yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 6/7

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

明日から怒涛の6日連続のフライト、1日しかないお休みを利用して頑張ります。裕坊のルーティン、お休みの日の芝刈り。芝が育つのに絶好のこの時期、最低でも1週間に一度は刈らないと、花が咲き出して取り返しがつかないことに………先週はあまりに伸びすぎてて、芝刈り機が完全に負けてました………

庭がスッキリとなったところで、今日は愛妻ちゃんがお世話になっていた医療費の請求を小切手で送付します。日本でもすっかり見ることが多くなったアメリカ式の郵便受け。こんな風に旗を立てておくと、郵便屋さんが配達をするときにこちらの郵便を拾ってくれます。

中を開けてみると、既に今日は配達があったようで、いくつかの封筒が入っていて、そのうちの一つは先日我が息子くんが便秘でお世話になった時の救急病院からの医療費の請求だったのですが…その請求金額を見てア然……………………………ほぼ2,000ドル…………………日本円に換算すると20万円ってこと?…………………

アメリカの医療費が異常に高いというのは日本でもよく知られた話。収入の少ない人になると保険に加入すらできず、医療も受けることができないという有様。救急車を利用しただけで数百ドルの請求書が送られてくるお国柄。癌治療などを受けた日には全財産を取られるほどの請求書が送られてきます。医療費が原因で自己破産するのはアメリカではよくある話。日本のように気軽にお医者さんにかかることはできません。今回の請求はなんとか貯金を切り崩しさえすれば払えなくはない金額……………でもさすがにそれ以上ともなると……………………………

アメリカでは前大統領のオバマさんがデンマークの医療制度を材料の一つとして、国民皆保険を導入しようと試みました。がしかし共和党の大反対に会い、徹底的に骨抜きにされたオバマケアと呼ばれた医療保険制度改革は、全く中身のないものになってしまいました。民間医療保険の存在感があまりにも大きすぎるアメリカ。オバマさんが目指したデンマークを初めとする北欧のような医療福祉制度の実現は、ここアメリカでは遠い夢物語かも知れません。

今から10年ほど前、日本で産声を上げた息子くんを連れてきたのは、息子くんが1歳半のとき。長時間のフライトで悲鳴をあげた耳には中耳炎が発生していました。フロリダでまだ飛行教官をやっていた当時の裕坊のかかりつけのお医者さんに診てもらうと、救急病院へ連れて行くよう言われます。

こちらではEmergency Roomの頭文字を取ってERと呼ばれる救急病院。アメリカには通常の医療保険に入ることができない低所得者向けのメディケイドという数少ない中の一つの公的医療保険があります。そのメディケイドが適用される救急医療病院に我が息子くんを連れて行くと、映画の中でしか見たことがなかったような光景が繰り広げられていました。

患者の数に対して医療従事者の絶対数が少なく、皆一様に長時間待たされます。写真のような最新の設備ではなく、フロリダ州オーランドのダウンタウンの中にある病院は施設も古く、中の照明も暗い映画のワンシーンそのもの。痛みに苦しみ、呻く人で待合室は溢れ返り、座る場所を見つけるのですら一苦労………………………一体ここはどこなんや?野戦病院なのか?…………………………

裕坊も耳が痛そうにしている息子くんを抱えたまま3時間ほど待たされました。いざ診療が始まると、医師が入れ替わり立ち替わり、1人の医師が診てはまた1時間ほど待たされることになり、やっとのことで治療を終えて、お昼下がりに訪れた救急病院をあとにするころには外は完全に真っ暗になっていました。

まだ一家を支えることすら出来ない、雀の涙ほどのお給料だった裕坊。それでも何度も支払い催促の手紙が受け取ること数年、ミシガン州に引っ越してからですら請求書が裕坊一家を追いかけてきました。低所得者であることを証明して、最終的に医療費は免除になりましたが、その手続きですら3年を要したのを昨日のことのように思い出します。

裕坊が訪れてみたい国の一つに幸福の国、ブータンがあります。最近ではそのブータンでも近代化が進み、残念ながら物価高や若者の失業、地域格差の問題などが山積しているようですが、それでも国民の幸福度ランキングでは北欧の国に肩を並べて上位に食い込んでくるヒマラヤ山脈の東端に位置する高山国家。ここもデンマーク同様、医療費は基本的には無料。現国王であるジグミ・ケサル・ワンチュク氏は2008年の国王即位のときにこう述べたそうです。

「私(国王)は世界の支配者のようにではなく、国民の兄弟のように、また親のように、また息子のようになりたいのである」

残念ながら実業家出身であるトランプさんには響かない言葉かも知れません…………最貧国と呼ばれるブータンですら医療費無料を実現しているのですから、アメリカで実現できないはずはないのですが…………………………

 

裕坊