yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 4/30

アメリカの旅客航空会社で、小型機に乗る裕坊と申します。こんにちは。

5日間の自宅待機を経て、明日から5日間のフライトへと出発です。大幅な需要減を受けて、各航空会社も大幅減便。平常時によくある主要基幹空港での短時間での乗り継ぎなどは、今はほとんどなくなっていますし、地方都市では旅客便の運航が1日1便まで減便されているところも多くなっています。

 

最近では各便とも目的地に到着後の時間には余裕がありますので、折り返し便の出発前に、入念な除菌作業が行われるようになりました。

ちなみに上の文書は、最近会社から送られてきた除菌作業についての詳細。最低10分間の除菌作業が盛り込まれています。

 

そのため各便とも出発前は、病院に来たのかと勘違いしてしまうほどに、除菌剤の匂いが強烈に香るようになりました。

また今までですとアメリカ国内でマスクをしている人はといえば、ごく少数のアジア系の人たち、あとは医療機関における医療従事者くらいのものでしたが……

 

アメリカにおける確認済み感染者数、公式発表の死者数ともに世界最大の国になってしまい、各地でマスク着用が義務付けられ、

マスクに対する概念を、ほぼ180度覆っています……今ではマスクをしていない人を見る方が少ないくらい……

 

ニューヨーク州では、外出時のマスク着用が義務化され、ミシガン州でもスーパーなどの店内に入る際には、マスク着用が必要になります。

その効果が徐々に現れ始め、確認済み新規感染者数も、公式発表の死者数も多くの州で頭打ちになってきています……

 

 

ただ集団免疫を獲得するためには、住民全体の70%が抗体を持つ必要があります。感染が劇的に拡大してしまったニューヨーク州でも、公式に発表されている人口に対する感染率は、まだ僅か1.5%……先日行われたランダムな抗体検査によると、実際の感染者数はもっと多く、ニューヨーク市周辺で最大5人に1人の割合で感染している可能性がある、と示唆されましたが、それでもまだ20%…… 集団免疫を獲得するには、まだまだ程遠い道のり….…

 

やはり本当の意味での今までの日常生活を取り戻すためにも、ここは一刻も早いワクチン、治療薬の登場をお願いしたい……

 

 

そんな中厚労省は、米国製薬会社「ギリアド」社が抗エボラウィルス薬として数年前に開発していた「レムデシビル」を、日本の製薬メーカーの抗インフルエンザ薬「アビガン」に先立って、国内承認することにしたようです。ちなみにこの「レムデシビル」というお薬、重篤な腎不全が起こる可能性があることから、元々の開発の対象だった抗エボラウィルス薬として承認している国は、現在に至ってもありません…

ではなぜ、その「レムデシビル」を国内で先立って薬事承認するのか…….一部で治療効果が相次いで報告されている国内産のアビガンに先立って承認されることに、批判の声も上がっています。

 

まず一つは、これは国外で開発されたお薬であり、海外で承認され販売実績が上がっているお薬であれば、薬事法上の「特例承認」の適用を受けられること。通常国内で新薬を開発する場合、重要性が高く優先的に審査されるお薬でも、承認には最低6ヶ月の時間がかかりますが、海外のお薬であれば厚労省が外国の保有するデータを信頼する限り、この「特例承認」によって認可することができるのです。「レムデシビル」のケースは、これに相当。

「レムデシビル」には重篤腎不全の副作用の可能性、という但し書きがつきます。そして「レムデシビル」は静脈注射、もしくは点滴によるお薬。恐らく実際の医療現場では「アビガン」などの他の治療薬で効果が見られず、肺炎が重篤化した時の最後の選択肢として投薬されるのではないでしょうか。投薬の選択は主治医に委ねられますから、「レムデシビル」が承認されたからといって、それを投与しなければいけないわけではありません。ただし選択肢が多ければ、主治医の選択肢も増えることになります。ここは選択できる薬剤を増やすという意味合いが濃い承認、と解釈するのが妥当でしょう。

 

では最近になって有効な治療報告が次々と上がってきている、抗インフルエンザ薬「アビガン」の承認はいつになるのか……早ければ、この夏にも承認は可能ではないか、と考えています。

「アビガン」でニュースを検索すると、現在は承認にこそ至らないものの、厚労省の並々ならぬ自信は透けて見えてきます。それを示すかのように厚労省はアビガンの備蓄量を、これまでの3倍にまで増強することを明確にしました。(現在坑コロナウィルス投与で70万人分の備蓄を、ほぼ3倍となる200万人分の備蓄へ)既に増産体制は本格的に始まっています。「アビガン」の生産に当たってもっとも大きな障壁となるのは、実は原材料の調達。今までは原材料のほとんどを、中国に依存してきたようです。

 

それを国内の各化学企業がサポート。化学工業のカネカ(東京都港区赤坂、大阪市北区中之島)は原薬生産を近く開始。同じく総合化学品会社であるデンカ(東京都中央区日本橋室町)も、現在休止中であるという新潟県の工場設備を利用し、原料となる「マロン酸ジエチル」の生産を開始するそうです。宇部興産山口県宇部市)は、宇部ケミカル工場で、7月から中間体を生産。医薬品の開発支援を手掛けるシミックホールディングス(東京都港区芝浦)では、傘下となるCMOが運営する静岡工場(静岡県島田市)で、アビガンそのものの生産を受託するそうです。

 

現在では臨床研究の対象薬である「アビガン」。「投与を可能にするために」アビガンの治験に参加する指定医療機関も30施設追加されることになりました。

福岡県医師会からは県から国の中央倫理委員会を通して、「福岡県方式」での投与が可能になるように申請もされています…(承認が得られれば、各病院の倫理審査委員会を通すことなく、主治医の判断で投与が可能になるそうです)。

 

最近では「アビガン」にとどまらず、国による日本の医療産業を保護する動きも始まっています。政府は外資による、医薬品などの先端医療分野への出資規制を厳しくする方針を固めました。コロナウィルス感染拡大に伴い、日本企業による先端医療技術には海外からの関心が集まっており、中国企業などによる重要企業の買収などに危機感を持っているようです。これも厚労省の「アビガン」に対する自信の表れと言っていいのではないでしょうか。

 

ただ「アビガン」投与を通常の処方箋による投薬が可能になるように、医療現場からの要請は次々に上がっているようです。まずは生産体制を整えることが先決にはなりますが、ある程度の供給体制が整った暁には、医療現場の要請に応じて供給が可能になるように、法整備も急いでいただきたいですね。

 

 

明日夕方から、次の5日間のフライトが始まります。