yuichibow’s blog

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 8/24

米国、小型機専門旅客航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。

先週の金曜日から始まっていた4日間のフライトを終えて、月曜日夕方に帰宅しました。裕坊は自動車工業の町、デトロイトにある空港に所属しているのですが、今回の4日間でデトロイトを基点とするフライトが入ったのは、初日の最初の便と最終日の最後の便だけ……

 

昨日3日目までは、親会社のデルタ航空の本社があるアトランタを基点とするフライトが中心でした。

コックピットから見る国内線ターミナルビルに、赤い帯が入っているのが特徴の、アトランタ・ハーツフィールド・ジャクソン空港。

 

今回はコロンビア出身の女性が副操縦士

元テニス選手だそうです。

 

この季節といえば、南部は積乱雲を避けながらのフライト。目に見える単体の積乱雲であれば十分目視できるので、避けるのは比較的容易。ただ針路を変えるためには、航空管制の許可が必要になります。積乱雲が多く上がると、各便とも管制の許可を取ろうとして、無線が混雑して焦ってしまうことも……

これが大陸を縦断するような線状の大型積乱雲ともなると、大きく迂回を強いられることもあります。

 

ハリケーンが近づくと、航空便は多くが欠航……アメリカには、8月24日(月)現在、大型の熱帯低気圧が2つ立て続けに近づいてきているらしく(マルコとローラの2つ)、

南部のニューオーリンズ、ヒューストン付近では、警戒を呼びかけたり、場所によっては緊急事態宣言が既に発令されたところもあるそうです……被害が最小限にとどまることを、願うばかりです。

 

幸い裕坊が担当するフライトには大きな影響はなく、昨夜は夕焼けを見ながらのフライトというご褒美付きになりました。

アトランタからリージョナルジェット機が就航するのは、どこも人口規模が10万人、20万人前後、多いところで30万人といった地方都市ばかり。

 

初日はミシシッピ州のジャクソンで宿泊滞在。

 

厳かな建物が立ち並ぶ、南部を代表する都市の1つ。

 

街の景観もとてもきれいです。

 

 

2日目はPGAツアーのマスターズ・トーナメントで知られるジョージア州オーガスタを往復、

 

往年のゴルフプレーヤーが、一部空港内で展示されています。

 

ラクターの生産量が多いことでも有名な、ジョージア州オーガスタ。

 

 

ここ20年ほどの間に、人口が20万人を超える町へと急成長した、ノースカロライナ州のファイエットビルでも宿泊滞在。

 

小型旅客機しか就航がないファイエットビル空港ですが、コロナ禍以前は需要が伸びてきていたのでしょう。

ターミナルの建物は、こじんまりとしているものの……

 

建物の中は、あちこちが改装中。

 

将来性を窺わせるように、次々と工事が進んでいました。

 

落ち着いた佇まいのターミナル内。

 

空港は1番高い建物の旅客ターミナルですら2階建てで、敷地面積自体も狭いので、

空港管制塔もこじんまりとしています。

 

こういった地方都市での航空旅客需要は、今後の航空業界、少なくともデルタ航空のような老舗の航空会社の行方を占う鍵を握るかも知れません。アメリカの場合、地方都市では対企業の税制優遇措置があったり、工場などの敷地面積が大きく取れる利便性から、名だたる企業の大規模工場が地方にあることも多いです。そのため地方空港ではビジネス利用客の割合が高く、概ね7割がビジネス利用。こういった中小規模の都市での需要が増すのか、もしくは減っていくのか………

 

例を1つ取り上げてみると……ミシガン州西部のカラマズー。この周辺を代表する企業といえば、シリアルで有名なケロッグ社。

本社は、カラマズー市のお隣、バトルクリークにあります。 バトルクリークにはケロッグ社の大きな工場も…

 

ニューヨーク証券取引所にも上場していて、8月24日(月)の終値は69ドル58セント。

これだけの規模の会社ですので、重役クラスは出張などの際には、自社用ビジネスジェットでの移動も可能でしょうが、外部からの本社バトルクリークでの取引自体も多いはず………

 

ところが先日アメリカン航空は、ケロッグ社のお膝元であるカラマズー空港への就航を、1カ月間に渡って凍結することを発表。10月7日(水)から11月3日(火)までの当面の暫定的な措置だそうです。

1カ月間における15都市への就航を一時凍結することを決断したようですが、カラマズー空港もその1つに入ることになってしまいました……ビジネス利用が相当鈍っていることを窺わせる発表だと解釈して、ほぼ間違いないでしょう…

 

7月に入って需要が回復基調になっていたアメリカの航空業界でしたが、感染再拡大とともにあっという間に尻窄みになってしまいました。各航空会社が描いていた、損益分岐点への回帰も、結局は絵に描いた餅……ズームを初めとするオンラインツールが、実はビジネス上多いに役立つことに気づいた企業。出張や対面式での会議の必要性の見直しが行われて、移動を必要とする需要も明らかに激減し、ビジネス利用はここ最近相当落ち込んでいます。地方空港での行き来を見ていると、それは顕著……アメリカの場合は、特に8月以降、頭打ちになってしまいました。

 

ちなみに7月27日(月)の全米での航空機利用者の合計は700,095名。それに比べて8月18日(火)の旅客数は586,718名。夏休みが終わりに近づく8月後半は、平常時でも若干旅客数がやや鈍る傾向こそあるものの、回復基調だった頃と比較すると16%減。9月に入ると、さらに需要が鈍るのは避けられません。 裕坊自身は今回4日間で合計12便を担当しましたが、そのうち40名を超えるお客様を運んだのは2便だけ(76名仕様の小型機に乗務していて、現在の搭乗客数の上限は45名になっています)あとは30名台が2度あっただけで、他の便では20名台か10名台といった乗客数でした。

 

もし今後出張等の需要の回復が見込めず、ビジネス利用の回帰に期待できないとなると、航空会社だけでなく運送業全体、あるいは旅行業界で合併などの大きな動きが出てくる可能性が否定できません。一時的には政府からの助成金などで航空会社が生き延びることは可能でしょうが、それも恐らく2年が限度……それまでの間に、企業が出張や移動などに必要性を感じなくなっていたとすると、航空会社の延命のために血税を注ぎ込むことに反対の動きが出る可能性すらあります。

 

航空会社単体での生き残りが厳しい情勢になるとすると、鉄道やバスなどを含めた運送業、さらにはホテルなどの宿泊施設、ともすると外食産業まで、同様の情勢に置かれるのはほぼ確実でしょう。航空会社と鉄道会社の合併、あるいは航空会社とホテル運営会社の合併、といった今までですと考えられなかった企業あるいは業界同士の合併の模索が始まる可能性が出てきます。

 

歴史上、様々な社会の転換点のきっかけとなった感染症。コロナウィルスも大きな社会の変化のきっかけになりそうな気がしてなりません。

 

 

 

次のフライトまで、数日お休みをいただくことになりました。