アメリカの国内線中心の小型機専門航空会社に勤める、裕坊といいます。こんにちは。
本来であれば、ほぼ1週間に渡って休日をいただくことになるスケジュールが入っておりました。ところが昨日になって同僚の機長のうちの1人が、連邦法で定められた拘束時間の規定を超えることに……
予定していた便が運航できなくなってお呼びがかかり、夕方になって宿泊滞在が絡む2日間のフライトに、急遽出かけてまいりました。
昨日木曜日は、夕方の出勤。
5時過ぎに家を出たのですが、まだ雪は降っておらず…
高速道路も普通に走ることができて、5時半ごろには駐車場にも到着。
2月4日の全米での旅客航空機利用者は、全米で合計78万人(ちなみに昨年同週、同曜日は、216万人の利用者)。
コロナ禍以前ですと、デトロイト空港で夕方以降に搭乗手続きをするのは、ヨーロッパ方面へと向かう国際線搭乗客が中心でした。昨日の夕方以降の国際線運航実績は、アムステルダム行き1便と、エールフランス運航便によるパリ行きの合計2便だけ……搭乗手続きカウンターもひっそりとしておりました。
2月1日(月)より、ミシガン州でのレストラン店内飲食は、条件付きで解禁…
こちらはデトロイト空港内の、Bコンコース中央にあるレストラン、チリーズ。店内にテーブルも並ぶようになっています。
担当するのは、定刻9時15分発の、ニューヨーク州サラキュース行き。
ところが、 実は7時を過ぎたあたりから、雪が降り始め……
あっという間に視程がほぼゼロにまで落ちる、豪雪……
昨日の便で同乗になった客室乗務員は、視程がほぼゼロに落ちる中、前方を行く車の尾灯を頼りに出勤してきたそうです…
地上での作業が全て中断になって、その間にみるみる雪が飛行機の上にも積もっておりました…
わずか1時間の間に降った雪の量、おそらく15センチほど。 やっと飛行機に乗り込んだのは、定刻15分前…
ボーディングブリッジからの簡易橋渡しにまで、しっかりと雪が積もっておりました…
前が見えん……
飛行機はガラスが3重構造になっていて、中央の層には電熱線があるので、なんとかそれで雪を溶かすことは可能…
15分ほどしたところで、やっと視界も開けるようになりました…
ミシガンの除雪隊が出動して、誘導路の雪をきれいに掃いてくれたところで、出発。
こんな時は、まずは離陸前の除氷の作業から。
元々主翼は、空気の流れが乱されないことが前提でデザインされているので、
ちょっとしたことで、空気の流れは乱されてしまい、空中へ浮き上がるために必要な揚力は大幅に減ってしまいます。
それは雪や氷、果ては霜などでも例外ではないので、
降雪時などは、機体全体の除雪、除氷の作業を済ませて、機体を完全にきれいにした上で離陸することが絶対条件…
除氷作業では、こんなトラックが飛行機の周りをグルリと周りながら、グリコールが中心成分となった除氷液をかけて、氷などを溶かしてくれます。
こちらはカナダで除氷する時の作業の様子。液体の使用量を最小限に抑え、本当に必要とする量だけを使用して除氷するのがカナダ流…
こちらはアメリカでの除氷作業の様子……
豪快にバシャバシャと液体を振り撒くのが、アメリカ流……
いかにもアメリカらしい………
デトロイトでこの時期に出発する際は、除氷作業がお目にかかれるチャンス大です……
降雪中に作業場へと行きますと、屋根からの音で作業の様子が分かります。ちゃんと作業をしてくれていることが分かって、安心できます………………
雪から氷から霜から、かかってこいやぁ〜〜、なんでも溶かしたるでぇ〜〜、と気合が入っているのが、よく分かります……
ちなみに、除氷液は目的によって色分けがされていて、
オレンジ色の液体はタイプ 1 と呼ばれ、純粋に氷や雪を取り除くのに使われます。
緑色の液体は、防氷用。降雪などが続く時のために、除氷作業後に降り積もる雪を包み込んで、離陸時に風圧で落としてしまうのが目的。
こちらはタイプ 4 と呼ばれます。
緑色の液体が、主翼の上にかかっているのはそのため。
降雪が続く時は、これで主翼や尾翼などを保護した状態で離陸。ただ昨日は降雪が激しく、本来であれば離陸ができない降り方でした……
それでもなんとか離陸に漕ぎ着け、1時間遅れでサラキュース到着。
32名の乗客の皆さんに感謝されながら、ホテルへと向かいました…
昨日の離陸時の気象状況は、激しい降雪。航空気象情報では、+SNと記載されます。これが空港情報などで発表されると、少なくとも我が社での規定上では離陸ができなくなるのですが、
ある一定の条件を満たせば離陸できるという記載もあり、それを入社して15年目にして初めて使うことに……
その条件とは自ら目視をして主翼の状態を確かめ、離陸可能な状態と判断出来たならば、目視から5分以内に離陸する、というもの。
離陸前の主翼の状態確認を指し、連邦航空法上ではPretakeoff Contamination Checkと記載されています。
ただ操縦室内からですとその確認はできませんから、パイロットが客席内から直接目視をしなくてはいけません。
それでもいきなり制服を着たパイロットが客席へ歩いていくと、お客さんは何事かと驚いてしまいますから、 ちゃんと機内アナウンスを入れた上で、
副操縦士のカイルくんが、客席へと歩き、
非常用口座席のある列から、主翼を目視確認。ただ実際にはドアは開けてはおりません…
まだ今なら大丈夫、のお墨付き…
ほぼ間髪を置かずの、離陸となりました。
週末から、しばらくの間はお休み。次回の出勤は、今のところ、火曜日を予定しています。
2月4日(木) 担当を終了した便
デルタ4630便(EDV 4630)デトロイト(DTW)− サラキュース(SYR)
2月5日(金) 担当を終了した便
デルタ4747便(EDV 4747)サラキュース(SYR)− デトロイト(DTW)