yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 9/14

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

今日は休日を返上して、ペンシルベニア州のとある小さな都市を往復。今日は従業員駐車場からターミナルまでの送迎シャトルには、小さなバスに乗って行きました。

そして小さなリージョナルジェット機がたくさん止まっているデトロイト空港のB,Cターミナルへはトンネルを抜けます。いろんな光のショーを楽しめるトンネル、AターミナルとB,Cターミナル間に2本ある誘導路の下をくぐり抜け、

Bターミナルへと上がります。Aターミナルとあまり景色は変わりませんが、こちらにはAターミナルを走る赤色の電車はありません……

そこからやってきたのは、50人乗りのCRJ200型機を担当していた頃によくやってきていたペンシルベニア州スクラントン。

アパラチア山脈の麓にある田舎町。阪神ファンの方なら元阪神の井川選手が、この地で長らくマイナー暮らしを続けていたのをよく覚えていらっしゃると思います。

ニューヨーク・ヤンキースの傘下の3A。スクラントン・ウィルクスベリ・レイルライダースの本拠地。ここを本拠にして井川投手は数年のマイナー生活を過ごしていました。

そしてこのスクラントン行き往復便も、昨日から施行になった新しいナビゲーションシステムにて運航。まだ違和感は拭えませんでしたが、何となく板については来たのかな〜〜…………

下にある写真はVORと呼ばれる航法援助装置。ここから発される信号を飛行機が受け取るとこの信号からどの方角に飛行機がいるのかを把握できます。今でもバリバリ現役の地上施設。長距離のナビゲーションではまだまだ主力として活躍している、とても精度が高い電波を発することができるスグレモノ。

このVORを使って、オーランドの東にあるメルボルンという都市からマイアミへと向けてセスナで飛ぶとしましょう。

下の地図の赤い印がメルボルン、ここを飛び立ち、メルボルンVORから165度の方向、ほぼ南に向けて飛び、まずは黄色の印、ベロビーチを目指します。そしてベロビーチ上空を通過した後は、ベロビーチにあるVORから164度の方向を目指すと、マイアミへと向かうことができます。これが基本的なVORを使った航法。

主要空港からの出発経路、到着経路でも似たような航法が使われていました。下にある航法マップはデトロイト空港への到着経路の一つ。赤で示したのが航法援助装置VORが設置されている場所で、そこから描かれる直線を辿ることによって、従来はデトロイト空港へと向かっていました。実際にインディアナポリスなど南西からデトロイトへと入るときには、ほぼ例外なくこの到着経路が使われていました。

ただこの航法ですと、飛行機はこのVORからの伸びる直線に頼るしかありません。高い高度を保って大陸間を縦断をしているような状況においてはあまり問題になることはないのですが、いざ空港周辺の領域に入った時、細かい飛行経路をこの航法だと描くことができず、滑走路の出入りには航空管制官によるレーダー誘導に頼らなければならなかったため、管制官の負担を軽減できないという問題があったのです。

それで主要空港周辺での出発経路、到着経路で頻繁に利用されるようになってきたのが、GPS。これだとランダムに通過地点を設定することができ、飛行機にGPSが搭載されていれば細かい経路を辿ることができるようになったのです。

上の地図に取って置き換えられたのが、下にある新しい到着経路。南西からより直線的にデトロイト空港へと近づくことになり、各通過地点の目標高度も細かく規定されています。

この航法によるメリットは実はパイロットの視点ではあまり感じることはありません。むしろ、各通過地点の高度や速度などを常に監視しておく必要があるので、パイロット的にはむしろ負担は若干増えることになります。しかし航空管制側の視点に立つと、空域をかなり効率的に使うことができるというメリットがあるのです。

上の図で見てみると、1番左がVORなどを使った従来の航法による必要空域。誤差を考慮しておく必要があり、細かい出発経路、到着経路を描くことができないが故に、大きめの空域を確保しておく必要があります。

対して新しい航法が施行されると、真ん中の図のような空域配分になります。GPSによって飛行機も正確な位置通過をしますので、確保が必要になる空域が狭くて済み、新たな経路を描いてさらに多くの飛行機を空域へと入れることができるのです。

実際にダラス・フォートワース空港における出発便を従来の航法、現在の新しい航法によるもので比較すると、こんなに違いがあるのだそうです。

これによる最大のメリット、それはずばり空域の効率化。より多くの出発便、到着便を同じ空域に安全に引き込むことができますから、航空管制が扱える便数を劇的に増やすことができます。引いてはお客様の立場からしても、遅延が起こる確率が劇的に低くなり、少々の悪天候でも簡単には遅延が起こりにくくなるというメリットを享受することに繋がります。そういうメリットがある以上、少々パイロットの負担が増えても、頑張って慣れていかなあかんのやね……………

今日はちょっとしたお小遣いを稼いで、お昼過ぎにデトロイトに戻ってきました。

さぁ明日からゆっくりと………………………………………1日だけ……………………………………お休みです………………………………………

 

裕坊