yuichibow’s blog

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊 3/14

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

ここ最近、ほとんど毎日朝が究極に早い裕坊。ご褒美は普段よりも早く家に帰れること。ほぼ数ヶ月ぶりに太陽が沈まないうちに家に帰れるという、普通のサラリーマンでは決して味わえないご褒美を得られます。もちろん条件はつきます。それは飛行機が壊れないことと、裕坊を含めた他のクルーが寝坊しないこと。

朝一で飛行機に乗るときには、整備庫のある空港から出発する場合を除いては、大抵飛行機の電源は自分で立ち上げます。これが夏だとまだ涼しいうちに出発できるので、大抵操縦席も客室内もとても快適です。朝早く起きたことに対するご褒美を実感できるときで、機内はクルーの笑顔で包まれます。冬の間はシンシンと冷えた空気の中で電源を立ち上げますので、自分の吐く息がハッキリと見えます。生きていることを示す証拠がハッキリと目に見えます。客室乗務員からの圧力が時間が経つにつれて大きくなります。そんなとき、妻帯者は例外なく操縦席に座ってボタンを2つほぼ同時に押しています。既婚者の方であれば、それが何を意味するか、ご想像いただけると思います。

そのときに操縦席でパイロットが立ち上げているのが、APU。Auxiliary Power Unitの略で、業界人の間では普通にAPUと呼びます。このAuxiliaryというのは補助的な、付属的なという意味。早い話が補助動力装置です。言葉からして補助的に電源を確保するための機械というのは何となく想像していただけると思います。

普段の飛行中の電源はエンジン。回転部品が高速で回転することによって発する力を電気エネルギーに変えて得られる電気が電気源。発電機の原理自体は自動車と同じ。最近の旅客機は一部の大型機を除いてはどれもエンジンが2つずつついていますから、発電機も2個。ジェットエンジンは回転数が高く得られる電力も高いので、十分な電気が確保できます。

ただジェットエンジンは出力が高い分、かなりの燃料を食うのでゲートに止まっているときにエンジンをかけっぱなしにしておくと、あっという間にタンクがカラになってしまいます。しかも排気ガスの圧力がすごく、アイドリングの状態でもバスのガラスを力強く揺らすことができる力を持っています。ですから一旦ゲートに止まると、主エンジンは切るのが原則。でもそれを切ってしまうと電源を確保できません。そこで登場するのが補助エンジン、APU。

メカ的には飛行機の主力のエンジンとかなり近い構造。基本はタービン。ミニジェットエンジンと呼んでも構わないくらいエンジン構造は似通っています。空気を圧縮してタービンを回転させ、電気エネルギーを発生させます。こちらもそれなりに燃料は消費しますが、主エンジンに比べると半分くらいの燃料消費なので、節約は出来ます。電源をこれにて確保。飛行機の後ろの方に小さな排気口があるのを皆さんお気付きになったことがあると思います。まさしくAPU用の排気口と思っていただいて間違いありません。

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空気もかなり圧縮できますから、その圧縮された空気をエアコン用にも確保できます。温度調節もできるスグレモノ。冬の寒いときにAPUを立ち上げたら、少し客室の温度設定を少し高めにして、乗客の皆さんが搭乗を始める前に客席を暖めておきます。もちろん、温度設定はときどき変えて、ちょうどいい温度にしておくことは機長の必須業務項目。怠ると後方の客室乗務員からのインターホンが鳴り、放送禁止用語をいくつも聞かされることになります。

ちなみに最近では、電源もエアコン用の空気も、飛行機がゲートで停泊しているときはほとんどの空港で外部から確保できるようになっています。黒い大きなコードが地上を這うように飛行機に繋がれているときは、そこから飛行機が電源を確保してもらっていると思っていただいて、ほぼ間違いありません。春や秋の気候のいい時は敢えてエアコンの空気を客席に送り込む必要がないので、外部から電源を引いてAPUを切ってしまいます。これでまた少し燃料が節約できます。

今日はピッツバーグを出発してまずはニューヨークのケネディ空港まで。そのあとノースカロライナ州のシャーロットを経由してデトロイトまで帰ります。シャーロット空港のフードコートには、とても美味しい豚肉バーベキューがあります。お寿司屋さんもあります。誘惑に負けないようにしなくてはいけません。

 

裕坊

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