yuichibow’s blog

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 2/5

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

今日の裕坊は1日家で充電の日です。お仕事へと出かける愛妻と息子くんを見送り、洗濯機を回します。もちろん乾燥機もちゃんと回します。そしてときどき入れてはいけないものを乾燥機に放り込んで、愛妻に謝ります。家事の主役はあくまでも奥様方です。言いつけはちゃんと守りましょう。

昨日は訓練2日目でした。前向きな気持ちで学習できる環境が整った上での訓練ですから、成果が大きく上がります。実りも実に大きいです。ではどのように安全性向上に寄与するのか、ちょっと見てみましょう。

訓練1日目。エンジン火災、エンジン故障、失速、急旋回、補助翼故障、空中衝突回避などをこなします。かつては全て試験項目でした。合格基準に達しなかった場合は不合格となり、最悪の場合事故歴なしで職を失うことすらあったのです。手に汗を握りました。現在ではこれらはおさらいの項目となり、それぞれ3度のチャンスが与えられます。もし基準に達しなかった場合は単純に日を改めてやり直し。これが原因で不合格になることはなくなったのです。

そして昨日。訓練2日目。飛行機は(もちろんシミュレーターですが)ゲートに止まっています。デトロイトからシカゴまでお客さんを運びます。客室乗務員もいて70名の乗客が搭乗します。飛行機はほぼ完璧な状態に整備されています。一つだけ故障部品。2つある与圧装置(飛行機内のエアコン。その空気の量を調節して機内の気圧を適切に保ちます)のうち、一つが故障しています。マニュアルを開いて、安全に飛べることを確認。搭乗口が閉まります。プッシュバックし、誘導路を経由し滑走路まで。管制塔から離陸許可が出て離陸します。上昇中に故障部品を示す警告灯。機能していたもう一つの与圧装置が故障してしまいました。さてどうしましょう。

管制官に許可をもらい、まず飛行機を安全な高度へと下げます。大事なのはここから。計器類を色々と調べ、飛行機の状態を確認。操縦席に備えられたコンピューターを使って本社の運航課や整備課へ連絡を取り、意見交換。副操縦士とも意見を交わします。シカゴへそのまま行くのか、デトロイトへと戻るのか、或いは近くの代替空港へ着陸するのか。最終判断はクルーに委ねられます。

正解はありません。自分たちで結論を導き出し、答えを出します。大切なのは事故を回避すること。シカゴへそのまま行くことを決断してそのまま着陸、ゲートへ到着。乗客を降ろします。そして訓練が終わり、決断は最善だったか、他に代替策はなかったか、教官を含めて議論するのです。

最近の飛行機は本当に壊れません。重要部品の信頼性は飛躍的に向上しています。最近起こる事故の大半は、ヒューマンファクターと呼ばれる要素が原因になります。すなわち判断ミス、危険要素回避ミスなど。到着地のお天気は、航行路のお天気は、燃料の残りは、代替空港へ行くならどこを選ぶのか。判断力を鍛え、最善の方向へ飛行機を導き、安全に地上へと戻ります。高度を変えずに急旋回をする操縦技術が必ずしも安全性向上の役に立つとは限らないのです。

最近はほとんどの航空会社で、この訓練形式を採用しています。連邦航空局もこの形式を徹底して斡旋しています。訓練は2日間と以前の倍かかりますが、実り多くより安全になるのであれば、乗客の皆さんにとっても嬉しいはずです。以前の、もし落とされてしまったら、不合格になってしまったら、という恐怖心は消え去り、今日はどのようなことを学習して帰るのか、と訓練に臨むパイロットの姿勢も変わってきました。判断力が鍛えられ、実践の場で活かせるようになり、危険を予知して回避する能力がパイロット達に備わってきたのです。旅客機がいかに安全に目的地に到着できるかは、むしろここにかかっています。

皆さん旅客機には安心して乗っていただいて結構です。安全性も飛躍的に向上しました。この道12年目の現役パイロットがお墨付きを出します。あとは飛行機代ですか。高いですね。裕坊も自分で飛行機のチケットを買おうとして、人よりちょっと大きい目がさらに一回り大きくなります。眼球の中を見てみると、点になっています。仕事しますか…

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明日から2日間のフライトへと戻ります。

 

つづく

裕坊