yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 9/3

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

異常に多い今年の台風、裕坊の頭の中では台風が本格的に活発になるのは8月中旬以降というイメージがありましたが、その既成概念を覆す今年の台風。今度は21号が大型の勢力で日本列島へと近づいているようですね。

どうやら非常に強い勢力を保ったまま、今日のお昼前後に四国から紀伊半島へとかなり接近、上陸する見込みのようです。西日本、東日本で暴風、高波、大雨、高潮に厳重な警戒が必要と気象予報台から呼びかけています。皆さん、事前の準備、最新の台風情報などをしっかりとお願いします。避難の決断も早め早めでお願いします。

台風の定義とは、皆さんご存知の通り、北西太平洋で発生した熱帯低気圧のうち、最大風速が毎秒17メートル以上に発達したもの。海上で大きな湿気を巻き上げていますから、大量の雨ももたらしますし、力強い渦を巻くようになると風も強くなります。

飛行機にとっても風速17メートル以上、航空業界で使われるノットに換算して34ノット以上もの風になると、さすがに技量に優れたパイロットといえども扱うのは困難になります。ですから台風、こちらでいうハリケーンが発生すると、影響のある地域を飛ぶフライトはほぼ例外なく欠航。
でももしそれが局地的なものだったとしたら………………

上にあるような航空気象予報でよく使われるチャートとにらめっこしながら、予定通り運航するのか、それとも遅延してお天気が回復するのをしばらく待つのか、もしくは欠航するのかを決断します。そこで時々空港で皆さんにお目にかかるのが「天候調査中」の文字。

飛行機にはそれぞれの機種によって、それぞれ運航可能な気象条件が細かく定められています。例えば風速であれば30ノット(15メートル)であるとか、横風であれば20ノット(10メートル)などなど。滑走路の路面にも影響は受けることになり、滑走路上で水滴が浮いていたり雪が残っていたりすると、さらにその条件は厳しくなります。

航空会社によって欠航をするのかそれとも予定通り運航をするのかの決定までの過程は様々。アメリカの航空会社では通常は運航管理課の責任者が気象情報を集めた上で、各機種ごとに定められた限界値と比較。限界値を超えていたり、あるいは運航可能な範囲内であってもマージンが少ないと判断された場合は、その日の運航管理課の責任者が決断を下して欠航が決まります。

仮に安全上、運航に問題がない気象条件であっても、欠航が決まる場合もあります。アメリカの場合で見ると、ニューヨークやアトランタ、シカゴなどの離発着の多い空港ともなると、悪天候の影響によって航空管制が扱える便数がかなり限られてしまうので、離発着数を調整する目的で、地方空港を発着する座席数の少ないリージョナルジェット機が優先して欠航の対象になることに。
スケジュール通り運航するという決断が運航管理課で下された場合においても、最終判断は実際には機長の判断に委ねられることになります。ただ運航管理課で運航可能と判断された場合は、かなりのマージンが与えらることがほとんどなので、そこから機長の決断で欠航を運航管理課に申し出るというケースは実際には極めて稀。目的地の天候が微妙であっても、燃料がかなりの量搭載されて、目的地の空港に着陸できない場合でも、そこからかなり遠く離れた代替空港へと余裕を持ってたどり着くことが出来ます。

9月4日現在、既に暴風域に入る地域が出始め、鉄道の運転見合せ、航空便の欠航も出始めています。大きく被害が広がらないことを、アメリカから心よりお祈りしています。

裕坊