yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 7/11

米国でリージョナル航空機を操縦する、裕坊と申します。こんにちは。

木曜日から3日間のフライトに出かけて、今日お昼過ぎに帰宅しました。中西部では7月に入って雨が少なく、気温も上がってほぼ毎日最高気温30度を超える日が続いています。

 

昨日金曜日が2日目で、アイオワ州の州都、デモインをお昼すぎに出発。

 

典型的な中西部の景色を見ながらのドライブ。 15分ほどで空港へと到着。

 

日差しが強く、紫外線対策なしでは飛べないアメリカ……

 

1時間ほどかけて、デルタ航空の本社があるアトランタへとやってきました。

3月中旬以降フライトが激減していたこともあって、ここにやってきたの4ヶ月ぶり以上でした。 各便の乗客数一桁台が続いた5月中旬までは、BターミナルやCターミナルの一部が閉鎖されていたアトランタ・ハーツフィールド・ジャクソン国際空港。

 

今ではまずまず客足も戻ってきていて、それほど閑散とした印象はありませんでした。

 

まだ一部の売店では閉まっているところもありますが、

 

昼食を買うには、困らないです。

各コンコースの中央まで歩いていくと、フードコートのお店はほぼ全店、お店を開けておりました。

 

ただいつもに比べると、置いてある食材は平常時の半分ほど。サラダもシーザーサラダ1種類だけで、他に選択肢はナシ……

ただ昨日のフライトのハイライトといえば………

 

やってきた夏のお天道様の季節……7月に入ると気温が上がり、入道雲もしっかりと上がってきます……アトランタからペンシルベニア州ハリスバーグまでの道のりでは、飛行計画の段階でいつもよりかなり東回りの経路……

実は裕坊は出発前、積乱雲の西側、この飛行経路とは反対側を考えたのですが、飛行経路を本社で組んでくれた担当者、さすがベテランの運航課係員だけあって、先見の明がありました。もし西回りだと超大回りになって、最悪カナダの空域まで入るところでした………

 

雷を伴う積乱雲は大気が不安定な時に発生。積乱雲の中では1番発達している状態の時、激しく上昇気流と下降気流がぶつかり合っているので、中に入ってしまうと激しい揺れに見舞われます……レーダー画面に大きく映り出すような積乱雲は、旅客機は避けるのが鉄則…

ということで、昨日は大きく迂回してのフライトになりました。

 

ちなみに積乱雲の1番上にある雲が風に流されているのが見えますが、これは既に積乱雲の1番最高点が成層圏まで到達していることを示します。

地表面の大気を構成する対流圏では、高く行けば行くほど空気の温度が下がるのですが、一旦成層圏まで到達すると、逆にそこでは空気の温度は高度の上昇とともに上昇。そのため水蒸気をたっぷりと含んだ積乱雲の水滴の温度は、成層圏まで到達すると、周りの空気に比べて低くなってしまいます。水滴の温度が低いということは、体積当たりの密度が周りの空気に比べて高く、重さも周りの空気に比べて重くなるので、積乱雲の上昇はそこで止まることになり、積乱雲内に含まれた水滴が上空の偏西風などの風に流されることによって、このような形が出来上がります。

 

積乱雲の季節によく見かける、夏の風物詩の1つ。

但し積乱雲が成層圏まで到達する、ということは、それだけ上昇気流の力も強いということ。すなわち、とても強力な入道雲であるということ。編成風などによって流されている部分では、既に上昇気流と下降気流による対流はほとんど止んでいるので、この部分を通過してもそこまで大きくは揺れないのですが、積乱雲本体を避けるのは絶対……最悪機体に損傷を被ることがあるので、最低でも30キロほどの距離は保ったまま迂回するのが普通…

 

ただ本来の航路から外れて迂回するときは、針路を変える前に、まずは航空管制の許可を取らないといけません。ところが、大きな入道雲がいくつも上がっていると、迂回を試みる航空機が次々と管制官への許可をもらおうとコンタクトするので、航空管制の無線も忙しくなって、なかなか承認のリクエストすら入れられないことも……しかも積乱雲の周辺では、無線にも雑音が入りやすくなって、なかなか管制官にこちらのお願いが聞き入れてもらえないこともあるので………

これも夏の風物詩………

 

もしお願いが聞いてもらえなかった時は、そのまま積乱雲へと突入してしまうのか………最悪の場合は、自らの判断で、空中衝突防止装置に上がってくる他機の位置を把握した上で、針路を変えます。ただ幸運なことに、一度も自らの判断で針路を変えることになったことは、まだ一度もありません……

 

 

昨日はハリスバーグに到着…

 

至福の瞬間……

 

そして土曜日は、午前中の出発。

担当は1便だけ。

 

土曜日の朝の乗客は26名。昨日と同じく、アトランタ空港への到着でした。

 

Dコンコースへと到着して、あとは客席搭乗で我が家があるデトロイトまで。

途中、フードコートを通ってみると、もう人でいっぱい。ジョージア州では比較的早くから州知事の意向で、お店なども再開になっていましたので、人の動きも早かったのかも知れません。コロナウィルスの騒ぎがウソのような賑わいぶりでした。

 

客席の比較的前方の座席に座って、

 

デトロイトにはお昼過ぎには到着。

 

今週1週間のお仕事を完了しました。

従業員駐車場は、まだガラガラ……

 

来月8月のスケジュールの入札が、今日から始まったのですが、合計便数を見てみると、少なくともデトロイト発着便数では、ほぼ昨年並に戻っています。昨年1年間の平均の運航便数は、1日あたりおよそ950ほど。来月は最大で1日904便の運航を予定……ただここ最近のコロナウィルス感染再拡大を受けて、現在組んでいるスケジュールからの増便は見込んでいない、との社内報も出ました。航空業界は、連邦政府からの緊急援助金の給付のおかげで、なんとか9月末までは今の状態で持ち堪えられそうな感じですが、10月以降はまだまだ流動的です。

 

そんな中で、今日は大きなサプライズがありました。これまで頑ななまでにマスクの着用を拒否していた、トランプ大統領

以前私用で車の製造工場を訪れた際にマスクをしていたところを目撃されてはいたようですが、公職の場面で初めてマスク着用の姿を見せてくれました。アメリカの首都ワシントン近郊にある、米軍医療施設で医療関係者を労ったり、負傷している兵士などのお見舞いをするのに訪れていたそうです。

 

ただ当日は、出発前に「私はマスクに反対したことはないが、マスクにふさわしい時と場所があると考えている」と語って、医療センターでは報道陣の質問にも答えることなく、そのまま歩き去っていったのだとか………この一件が共和党支持層の意見にどんな影響を与えるのか、乞うご期待です。

 

 

裕坊、また数日のお休みをいただくことになりました。