yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 3/18

米国リージョナル航空会社の操縦役を務める、裕坊と申します。こんにちは。

今週日曜日から始まっていた4日間のフライト、滞りなく終わりました。担当した便、1便たりとも遅延もなく、飛行機の故障等による遅れもなし……… それはそれでよかったのですが…………

 

変わってしまったといえば、乗ってこられる乗客の方の数……… (乗客数の合計を、赤で囲んでいます。2つ並ぶ数字のうち、/の左側が、総乗客数で、/の右側の数字は、自分1人では座ることができない乳幼児の数を示しています)

合計で11便を担当したのですが、1便あたりの乗客数、平均で20人にもなりませんでした。

 

こちらはシンシナティからテキサス州のヒューストン行き……

14名。これがほぼ中間値………

 

比較的ビジネス需要が高い、ボストン発シンシナティ行き。普段ですと、ほぼ満席になる便なのですが……

それでも搭乗23名……

 

デトロイトからテネシー州ノックスビル行きの便に至っては………

9名………………

 

 

コロナウィルスの感染がすごい勢いで拡大している現在のアメリカにあっては、各地で非常事態宣言が発令され、学校は休校になり、会社でも在宅勤務が言い渡されるなど、外出を控える対策が施行されていて、すっかりと人の動きが少なくなっています。中国ではかなり感染拡大が収まってきているとニュースで報道しておりましたが、アメリカはまさに今が正念場……

 

先日、保有機のうち300機を使用停止状態にするという大胆な対策を発表したばかりの、デルタ航空エド・バスチャンCEO。

ここ10日ほどでアメリカの状況はまさに一変してしまい、株は乱高下で各航空会社でも予約のキャンセルに次ぐ予約のキャンセルという、創業以来の大波に揉まれているようです。ここまでの試算では、昨年同月比(対2019年3月)でデルタ航空単体で20億ドルの減収(日本円でおよそ2,200億円)になるそうで、おそらく危機感も半端ではないのでしょう。バスチャンCEOは自らを無給にした上で、役員もさらに最大50%の減給、役員報酬を減らすことで、4億ドルの節約を見込んでいるようです。

 

さらには今日(3/18(水))になって、使用停止状態にする機体を600機に拡大することが発表される事態に……具体的な各機材の配分等はまだ発表にはなっていませんが、これには裕坊が乗務するリージョナルジェット機も含まれることになりそうです。リージョナルジェット機部門でも、最大15%の座席供給数の削減が決まっているらしく、会社全体のフライトスケジュールを組み直した上で、来月のスケジュールの入札は全て1からやり直し……4月のスケジュールが決まるのは、普段より10日遅れて、3月27日までずれ込むことになりました……

 

この急激な需要の減速に危機感を募らせた各航空会社の役員たち、自らの会社の座席供給数の削減を決めると同時に、トランプ大統領の元に、どうやらオバマ政権時と同様、連邦政府による助成金による救済措置を懇願しにワシントンを訪れているらしい………

 

よくよく振り返ってみるとデルタに限らずアメリカの航空会社は、ここ10年ほど続いてきた航空業界の好景気に乗じて、かなりの自社株買いに走り、株価の高揚とともに莫大な利益を上げておりました。本体のパイロットたちもその恩恵に預かり、利益共有(Profit Sharing)の名の下、最大で25,000ドルもの一時金まで手にしていたという話…………

まさに日本が1980年代から1990年代前半にかけて経験した、超がつくほどのバブル状態………… 株主総会では、各株主への配当利回りを最大化することを、恥じらいもなく宣っていたようです………過去10年間の絶好調の間、経営的財力的体力を蓄えていなかった、ということなのか………航空会社の財務面には、あまり裕坊は詳しくなかったのですが、株価の乱高下で、一気に借金漬けの状態に陥っているのかも知れません。

 

既にサウスウエスト航空では、28億ドル分の債務超過状態に陥り、JPモルガンチェイスに無利子のローンを、10億ドル分組んだのだそうです……サウスウエスト航空は、財務的にもっと堅実な経営をしているものだとばかり思っていただけに、ちょっとショックでした………

今後のアメリカの航空業界、特に財務状況はかなり注視していく必要がありそうです……

 

 

ここ最近は飛行機の機内は、折り返し時点で、地上係員総出で入念なまでの除菌作業………

 

今までですとアメリカ国内では、ほんのごく一部の日本人を除いて、マスクをしている方を見かけることなどはありませんでしたが………

アメリカ国内の衛生概念も多少変わってきたのでしょう。まだ少数ではありますが、一般のアメリカ人でもマスクをして空港を歩く方を、見かけるようになってきました。

 

ニューヨーク州マサチューセッツ州などでは、レストランの休業指示も発令され、

 

今まで人で賑わっていたレストランが、各店ともシャッターを下ろしてしまい……

楽しみにしていたクラムチャウダーが、しばらく買えなくなってしまった………

 

こちらは、シンシナティ空港……

 

ステーキハウスもこの通り……

当面2週間ほどの休業になるそうです……

 

こちらのレストランなどでは、バルコニーから椅子もテーブルも撤去………

 

デトロイトのBコンコースにある、サンドイッチ屋さん……

基本的にこういったレストラン系は閉鎖になり、お持ち帰りのできるお店だけの営業に限られることになるのだそうです… …

 

今日4日目の水曜日は、担当したのは1便だけ。ニューヨークはまずまずのお天気で、とても凌ぎやすい1日。

 

しかしターミナルに入ると、人影は疎ら………

 

建て替えが進むターミナルとあって、売店もいくつかに集約されることになり、

既にシャッターを閉めてしまったところもありました……

 

ニューヨーク州は、今週の月曜日にクオモ州知事から、レストラン閉鎖の指示が出ておりましたので、

こういった着席型のレストランは、ほぼ例外なく閉鎖になっています……

 

フードコートにも、いつもの活気はなく……

 

今までですと野菜やお惣菜が並んだサラダバーにも、食材はなし……

その代わりに飲料水が、並べられておりました……

 

今日は客席に座って、ニューヨークからデトロイトまで。座席数180に対して、乗客はクルーの移動を含めてたったの23名……

今までですと夕方5時の便で、ファーストクラスにアップグレードされたなんて、記憶にない…………

 

飛行機を降りた後の、この閑散としたターミナルが、今のアメリカの状態を如実に物語っています……

 

雨の中を帰宅……

まさに急に入り込んでしまった、長い長いトンネル………

 

アメリカは、今こそ踏ん張り時です……