yuichibow’s blog

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 2/7

小型機で、普段から強風に木の葉のように揺すられる、裕坊と申します。こんにちは。

今週火曜日から4日間のフライトへと出かけていた裕坊。近年稀に見る暖冬はアメリカにも広がっておりましたが、今週後半に入って、久々にちょっと冬型のお天気……

 

デトロイト地方にも積雪の予報は出ておりましたが、除雪のプロが待ち構えるデトロイト付近では、数センチの雪などではビクともせず、

ほんのちょっとしか雪が積もらなかったデトロイト地方、休校はほとんどゼロ……(それでも北の方では、若干の休校が出てはおりましたが……)、

 

 

積雪の予報がある時には、休校情報のチェックに余念がない愛妻ちゃん。子どもを愛して止まず、幼稚園の子どもの面倒を見るのが普段から楽しみで仕方がない愛妻ちゃん、きっとホッとした様子で出かけて行っていたことでしょう………

 

 

片や裕坊、デトロイト地方を初めとする中西部では、水曜日の午後から少しずつ雪が降り始めて、まずはインディアナポリスを出発する時に、飛行機に積もった雪の除雪作業……

航空力学的に雪が主翼に積もった状態ですと、飛行に必要な揚力を得ることはできませんから、降雪がある時はほぼ例外なく離陸前に除雪の作業を行います。除氷液を積んだトラックがやってきて、ホースでそれを機体全体に振りかけて、氷や霜、雪などを全部払い落とす仕組み……

 

2日目の木曜日は、ニューヨーク・ケネディ空港から、

 

ナイアガラの滝に程近い、ニューヨーク州の西端に位置するバッファロー空港を往復…

ニューヨーク州バッファローは、五大湖のうちのエリー湖オンタリオ湖にすぐ南に面しているので、普段から湿度が高く降水量も他の都市に比べて多め……木曜日も若干の積雪……

 

ただ雪だとなんとか対処法があります。除雪のプロにかかれば、数十センチにもなるような豪雪でも、30分ほどであっという間に雪をかき分けてしまいます……

大型の除雪トラックが何台も連なって、雪を振り飛ばしていく様子を観察するのは、圧巻そのもの………

 

問題なのは、英語でフリージングレイン(Freezing Rain)と呼ばれる雨氷があるとき………………………

残念ながら、豪雪に対処する腕っぷしの持ち主といえども、雨氷というのは、実はとても厄介な大敵なのです……

 

この雨氷という現象、地表面よりやや上空の空気の温度が高い、逆転層(英語では、Temperature Inversionと呼ばれます)がある時に起こる特有の現象で…

本来雪の塊で雲から落ちてきた雪の結晶が、やや気温の高い空気層を通る際に、一旦溶けて液体の状態になるのですが、水滴の温度は十分に冷たい状態ですので、地表面に落ちるとあっという間に氷結してしまうのです。

 

寒冷地域で見られる樹氷が見られるのも、この時ならではの現象……

街路樹などについている樹氷を見るのは、とても芸術的で、それはそれはとても絵になるのですが………

 

路面がこうなると、もうどうにもなりません………

 

車に落ちた雨氷も、窓ガラスに張り付くとこの状態………

 

雨氷が降っている状態ですと、滑走路もすぐに氷で覆われてしまい、地表面が滑りやすくなって、ブレーキもほとんど効かなくなってしまいます。

過去にも、何度も滑走路踏み外しの事故の原因になりました……

 

現在では航空機向けには、連邦航空局の協力のもと、過去の事故の教訓から滑走路の路面の状態を測定することによって、ブレーキの効き具合を具体的に係数に換算するようになりました。

係数は7段階に分かれていて、数字が高いほど、ブレーキの効きがいい状態。6だと滑走路面は完全に乾いていて、着地後の減速に全く問題がない状態。0だと全くブレーキが効かない状態…

 

パイロットたちはその係数を基に安全に着陸が可能かどうかを計算します。滑走路を3分割し、着地からすぐの部分、滑走路のほぼ中央の部分、そして着地したのと反対側の部分をそれぞれ係数にて表示。路面が乾いている状態では、大抵(5/5/5)と表示。

雪が降っている時、滑走路を除雪車などで作業をしている時は、大抵(3/3/3)。

 

実は昨日木曜日の晩は、ケネディ空港からバーモント州バーリントンへの最終便を担当。昨夜は遅くから雨氷が降り始めていて……

実際には着陸していないので、どのような状態だったのか、正確には知ることはできませんでしたが………恐らくかなり滑りやすい状態になっていたことだけは、疑いの余地がなく…… 係数を探索してみると、(2/2/2)………

 

それでも着陸は不可能じゃない…………

ただ着陸滑走に使える距離ほぼ2,400メートル(滑走路の全長自体は、2,500メートル)に対して、必要となる滑走路の距離は2,300メートル。ですからあまりマージンはない状態………

そんな中、雲の中で外が全く見えない状態のまま滑走路へのアプローチを始めて、直接除雪作業をしている空港係員の方と直接無線連絡を取ってみると、

 

「今係数を測ってみたけど、1/2/2だったよ」。

 

ということは…………着地点のブレーキがほとんど効かない状態……………

改めて、操縦室のコンピューターで必要な滑走路の距離を計算してみると…………

 

2,800メートル………

 

着陸滑走に使える距離は、2,400メートル…………

 

やむを得ない決断でした……

着陸やり直しから、そのまま上昇。止むなくそのままケネディ空港へと引き返すことに………

 

深夜のケネディ空港到着……

予定外の引き返しでしたので、地上係員の到着にも時間がかかり……

 

到着は、深夜2時……

そのままバーリントン行き最終便は、欠航となってしまいました………

 

長い1日を終え、無言のシャトル内…

週の終わりに差し掛かっての悪天候を見越して、早めの帰宅便を予約していた乗客の方も多く、この時期にしては珍しくほぼ満席の便でしたので、申し訳ない気持ちでいっぱい……

 

ホテル到着は、ほぼ午前3時でした……

 

 

金曜日は担当便はなく、ニューヨークにそのまま2泊滞在。明日土曜日は1便だけを担当して、帰宅です。