yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 3/18

アメリカ国内で、小型旅客機に乗っている、裕坊といいます。こんにちは。

今週の月曜日から、本社があるミネアポリスの研修施設での訓練を終えて、今朝木曜日の午前中に帰宅しました。

 

その前の週に担当していたのは、4日間のフライト。ミネアポリスを拠点とするフライトもいくつか入り、

 

ポカポカ陽気で、最高気温は16度ほどまで上がった日もありました。

先週はミネアポリス空港に所属する副操縦士くんとも一緒に飛んだのですが……

 

そのミネソタ州出身のチャールズくんに言わせると、

 

「3月には毎年必ず1回大雪がやってくるから、覚悟しといた方がええで……」

ホンマかぁ〜〜〜………………………

 

 

 

 

ホンマや………………………

月曜日は夜間に訓練が予定されていたので、夕方にミネアポリス入り…

 

その後も雪は降り続けていて、

蛇足ではありますが、初日の訓練は、午後8時開始…

 

初日の訓練が終わってホテルの送迎シャトルにお迎えに来てもらう頃には、

けっこうな積雪……ちなみに、時計は既に3時を指しておりました……

 

このスケジュールは、アメリカならでは。家族と少しでも長い時間を過ごしていたいアメリカ人は、訓練日の前日入り、訓練後の宿泊、というのを少しでも避けたがるのです……

裕坊もそのアメリカに住んでおりますので、文句は言えません……

 

 

 

ただ今回の3日間の訓練は、中身が濃く、実り多い内容でした。

 

 

 

一昨年までは、シミュレーターによる飛行訓練は、実質2日間。

 

その内容は我が社の場合は、ミネアポリス本社の訓練課代表者と、連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)のミネアポリス支局とで精査をした上で決められるのですが、 航空局が推し進める訓練項目が基本の土台になり、それに加えて、会社全体の訓練記録などを基にパイロット全体の傾向として浮かび上がる弱点項目を強化したり、

業界全体の傾向として、技量向上が必要となる項目などが付け加えられます。

 

ただ航空局としては、過去の事故を教訓とすることによって、同じ過ちをくり返さない、ということをかなり重視するようになってきました。

そのうちの1つが、現在のエンデバー航空の一部にもなっている元コルガン航空(当時の本社、バージニア州マナサス)の旅客機が、ニューヨーク州バッファロー空港への着陸進入中に起きた事故。

 

これは事故機と同型機の、ボンバルディエ・ダッシュ8−400型機。

 

事故が起こったのは、今から12年前の2009年2月。当時は雪が降る気象条件で、

雲の中を通過していた機体の主翼では、徐々に氷結が始まっていました。

 

飛行機が空中で浮いているために必要なのが揚力。その揚力を得るためには、流れを乱されないスムーズな空気の流れが主翼上であるのが絶対条件。

氷結とともに空気の流れが乱され始め、それとともに速度も徐々に低下し始めていました。揚力を得られなくなり、機体の重量を支えられなくなる状態のことを指して言われるのが、失速。

 

失速状態に入ると、機体は当然のことながら高度を下げてしまいます。滑走路直前で失速状態に入るのは、墜落の危険を伴うので、

各機体にはそれを警告する失速警報装置が付いているのですが、それが作動した時は失速状態から回復するために、操縦桿をやや前方へと押して機首を少し押し下げ、主翼上の空気の流れを戻さないといけません……

 

ところが操縦桿を握っていた当該便の機長、それとは反対に目一杯操縦桿を引いてしまったのです。機首は大幅に跳ね上がって、結果的に飛行機は完全失速状態へと入り、姿勢がコントロールできなくなって……

 

乗客乗員49名に加えて、地上にいた方1人をさらに巻き込み、50名の方が亡くなるという悼ましい事故となりました。

着陸直前で失速すると、高度が下がることが多く、人間の条件反射として操縦桿を引きたくなるので、それに逆らって失速状態から主翼を回復させる必要があります。これは連邦航空局の最近における最大強調項目として、現在では全米の各航空会社で訓練項目へ組み込まれるようになっています。

 

理論では理解していても、失速状態に入っているものとすぐには理解できず、本来こなさなければいけないのと逆の手順を踏んでしまいがちな、失速からの回復。いざ咄嗟の場面でも対処が可能になるように、最近では様々な局面での失速を想定して、これだけで初日の訓練の半分ほどの時間をかけるようになっています。

 

 

こちらはその訓練で使用した、シミュレーター。我が社の訓練センターはミネアポリス空港からすぐ南にあり、こちらでは5基のシミュレーターが訓練用に使用されています。

裕坊たちが終わったのは、夜中の2時前だったのですが、

 

次の訓練生たちも待っていて、ブリーフィングが終わる頃には既に研修を始めていました…

アメリカの航空業界とは、早いときには4時台の旅客便が出発し、遅い時には12時を過ぎる到着便を運航。

 

さらには大陸横断のレッドアイなどもありますので、

国内線中心の航空会社といえども、ほぼ24時間動き続けています。シミュレーターの教官さんの仕事って、ある意味過酷かも……

 

 

 

 

 

研修内容の続きを、次回投稿いたしますので、お楽しみに。