yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 9/7

アメリカの地域航空会社で、小型旅客機に乗っている、裕坊といいます。こんにちは。

先週土曜日に出発して、4日間のフライトのうちの3日目を終わりました。

 

今回の4日間のフライトは、割に濃密なスケジュールを過ごしています。初日の出勤時刻こそ遅かったものの、初日と2日目の宿泊滞在はけっこう短め……ホテルに着いて部屋に着くなり、歯磨きしてシャワーを浴びて時計を見ると、翌朝の送迎シャトルの時間まで9時間だったり……

こんな時に見る夢は、遅刻しかかって慌てふためいている夢と思っていただいて、間違いありません……

 

過去には、送迎シャトルの予約の時間ギリギリまで起き上がれず、一緒に飛んでいた副操縦士からの電話で、飛び上がって起きたことも何回かありました……

今回の4日間では、そのようなことは一切ございません……誓って申し上げます……

 

フライトは前半は、デトロイトを基点に行ったり来たり。最初の往復ではペンシルベニア州の鉄鋼の町、ピッツバーグデトロイトから往復。往路便では何事もなく終了し、折り返しの便で……

着陸やり直し……緑色の軌跡が辿った経路。南東からいつも通りデトロイトへと近づき、滑走路へと着陸する寸前になって、再び上昇……追い風が急に強くなって、到着便がほぼ全便、着陸をやり直していました。

 

これは飛行機が空中に浮くための航空力学に関係しています。飛行機の主翼は、よく目を凝らしてみると、なだらかな曲線を描いています。その主翼上面を空気の流れが通過すると、空気の流れは早くなり、相対的に気圧が下がり、主翼が『吊り上げられ』て、飛行機が持ち上げられるというのが、主翼が持ち上がる仕組み。

 

最近では、ニュートンの力学の法則の第3法則によっても説明がなされるようになりました。

主翼上面、下面を通過した空気の流れは、主翼を通り過ぎると若干下向きに変わり、その反作用として主翼が持ち上がるというもの。着陸直前、あるいは離陸直後だと、方向が変わった空気の流れが地面によって阻害されるために、機体が浮きやすくなったり着地寸前で飛行機がなかなか着地しなかったりなど……地表面近くでは、これも大きく影響します。

 

風が非常に強く、離陸に必要な風の速度が主翼上面を通過すると、理論上は静止していても飛行機は浮きます。逆にどんなに速い速度で地上を進んでいようとも、飛行機の後ろから同じ速度で風がやってきていたとすると、主翼上面を通過する風の速度はゼロ……飛行機を浮かせるのに必要な揚力が生まれないので、その状態だと飛行機はいつまで経っても離陸することができなくなることに……

空中に浮いた状態でこれが起こると、主翼上面に空気を受けられなくなって、飛行機は失速……過去には風向、風速の急激な変化で揚力を失った旅客機が、墜落する事故も起きています。

 

1985年にダラス・フォートワース空港で起こった、デルタ航空191便が、その一例。この時はマイクロバーストと呼ばれる、積乱雲を伴った雨雲が大きな下降気流を発生させていて、向かい風が急激に追い風に変化したのが原因でした。

ですので旅客機には離陸時にも着陸時にも、追い風の風速に上限というのがあり、ほとんどの旅客機の場合は10ノット。

 

先日の着陸時の追い風は13ノット……

着陸態勢に入っていた他の機体も、ほぼ例外なく着陸のやり直しを余儀なくされていました。そんなわけで、当日の便は、ゲート到着が予定より5分遅れ……

 

しかもデトロイトで到着していたのは、保安検査場からだとトンネルをくぐって来ないといけない、Cコンコース。

かつては50人乗りのCRJ−200型機と、プロペラ機であるサーブ340型機のみが使用できていた、ここCコンコース。

 

主翼の幅が50名仕様よりも若干広い76名仕様の旅客機が停まれるように、無理やり改造してできた到着ゲートですので、

ボーディングブリッジが、コックピットの目の前を走っていたりします……

 

次の担当便出発まで、50分……出発はAコンコースから……

トンネルをくぐり、先を急いで……

 

定刻に何とか間に合いました……

 

ちなみにCRJシリーズの旅客機の場合、ボーディングブリッジと搭乗口が、形状的にちょっと合わないところがありますので、

 

そんな出発ゲートでは、 一旦ボーディングブリッジを近づけて、

 

簡易の橋渡しを据え付けます。

 

コロが橋渡しに付いているので、それを押し込んで、

据え付け終了。

 

電源も完全に落ちた状態なので、全部最初から……

それでも慣れると、20分もあれば出発の準備が整ってしまいます……

 

最近では、除菌、消毒作業が終わったことを示すのに、こんな用紙で確認するようになりました。

各便の出発前に、例外なく消毒作業をやってくれています。

 

搭乗が終わって、ボーディングブリッジを再び引く、ゲートの係員さん。

ちなみにアトランタ空港では、Cコンコース、Dコンコースにおいては、元々CRJシリーズのリージョナルジェット機にボーディングブリッジを据え付けることを前提にボーディングブリッジも製作されているので、簡易の橋渡しは必要なくなりました。

 

3日目は、お昼過ぎにミシシッピ州の南部にあるガルフポートまでやってきて、任務終了。

かつてノースウエスト・エアリンクとして飛んでいた当時は、メンフィスからかなりの頻度で来ておりました。でもあまりにも前のことすぎて、前回いつ来たのか、全く記憶にございません……

 

ようこそ、ガルフポートなんて表示、あったっけなぁ〜〜??

思い出せない……

 

搭乗手続きカウンター、こんなにきれいだったかなぁ〜〜???

思い出せない……

 

ヤシの木なんてあったっけなぁ〜〜???

思い出せない……

 

こんなに空港周り、きれいだったっけなぁ〜〜???

思い出せない……

 

海が近いガルフポート。

ガルフとは英語で内海を指し、ポートは港。メキシコ湾沿いにある港の名前が、そのまま町の名前になってガルフポート。

 

規模は小さいですが、リゾート風のホテルも並んでいます。

 

混雑した海を避けたい方好みの海岸もありますが、

実際には2005年8月に、メキシコ湾沿いの街を襲ったハリケーンカトリーナでかなりの被害を負った町の1つでもあり、未だに再建が続いています。

 

海岸沿いには、カジノ付きのリゾートホテルもあったりするので、

人混みを避けたい方には、オススメかも知れません。

 

ただ裕坊には、今日は海の景色より、こっちの方がありがたい……

電子レンジ付きのお部屋に泊まると、カップラーメンが食べられる……

 

今日の裕坊には、花より団子でございました……

やっとお腹も落ち着いた……

 

明日も今朝と同じく4時起きで、最終日の4日目になります。既に目覚ましをセットしてあります。

 

準備は万端です。