米国小型機専門の航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。
今週月曜日から出発していた4日間のフライトを終え、今日お昼頃帰宅しました。コロナウィルスの影響は、航空会社には甚大。旅客数、収益額とも昨年同期比で9割減。その影響で各路線とも大幅な減便が施されることになり、裕坊が担当する便も大幅減。この4日間は本来なら10便を担当するはずだったのですが、スケジュールの割り当てが終わった後も、担当便の調整が終わらず…………
結局、担当したのは4日間で4便だけ……
3日目の到着先は、カナダの最大都市トロント。デルタ航空系列の機体の発着は、第3ターミナルのA、Bコンコース。到着時はBコンコースに到着して(出発便にご搭乗の皆さんは、出発前にトロント空港内で米国入国管理局を通過するので、同じ場所からの出発でありながら、Aコンコース扱いになります)、カナダの入国管理局へ。任務が完了して宿泊滞在先へと向かう乗務員も、同じように入国管理を受けます。
ボーディングブリッジがないゲートでしたので、飛行機の階段を使って降り、我々4人も入国管理へ……
そこで見た光景は、というと……………
エンジンカバーが被せられ、一時保存状態に置かれたエアカナダの系列会社、ルージュのエアバス機。
カナダの格安航空の老舗、ウエストジェット航空も同様………
ウエストジェット航空の主力機材であるボーイング737型機には、たくさんエンジンカバーがかけられ、所狭しと駐機場に佇んでおりました………
ボーイング767型機に代わる国際線主力機材として導入になったばかりの、ウェストジェット航空のボーイング787型機。昨年1月に華々しくお披露目も行われたのですが……
コロナウィルスの影響を受け、3月22日より国際線は全面運休中…………活躍の場をなくしたドリームライナーは、駐機場で雨ざらしの姿を晒しておりました……
無言のままカナダ入国管理局へと向かう、エンデバー航空のクルー4人……
途中で待っていたのは、マスクをした検疫の係員…
アメリカと接するカナダといえども、アメリカから入国する以上は外国からの渡航者……
この説明用紙を渡され、現在カナダで課されている自己隔離に関する説明を受けます。航空機乗務員は、主要サービス産業に該当するため自己隔離の例外になるらしいのですが、マスクだけは着用するように指示されました。カナダに滞在中は2週間、マスクの着用が義務付けられるのだとか……
全員手持ちのマスクをして、ここから入国管理局へ…カナダでは国全体で足並みを揃えて外出自粛、自己隔離の要請を行なっているようです。ここがアメリカとは違う………
国と地域を問わず、不要不急の国外渡航を自粛するように強く要請されているカナダ。当然、カナダへと帰国する人の数も少なく……
荷物受け取りカウンターにも、人影はほとんど見当たらず……
お迎えの人の姿もまばら……
カナダでは、お迎えの人のための待合の座席も、社会的距離を取ることができるよう、椅子の一部が使用不可になっておりました。
普段は人でごった返す、トロント・ピアソン空港の国際線到着ロビー。
昨日水曜日は、本当にひっそりとしておりました……
ここからホテルまでは、お迎えの送迎シャトルに乗り込んでしまうと、ほんの数分ほど。
ホテルでもカナダ入国時と同じような説明を受け、不必要な部屋からの外出を自粛するように要請されましたので……
一旦部屋に入ると、そのあとはずっとこもりっきり……
午前中には既にホテルの部屋にも着いていたのですが、そのあとはお食事も持参の食材を使って…… 昨夜のメインは、インドカレー。
アメリカのスーパーで売っているレトルト食品。 お弁当箱に入れて、電子レンジでチン……
今の時期は、食料品の持参は必須です……
4日目の木曜日は、早朝の出発。
昨日到着時と同様、ボーディングブリッジのない出発ゲートから、飛行機備え付けの階段で飛行機へと乗り込んでの出発…… ここ最近は、ほとんどずっと一桁台の乗客数が続いていたのですが……
今朝はなんと…………
韓国からの乗り継ぎのお客さんで、ほぼ満席。76名仕様の機体に、72名の乗客の方が乗ってこられての出発でした。
ちなみに、デルタ航空のゲート係員さんのお話によると、今はほとんど運休しているデトロイト発の国際線にあって、ソウル仁川空港行きは今もほぼ毎日運航。しかもほぼ全便満席なんだそうです……ほとんどコロナウィルスが終息していると見ていいということなのか?是非それが本当であって欲しいです。
でもデトロイトまで一旦帰ってくると……
ここ最近お馴染みになってしまった光景……
出発便案内板の半分すら埋まらなくなったこの期に及んでも……
まだ欠航が相次いていますので、空の旅がどうしても必要な方は、フライトの最新情報をお調べの上で出発されることをお勧めします。
ちなみに外出自粛に関していいますと、アメリカでは国の成り立ちなどの歴史的な経緯が大きく影響して、連邦政府よりも州政府、州知事の方が権力が強く、未だに外出禁止令を敷いていない州もあります。その代表例がサウスダコタ州。州知事のクリスティ・ノエム氏は典型的な保守派の共和党員。このような状況下においても外出自粛に関しては本人の判断に委ねるというのが、サウスダコタ流。
行動の自由の権利という合衆国憲法にもしっかりと記載されている基本的人権を、州知事の一存で摘み取ることはできない、ということらしいです……ただ先週までは2桁で抑えられていたサウスダコタ州の確認済み感染者数は、一気に4桁へ到達してしまい、4月16日現在で1,311名(死者数は7名)。
こんな時、大抵の保守層の間で実しやかに叫ばれるのが、これは2019年から2020年のインフルエンザによる死者数よりも遥かに少なく、ましてやガンによる死者の数には、到底遠く及ばないという論理。確かにサウスダコタ州などの人口が限られたところで比較するとそうかも知れん……
でもニューヨーク州の数字を見てみると…………
インフルエンザによる死者の数は、2019年10月からの統計で4,749名で、コロナウィルスによる死者数は14,832名(いずれも4月16日現在)。インフルエンザは6ヶ月間の統計なのに対し、コロナウィルスの統計は、実質1ヶ月……
コロナウィルスの感染力と致死性は、インフルエンザとは全くもって比較にすらなりません。
ガンによる死者数がどうの、と言ったところで、ガンは空気感染や飛沫感染などが基本的には起こるわけではありませんし、比較すること自体ナンセンス。(ただし性行為などの接触が原因で、HPVなどのガン感染は起こり得ますので、注意しましょう)
そんな中先日15日ミシガン州では、ミシガン州の州都ランシングで、外出禁止措置に反対する数千台規模での自動車デモが行われたそうです。
外出自粛規制が、4月末まで延長されたことに対する抗議だったようです。これは不要不急の外出禁止の内容が、細かくなりすぎたことも一因にはあったようですが(住民の家庭間の行き来制限、家具、ガーデニング用品の販売禁止措置などの規制強化など)、長らく続いている外出規制に耐えかねて、というところが大きかったのでしょう。
確かに収入が減って生活が困窮し、焦る気持ちは分からなくはないけども、失業者宛に失業保険やコロナウィルス対策の助成金は既に各家庭にも届き始めているのだし、もうちょっとガマンできないのかな〜、というのが裕坊の本音。保守派に言わせると、コロナウィルスによる死者よりも「経済死者」が激増する、ということらしいのですが………ミシガン州の感染拡大は数字上でもかなり如実で、死者数に至っては全米ワースト3位(4月16日現在、2,093名)。
しかもこれは外出規制措置があった上での統計。外出規制がなければ、到底この程度では収まっていなかったはず………推計によると、外出規制措置による接触機会の減少がなければ、全米で4千万人を超える死者が出る可能性があることも想定されているそうです。
裕坊思うに、経済が回らなくなっても、命があれば例え時間がかかってもそこから経済を再び回すことはできる。でも人がいないところでは、そもそも経済そのものが存在しない……ここは人命優先に一票です。