yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 5/14

アメリカの小型機専門航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。

コロナウィルス渦で旅客需要激減の航空業界。

 

疫病蔓延への最大限の努力もしないといけませんので、現在運航されてされている便は、ほぼ例外なく出発前に入念な消毒作業が行われています。

そのため各旅客便の折り返しまでの出発時間も、長く取られるようになりました。

 

裕坊が乗務しているCRJシリーズですと、従来の最短折り返し時間が、地方都市で35分だったのが現在では55分に、基幹空港での折り返しは40分だったのが1時間。デルタ航空本体の機体になると、1番小さい機体でも座席数が109になるので、最短折り返しは1時間20分ほどになっているものと思います。

 

座席販売数も、現在はかなり限定されています……航空会社の本音としては、少しでも収益を回復させるために満席の乗客をお迎えしたいところでしょうが……

こちらの写真は、先日感染爆発で医療体制が崩壊していたニューヨークのとある病院で医療活動に参加されていたカリフォルニア州の医師の方が、感染が落ち着いてきたため医療活動を終え、自宅があるサンディエゴに帰る際に搭乗していたユナイテッド航空のフライトで撮影したというもの……

 

大陸横断のフライトで、6時間を要するフライトだったらしいです………怖かったやろな………

 

便数をかなり減らして対応していますので、稀にこういったことも起こり得ますが、デルタ航空では販売数をかなり限定していて、少なくとも3人がけの列では、真ん中に位置する座席を販売しないなどの工夫は凝らしています。ですから、こういったことは起こらないものと願いたい……

 

ただ全体の需要自体がまだ回復している訳ではなく、昨年並みの旅客需要が戻るまでにはおそらく数年はかかるものと、各航空会社は見込んでいるものと思います。

現在は手持ち現金を少しでも長く保持し、コロナ渦を乗り切った後の戦略についても検討中。そのうちの核の1つになるのが、使用機材の選定作業。燃費効率の点から、なるべく新しい機材を残して燃費を抑え、保有する機体の種類を絞り込んで、整備点検の費用を抑えるというのが各社の目論見…

 

デルタ航空では、機齢が既に30年を超える機材から退役させる作業を進めています。

機体後方にエンジンが据えられたマクドネル・ダグラス社が開発したMD−88、MD−90機は、既に全機引退が決まっていたのですが……

 

今日改めて、長らくデルタ航空の洋上飛行の旗艦役を担ってきたボーイング777型機の全機退役も発表されました。

1999年に初号機が納入になり、2008年には航続距離が伸びたLR型(Long−Range)が導入されて、アトランタヨハネスブルグ(南アフリカ)線、ロサンゼルスーシドニー(オーストラリア)線などの超長距離路線を結ぶなど、デルタ航空の国際線の中核を担ってきました。ノースウエスト航空との合併前は、唯一の日本路線(アトランター成田)を担当するなど、華々しい活躍を続けてきた機体だったのですが……

 

初号機が既に機齢30年を超えていたこと、

 

さらに現在の国際線機材は、エアバス330型機、エアバス350型機など、エアバス中心へと国際線機材がシフトしていた、という現状がありました。

写真は最新鋭のエアバス350型機。 5月14日現在休止にはなっているものの、デトロイトから羽田を結ぶ路線にも投入されている機体です。ボーイング777型機に比べて燃費効率において21%優れていることから、国際線用大型機材をエアバス社の機体に集約することになりました。

 

今までの常識ですと一般的にはボーイングの機体の方が、若干航続距離が長いと言われていて、ボーイング777型機ですとおよそ15,000キロを給油なしで飛べることが1つの売りだったのですが……

エアバス350型機では燃費効率が著しく向上して、航続距離でも全く見劣りはしなくなりました。デルタ航空が所有するA350−900型の航続距離も、ボーイング777型機に匹敵する15,000キロ。

 

コロナ渦に呼応するために機材選定作業を行なう上で、保有する機体の種類も絞り込まなければならず、苦肉の策としての退役となったようです。

納入された18機はいずれも現役として飛んでいましたが、今年度中に全機退役することになりました。既に何機かは保管体制に入っておりますので、今後見られる機会はそう多くないかも知れないのが、ちょっと残念です…

 

余談になりますが、今後デルタ航空における国際線の主力機材となるエアバス350型機には、もう1つの大きな特徴があり、機体の胴体に炭素繊維素材が使われていて、胴体の伸縮性に優れるので機内の気圧と湿度を高く保つことができるようになり、巡航中の機内の快適性が飛躍的に向上しています。

そのおかげで、長距離飛行でも疲れにくくなりました。

 

実はその機体胴体の炭素繊維素材の53%にあたる部分の製造を手掛けているのが、繊維事業大手の帝人(本社:大阪市北区中之島)。

コロナウィルス治療薬候補の1つに上がっている、喘息治療薬「オルべスコ(成分名:シクレソニド)」を生産する帝人ファーマ(本社:東京都千代田区霞ヶ関)を傘下に置いています。現在の炭素繊維素材のシェアは、ほぼ日本が圧倒的な強さを誇っていますが、最近では中国の追い上げも非常に激しいので、現在の優位性を、是非日本の各企業には保っていただきたいです。

 

 

明日もう1日お休みをいただいた上で、土曜日に出発。ただまた担当予定だった便に欠航が入り、スケジュールが変わることになりました…このままですと、5日のうちの数日は自宅待機、ということになりそうです。