yuichibow’s blog

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 4/4

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

今回の4日間のフライトは病み上がりの状態で始まり、飛行機が降下をするときにやってくる気圧の変化に苦労しながら何とか4日間を乗り切って終わり……………………………たかった。のど飴、鼻詰まり用のスプレー、あとこちらで市販されている鼻詰まり用の飲み薬などが、今回の4日間では大車輪のごとく大活躍。お陰でカナダのエアラインで活躍する現役ラインパイロットの方にお会いする機会にも恵まれました。本当に頑張って出てきた甲斐がありました。

大抵4日間のフライトを担当するときは、4日目に何かが起こります。5日間のフライトだと、予期せぬことが起こるのは当然のことながら5日目。これをフライトクルーの呪いと言います。パイロットとして、或いは客室乗務員として働く場合、この最後の日に重要な予定を入れてはいけません。

パーティーに参加するのであれば、食べるのは残り物でガマンしましょう。ビールは恐らく品切れになります。喉が渇いたからといって文句を言ってはいけません。呼んでもらえたことに感謝して、気の抜けたコーラを美味しそうに飲むのです。メジャーリーグの試合を見に行こうとすると、応援するチームがボロ負けしてゾロゾロと家路に着いている観客の流れに逆らうことになる可能性があります。スマホの試合速報でガマンしましょう。ちなみに我がデトロイトタイガース、移籍してきたばかりのリリアーノ投手の活躍で景気が上向いたと思ったら、昨日は完封負けです。いつものタイガースに逆戻り。あ、余計な情報でした。申し訳ありません…………………

今日は3本のフライトの予定が入ります。あくまで予定です。念を推しておきます。あくまで予定は3本。テネシー州ノックスビルを出発して、まずはミネソタ州ミネアポリスまで。そこで次のフライトまで4時間の待機。裕坊、睡眠のパターンがガタガタになって頭フラフラになりながらクルーラウンジへと着きます。ソファに座って椅子を倒してお昼寝モード。

きっと副操縦士の頭数が足りなかったのでしょう。ここまで4日間連れ添ってきたティムくん、乗務員配置係からの連絡が入って、裕坊と離れ離れに。スケジュールが変更になって、天気が大荒れのニューヨークへと向かいます。案の定離陸待機が入り、それはやがて離陸停止へと変わって地上で足止め。裕坊がお昼寝から起き上がり、クリーブランド行きのフライトのゲートに到着したとき、未だに離陸できず地上で待機をしているのが見えます。気の毒です。

裕坊が乗る飛行機、30分ほど遅れてやってきました。でも到着した先のクリーブランドで次のデトロイトまで2時間の待機のスケジュールが組まれているので、全く問題なしです。十分取り返せます。搭乗が始まる頃、ティムくんはようやくニューアーク空港へと向けて離陸していきました。ほぼ4時間遅れです。ティムくんに変わってクリーブランド行きを担当するのはウィルくん。何度か一緒にフライトを担当して、お互い気心も知れています。このウィルくんと残り2本の予定のフライトを担当して終わる予定になります。念を推します。あくまで予定。

お天気が荒れているのは東海岸だけではありません。中西部も大荒れです。お天道様、カレンダーをめくるのを完全に忘れてしまっています。昨日しっかりと雪が降ったミネアポリス、4月に入ったというのに外気温マイナス13度です。中西部各地は風速が軒並み20メートルを超える大荒れの天気。ただ横風用の滑走路もあるクリーブランド空港、着陸には問題ありません。巡航高度に入るととても乗り心地のいい快適なフライトです。上空はとても穏やかです。気分も落ち着きます。

副操縦士のウィルくん、父親がノースウエスト航空パイロットだったという飛行機野郎家系、フライトのセンスは抜群ですが、まだジェット機に乗り始めて2年。ここは裕坊が操縦桿を握って滑走路へと入ります。軽いリージョナルジェット機などは20メートルを超える風には、木の葉のように煽られます。それでも着陸しちゃいます。愛妻ちゃんに会えるのを頭に思い浮かべます。愛妻ちゃんの笑顔に比べれば、横風などなんてことないのです。

ゲート近くまでやってくると、デルタの塗装をまとった飛行機が4機、横に並んで止まっています。どれも皆ニューヨーク行きです。皆地上待機をかけられているため、ゲートからプッシュバックすることすらできません。空いたゲートがないので、しばらく足止めになります。それでもデトロイト行きの定刻出発予定まではまだ1時間あります。問題なしです。やがて離陸待機を解除された飛行機が一機、プッシュバックをします。ゲートが空いてそちらへと入ります。さぁ、残り1本…………………の予定……………………

搭乗が始まります。ニューヨーク行きから振り替えになった乗客がたくさん集まってきて、ほぼ満席にはなりますが、搭乗は順調に進みます。定刻出発には全く問題なし。そこに操縦席据え付けのコンピューターに、運航課からのメッセージが一つ入ります。……………………デトロイト行き全便、離陸停止…………………………

実はデトロイトの天候も大荒れ。横風が吹き荒れていて、普段は南西方向へ伸びる4本の平行滑走路を使うところが、横風用の滑走路2本へと供用滑走路が変わっています。当然、航空管制の許容到着便数が激減して、デトロイト行き全便が一時離陸停止状態に陥ることに。裕坊のスケジュール表に目を通します。時間切れまでに余裕がないやん…………………

実は一昨日のモントリオールへの午前様の到着、これが結果的に大きく響きました。連邦航空法に業務時間に関する規定があり、業務時間の制限を超えた延長業務に入るのは基本的に1回のトリップ当たり1回までという制限があります。モントリオールに夜中過ぎに到着した時に、この延長業務をしていたせいで、今回の4日間のフライトにおいては2回目の延長業務ができなくなってしまったのです。デトロイト行きの地上停止の告知から1時間ちょっとを経過したところで、裕坊1人時間切れ。ちょうどその頃ニューヨークからクリーブランドへと飛んできていたフライトの機長をあてがうことでデトロイト行きのフライトは継続することになり、裕坊はクリーブランドで足止め。

裕坊以外の3人のクルーを乗せたフライトは、ニューヨークからクリーブランドへと飛んできていた機長を迎え入れて、3時間遅れでデトロイトへと向かいました。

その頃、ニューアークからシンシナティを経由し、乗客の1人として客席に座り今日中にデトロイトまで帰るはずだったティムくん、シンシナティ行きのフライトが欠航になって、彼もニューアークで足止めです。フライトクルーの呪いから、今日はティムくんも裕坊も逃れることは出来ませんでした。

今回の4日間のフライト、病み上がりの状態で始まり、飛行機が降下をするときにやってくる気圧の変化に苦労しながら何とか4日間を乗り切って終わり……ませんでした。幸いパーティーの予定は入れていませんでした。メジャーリーグの観戦チケットも買っていませんでした。明日は午前10時のフライトに乗客の1人として客席に座り、愛妻ちゃんと息子くんがきっと待ってくれている……………恐らく待ってくれているはず、のデトロイトへと向かいます。

 

裕坊