえども、到着後の2週間の自主隔離を義務付けられていて、それに対する措置なのだとか……

 

ちなみに、一時は300ドル越えを達成したフェデックス社の株価は、現在240ドル台……

需要は伸びているものの、どうやら個人向けの輸送が伸びても、なかなか利益に反映しにくいらしい、と友人は漏らしておりました……

 

商売は難しいです…

 

 

 

 

次の出勤まで、しばらくお休みをいただくことになりました。