yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 6/3

米国で、小型旅客機を扱う航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。

コロナウィルスの影響が、他の業種に比べても大きな旅客航空業界。乗務員がこなすフライトの数も減って、裕坊が勤める会社では、欠員補充要員を務めるリザーブの数の方が、通常のスケジュールを割り当てられた乗務員の数を上回っています。裕坊も今月は欠員補充要員。今のところ、まだ次のフライトの予定は入っていません…

 

裕坊が担当する機種は、入社から一貫してCRJシリーズ。2014年までは、50名仕様のCRJ−200型機に乗務。全てエコノミークラスでファーストクラスはありません。

元々はボンバルディア社製のビジネスジェット機の派生型で、胴体を少し伸ばした上で無理やり50席を据え付けているので、かなりアンダーパワー……夏場になると30,000フィートまで上昇するのがやっと……

 

冬場は、離着陸の際に使う補助翼が構造的に氷結を起こしやすいという欠点があり(700型機以降は改良されています)、

着陸の準備に入って補助翼が作動しなくなり、補助翼なしで着陸したこともありました……

 

2014年9月以降は、胴体延長型の900型機(76名仕様)に乗務しています。こちらはファーストクラスを12席用意。

こちらは旅客機として使うことを前提に、大幅な改良を加えられた機体なので、エンジン性能も飛躍的に向上。37,000フィートまで問題なく上昇するだけの性能を持っています。故障も少ない名機だと思いたい……裕坊の場合、他のジェット機の経験がないので、他機種との比較が出来ないのですが……ただ飛行記録をつけるログブック上では、200型機も900型機も同じCL−65になります。

 

100人分以下しか座席がない小さな旅客機でしかも低翼機の場合、機体の高さが十分に取れないので、主翼の下にエンジンを据え付けると高さが確保できません……そのため、エンジンを機体後方に据え付けることで、地上からの高さ確保の問題を解決することが多いです。

 

 

同様に機体後方にエンジンをつけている旅客機の代表といえば、マクドネル・ダグラス社製のMD−80、90シリーズ。

写真はデルタ航空のMD−90型機。デルタ航空では長らくこのシリーズであるMD−88型機、MD−90型機を多数保有し、国内線の主力機材として活用してきましたが、コロナウィルスの影響を受けて旅客航空需要が激減。機材の整理を進める上で、マクドネル・ダグラスシリーズの全機退役が決まり、昨日6月2日(火)がデルタ航空における両型機の、旅客便運航の最後の日となりました。

 

ダグラス・エアクラフト社時代にDC−9として開発され、その後様々な改良が加えられた胴体延長型のMD−80、90シリーズ。

日本でもかつては日本エアシステム(現在の日本航空)が、数種類の機体を保有していましたので、日本の空でも見ることが可能でした。

 

ダグラス・コマーシャル9型(DC−9)として始まったこの機体。当時は3名運航が定期旅客便運航の標準で、しかも3発エンジン旅客機が主流の時代。そんな中にあって2名体制で運航でき、しかも低燃費、低騒音。1970年代以降はボーイング727型機の製造を中止に追い込むほどの人気を博し、かつてのノースウエスト航空では、米国内の国内線主力機材として、長年大活躍しました。

裕坊が現在の会社に入社した当時の、提携契約先はノースウエスト航空(2010年1月31日に、デルタ航空経営統合)。地方都市へのデッドヘッド(客席に搭乗しての移動のことを指す、業界用語です)の際には、必ずと言っていいほど、お世話になっておりました。

 

日本でも日本エアシステムの前身である東亜国内航空が積極的に導入を進めて、地方路線の中核を担いました。

日本エアシステムは、2004年に日本航空へと経営統合。そこでも塗装が日本航空仕様になってMD−90型機は、16機が国内線用の機材として活躍。

 

東亜国内航空時代から、合計ほぼ40年に渡る現役生活を続けたDC−9シリーズの、日本での最後のフライトになったのは、2013年3月30日。広島発羽田行き、JL1614便として運航されたのが最後の活躍の舞台でした。

日本航空でも16機が受け継がれていたMD−90型機。退役後も、海外からのMD−90型機の購入を進めていたデルタ航空によって16機全機が購入され、それまでデルタ航空保有していた80機ほどのマクドネル・ダグラス社製の機体に仲間入り。その後も7年ほどアメリカの空を飛び続けました。2019年時点におけるデルタ航空保有機のうち、MD−88型機は65機でMD−90型機が32機。実にデルタ航空保有していたMD−90型機の半数が、日本の空を飛んでいた機体だったことになります。

 

最後の活躍の場であったアメリカで、順調な飛行を続けていたマクドネル・ダグラス90型シリーズ。コロナウィルスの影響も、3月中旬まではほとんど受けていなかったアメリカでしたが……

急激な感染拡大を受けて需要が激減。各社とも保有現金の枯渇を防ぐために、様々な事業整理を迫られることになり、機齢が古く燃費効率で劣る機体を整理対象に……デルタ航空では、マクドネル・ダグラスシリーズを半ば強制的に退役させることになりました……コロナウィルスの影響さえなければまだまだ一線で活躍できる機体だっただけに、ちょっと悲運でした……

 

6月2日(火)はその同シリーズ機の最終運航日。MD−88型機の最終便はDL88便。

機番はN900DE。

 

ワシントン・ダレス空港を午前8時14分に出発して、アトランタに午前10時4分に到着。

この写真は昨日の最終便となったデルタ88便、アトランタ空港の到着ゲートA4への到着時に撮影された、実際の機体の画像だそうです。

 

そしてMD−90型機としての最終便は、DL90便。ヒューストン国際空港を、午前5時54分に出発。

 

アトランタ空港には午前8時46分に到着して、その役目を終えることになりました。

その後はアラバマ州アリゾナ州の、航空機保存用の敷地がある空港に保管されることになるということです。

 

サバイバルモードに突入している、各旅客航空会社。デルタ航空では機種の整理が進める上で、同じくDC−9シリーズの派生型のボーイング717型機も、若干数を保存状態に置くことになりました。

ただこちらは完全退役を目的としたものではなく、あくまでもコロナウィルス渦中での現金枯渇回避を目的としていて、恐らく景気回復と共に現場へと復帰するものと思われます。

 

見た目にはMD−88型機、MD−90型機とほとんど変わらないボーイング717型機。

マクドネル・ダグラス社によってMD−95型機として元々は開発されていた機体。マクドネル・ダグラス社のボーイング社への経営統合後も、開発、生産が引き継がれた数少ない機体のうちの1つ。その中でボーイングの社名が入った唯一の機体となりました。

 

見た目はほとんどMD−90型機などと同じながらも、完全グラスコックピットを採用しています。

ハワイアン航空でも、各諸島間を結ぶ機材として、現役バリバリの活躍を続けていますし、デルタ航空での本格的な現場再投入は、景気の動向次第ということになるでしょう。コロナウィルスが終息し、景気が回復基調になれば、またたくさんのマクドネル・ダグラス社の魂が受け継がれた機体が見られるものと、期待しています。時間はまだかかるかも知れませんが……

 

 

明日より6日連続での、電話待ちのリザーブの日が始まります。