yuichibow’s blog

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 3/22

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

昨日ほとんど1日を通して降り続けたアメリカ東海岸の大雪、思った以上に激しかったのでしょう。我がエンデバー航空のニューヨーク到着便、ケネディ空港、ラガーディア空港とも全便欠航になってました。デルタ航空本体ですら運航したのはほんの一部だけ。特にラガーディア空港は、滑走路全長が2,000メートルとちょっとしかないので、通常でも離着陸にはあまり余裕はありません。雪が降りしきる滑走路での離着陸にはどうしても危険が伴います。ほぼ全便を欠航したのは英断。

雨や雪が降っていると、飛行機の場合いくつかのことを考慮しておく必要があります。パラパラ雨やチラチラ雪程度であれば、離着陸にはまず大きな影響はなし。鼻歌を歌いながら自分がパイロットであることに皆んなホレボレ、自己陶酔。俺ってカッコいいだろ、見てくれよ、オレ操縦桿握ってるゼェ、状態。

それが一度雨が叩きつけるように降り出したり雪で前が見えなくなったりすると、ヤベぇんでないの?このときの離陸滑走路、着陸滑走路の距離、モロにパイロット心理に影響します。長ければ長いほど言うことなし。雨や雪そのものは直接は離陸や着陸に大きくは影響はしません。問題になるのはそれに伴う気象状況だったり滑走路の状態。雨や雪が激しく降るときは大気がすごく不安定になってます。なんかテレビのお天気コーナーでよく聞く響きですね。

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大気が不安定、詳しい説明は気象学専門の方や気象予報士の方々にお任せしますが、上昇気流が発生して強い風を伴うことが多いのが特徴。雨や雪の塊が一定の大きさになる為には、上昇気流でもって水分が空気中に保たれることが条件。実際には雨も雪も雲の中では大抵の場合、水分は氷の粒として浮いているそうですが、上昇気流が強ければ強いほど、氷粒が大きくなってもまだ空気中に浮いていられるのです。そして雲の中で雪だるま方式で氷粒はどんどん成長します。上昇気流が支えきれない重さにまで成長して落ちて来るのが雨や雪。暖かい空気に触れて溶けて落ちて来るのが雨で、溶けなければ雪。

上昇気流が強ければ当然強い風も伴います。ですから雨粒や雪の結晶の大きさって、風の強さの目安にもよくなるのです。風が強ければ、飛行機の速度もモロに影響を受けます。離陸時はほんのちょっと速度を速めにまで上げて離陸すればごまかせますが、着陸時はそのときの重量に合わせて、一定の速度で滑走路へと入ってくるのが基本。風が強く突風が吹き荒れている時などは、速度計の針も上下に激しく揺れ動きます。

裕坊の乗るCRJシリーズはスラストレバーは全て手動式。強風時はパイロットが自らスラストレバーを風に合わせて微調節。機首の角度と出力の微調整をしながら、一定の速度を保ち滑走路へと近付きます。機種ごとに特性が微妙に違うので、慣れがいります。大切なのは速度が失速速度を下回らないこと。飛行機が空中に浮いていられるために必要な揚力は、速度の2乗に比例。速度が遅くなると揚力が激減して主翼が飛行機の重量を支えられなくなりますから、速度を一定以上に保つことはとても大切。

さらに雪が降ると、離陸滑走、着陸滑走での路面の滑りやすさを考慮する必要も出てきます。特に着陸滑走においては摩擦の減少によるブレーキの効きの減少を頭に入れておくのは必須。滑りやすくなる分、どうしても制動距離が伸びます。3,000メートルある滑走路であればパイロットも安心して着陸できますが、ラガーディア空港はニューヨークのクイーンズの元遊園地を改造してできた即席空港的な作りになっているので、滑走路は全長2,100メートル。到底十分な長さとは言えません。

滑走路上には端からの距離の目安になる様々なマーキングがありますが、端から300メートルのところにあるのが着地目標地点。滑走路の中心線の横に大きな長方形のマーキングがしてあり、窓側の席に座っていればすぐに分かります。パイロットの着陸進入時の目標地点。滑走路が滑りやすい雪のような日でとても大切なのは、ここを絶対に外さないこと。運航管理課から送られてくる制動距離は、ここに着地することを前提にしたデータ。ここを逃すとせっかくの滑走路の距離を無駄にしてしまいます。

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もう一つ大切なのは少々強めに着地することを恐れないこと。お客様への乗り心地を考慮しソフトなランディングをするのは悪くないですが、それは晴天時のお話。降雪時は与えられた滑走路の距離の中で減速する方が余程大切。ちょっとお尻が痛くなるような着陸をしても、ちゃんと理由がありますので、あまりパイロットを責めないであげてください。強めの着地をするときの方が、着地点に飛行機をおろせている場合が多いのです。安全上、場合によっては必要不可欠です。

普段は旅客機は制動に1,500メートルほどを使います。降雪時の制動距離、滑走路の状態に大きく影響を受け、2,100メートルだと大抵の場合ギリギリです。到着便の欠航、安全上の理由から英断なのです。

今日はお昼から歯医者の予約が入る裕坊。歯磨きをもう一度済ませて行ってきます。

 

裕坊