yuichibow’s blog

ジェット旅客機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊パイロット日記 3/27

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン、裕坊です。

上の写真は、久々に朝のスタバでの風景。既に春休みに入っている愛妻ちゃんと、久しぶりに2人きりの優雅なデートを………………………

 

 

という訳では必ずしもなく……………………

 

 

1日ファイナンシャルプロに会ったり、銀行を数軒ハシゴしたり、修理に出していた靴を取りに行ったり、その間に息子くんの送り迎えに、そして最後の締めは修学旅行の説明会…………………………

 

 

ちなみに我が息子くん、こちらでの中学校生活の締めとなる修学旅行、東海岸へと行くそうなのですが、なんとデトロイトからは、バス移動だそうです…………………

 

 

 

しかも出発日の朝の集合、4時50分…………………

 

 

 

どっかの父ちゃんと似たようなことやっとるな〜………………

 

その東海岸への移動のバスの中は、恐らくこうなっていることでしょう…………


 

親御さんも数名、ボランティアで旅行へ同行するらしいのですが、父親が行ってたとしたら、こんな感じになっとるんやろな…………

アメリカの歴史の宝庫である東海岸への旅、今日は概略の日程を校長が説明会で披露。日本のパッケージツアーも顔負けの弾丸ツアー………

朝、自分で起きられない息子くんが、どう対処するのか乞うご期待……

 

 

ところで、今日3月27日といえば、航空業界にとっては忘れることができない1日です。

今から42年前の1977年3月27日、カナリア諸島にあるテネリフェ島にあるテネリフェ空港で、2機のジャンボジェット機ボーイング747型機)同士が衝突して、乗客乗員合わせて583名の方が亡くなったという、航空史上最大の大惨事が起こった日。

 

先日ご紹介した『Threat and Error Management』『危険因子とそれに伴うミスの危機管理と危機回避』に照らし合わせてみると、あまりにも『危険因子』が数多く積み重なった日でもありました。

 

普段は小型プロペラ機が中心に発着するそれはそれはのどかな、現テネリフェ・ノルテ空港。

その日は普段は、当時のテネリフェ空港では見ることがない大型機が、こぞってその空港にひしめいていたそうです。

 

そのうちの一機は、KLMオランダ航空のボーイング747型機。

 

そしてもう一機のボーイング747型機である、今はなきパンアメリカン航空

KLMオランダ航空は事故の4時間前にアムステルダムを出発、そしてパンアメリカン航空のジャンボジェット機はニューヨーク・ケネディ空港を出発して、どちらも元々はカナリア諸島にある大西洋のリゾート地、グラン・カナリア島を目指していました。

ところが目的地に近づく途中になって、爆弾テロが発生。それに続いて、二次テロを予告する、カナリア島分離独立派組織を騙る電話も入っていたために、空港は臨時閉鎖されることに……

 

行き場を失った旅客機は、ほぼ全機が代替空港へのダイバートを余儀なくされ、空港敷地面積が狭く、滑走路も1本しかないテネリフェ空港へと集まることになります。

 

このテネリフェ空港は、普段はプロペラ機の発着が中心で、往来もまばらな空港。滑走路とそれに並行する誘導路が一本だけ……

大型国際線機材による頻繁な往来は想定していませんでしたから、余儀なくダイバートしてきた大型機で、誘導路、駐機場は完全に塞がった状態………

 

離陸への準備をするには、滑走路を使って航空機を動かす以外には、方法がありませんでした。

電話による2次テロの予告は虚偽だったことが判明し、グラン・カナリア空港も再開が決まって、給油を終えた飛行機が離陸へと向かいます。

 

並行誘導路が塞がっていたために、離陸の準備が整ったKLM機、そしてそれに続いてパンナム機が滑走路を使って、離陸滑走を始める位置へと移動を始めます。

 

その間に天候は下り坂となり、テネリフェ空港には霧が覆い始めます。KLM機が離陸する頃には、霧も濃くなって、管制官は管制塔から滑走路の状況を目視できない状況に陥っていました。

離陸の準備が既に整ったKLM機を離陸させるためには、後ろに続いていたパンナム機を、まず誘導路へと移動させる必要があります。

しかし管制官が指示する第3出口は超大型のB747型機には狭すぎ、パンナム機の機長は第4出口から誘導路へ入ることを決断、そのまま滑走路を東へ進み、第4出口から誘導路へ入った際に、滑走路を完全に空けたことを通達する旨を、管制塔へと伝えていました。

その間にKLM機は、「飛行計画への許可」を受け取ります。これは「離陸許可」とは別に、旅客機など、「計器飛行による飛行計画への許可」であり、まだこの時点でKLM機には、「離陸許可」は出されていませんでした。

 

霧が深い状態で、KLM機からもパンナム機からもお互いの位置は確認できず……………………

 

「飛行計画への許可」を「離陸許可」と仮定したKLM機の機長は、航空機関士パンナム機がまだ滑走路上にいる懸念を機長に示していたにもかかわらず、スラストレバーを推し進め、離陸滑走を始めてしまいます………

 

 

その結果は………………………

 


 

583名の方が犠牲となる、航空史上最大の大惨事でした。

 

機長の判断一つが、人の運命を変えてしまうことになりかねないことを示した、このテネリフェ空港の大惨事。数々の大きな教訓を残すことになりました。

 

この一つ一つの教訓を胸に、明日から5日間のフライトへと出発します。

 

 

 

裕坊パイロット日記 3/26

皆さんこんにちは、リージョナル航空会社サラリーマン、裕坊です。

木曜日から5日間連続のフライトを控え、今日と明日は裕坊お休み…愛妻ちゃんは春休みに入って、今日はお友だちとお出かけ。ここ最近の中西部地方、冬のお天気がひとまず落ち着いて、今日もすこぶるいいお天気でした。

 

雲一つない、快晴のお天気。

 

そして朝早くには、玄関にお客さま…………つーか、本当いうなら、裕坊が今日のお客さま…………

 

我が家は今年でちょうど築40年。

一番右に写っているのが、我が家……外壁を見ると、かなり年季が入っています。

8年前に中古で購入した住宅なのですが、さらに屋根は年季の入り方が深く、屋根の交換がいつなのか不明なくらいに素材が古く、

さすがに写真のように剥がれてまではいないのですが………

全体を見ると、一枚一枚の素材がかなり傷んでいるのが、素人目にも明らかなので、

さすがに交換の時期…………

 

ということで、早ければ春のうちにも全部葺き替えをしてしまおうということで、今日は業者の方に来ていただきました……

 

屋根の素材にも、本当に色々な種類があり、

 

日本では古くは陶器や粘土で作られたという「和瓦」が主流。上の写真では、下段の左から2番目、コンクリート、クレイタイルに相当するらしいです。

ただしかなりの重量で、耐震性に劣るらしく、台風の時なども飛散する危険性があるとのことで、最近はシェアは落としているらしいですが……


新築では「スレート」とも呼ばれることがある、『コロニアル』が主流になっているらしいです。

低価格で色褪せがしにくく、軽量なために耐震性にも優れているのだとか……

リフォームの時によく使われているのが、こちら「ガルバリウム鋼板」

既存のコロニアル屋根に直接貼ることができるので、リフォームの時に使いやすいらしいです。軽量で地震に強く、耐久性が高くて、しかも断念効果もあるのだとか。

 

アメリカ中西部地方で一番よく使われているのは、日本でも最近取り寄せができるようになってきたという、アスファルトシングル、という素材。業者の方が持って来ていたサンプルを置いていってくれたので、それを写真でご紹介。

 

さらに拡大してみると、細かく砕かれた石がしっかりと密集して糊状に塗られているのがよく見えます。

 

明日は、裕坊一家が契約しているファイナンシャルプロと相談して上で、今までもらっている見積もりを比較した上で業者決定。

なるべく春のうちに、工事を済ませてしまいたい……

 

我が家の場合、2階にある浴室からの換気扇が直接屋根裏に繋がっているとあって、湿気をかなり屋根裏が吸い込んでいるので、

内壁の木も、この際取り替えたほうがいいらしいです。放っておくとカビが生えやすく、健康にも害を及ぼすらしいので、内壁も恐らく交換……

 

防水シートは、アスファルトシングルの屋根の命綱……

 

シングルが取り付けになる前には、家はこんな姿になるらしいです……

 

そして屋根素材のシングルを取り付けてもらって、

 

仕上げを済ませると……

 

こんな感じに仕上がるらしいです……

 

できれば、なんとか4月中には………

 

明日は引退後の財政設計を相談しているファイナンシャルプロとの面談。午後には、息子くんが6月に控えているという、修学旅行の説明会。

 

そして木曜日から、裕坊は5日間のフライトへと出発です。

 

 

裕坊パイロット日記 3/25

皆さんこんにちは、リージョナル航空サラリーマン、裕坊です。

皆さま、大変長らくお待たせしてしまいました。

今日、予定より遥かに長くかかる訓練を終えて、やっとミネアポリスからデトロイトまで帰ってまいりました。

長かった………………

 

一旦デトロイトまで帰っては来たものの、そのあともう一度ミネアポリスへと出直し。さすがにここ数ヶ月間、フライトからちょっと遠ざかっていた影響が出てしまい、何度も操縦をやり直しているうちに、時間切れ………………

 

訓練し直しで、一週間も伸びてしまうことに………

ただ、今回のほぼ10日間に渡る訓練、学ぶことは多かったです。

 

今回特に念を置いて勉強したのが、最近アメリカの航空業界において取り入れられている、『Threat and Error Management』というコンセプト。日本語に訳すと『危険因子、そしてそれに連鎖するミスの管理』というニュアンスで、受け取っていただけると思います。

 

ここでいう『危険因子』とは、「航空機の運航、並びに管理をより複雑にしてしまうもの」と定義されます。基本的には「外的要因」で、パイロットが自ら管理することができないものが対象。

通常であれば、一定項目を確認して、通常の操縦手順をこなしさえすれば、出発から到着まで安全にこなせるところ、『危険因子』があると、こなす必要がある業務量は増えることになります。

それは例えば、

夏であれば積乱雲、

 

冬場であれば、雪や氷などのお天気だったり、

 

飛行機の故障発生だったり、

 

或いは出発地、到着地の混雑だったり、

こんな時は、出発前の業務が増えることに……

 

離陸後でも、到着地の混雑が激しくて、滑走路に十分な空きがない場合は、航空管制によって上空待機が課せられたり、

こんな時は、燃料の残量を計算した上で、目的地に到着できるのか、或いは代替空港へとダイバートの必要があるかを確認する必要が出てきます。

 

上空でも飛行機の故障は、時として発生します。発電機の故障くらいであれば、対処は難しくはありませんが、

もしそれが、エンジンの上空における破損や損壊だったり、

 

エンジン火災だったりしたら、

 

こんな緊急用のチェックリストで、飛行機の上空での故障に対処。

故障の具合が激しく、目的地到着が好ましくない場合は、近くの空港へ緊急着陸の必要が出てきます。

 

こういった『危険因子』が関わってくると通常よりも業務量は断然増えますから、どうしても確認項目が抜けたり、本来こなさなければならない項目を、うっかり飛ばすなどの『連鎖するミス』を犯しやすくなります。

 

そのミスがいくつも重なると、

 

最悪の場合、飛行機を最も避けなければならない、誰しもが求めない状態へと導いてしまうことに(undesired aircraft state)

 

『誰もが望まない状態の航空機』とはその名の通り、誰もが望まない状態ですから、まずはその状態に航空機を導かないこと、もしその状態に陥ってしまったら、そこから航空機を『安全な状態』へと戻す必要が出てきます。

『危険因子』は基本的にパイロットは管理することはできませんから、それに対処する方法を練らなければいけません。

 

機長1人で対処するには限界がありますし、『ミス』をする確率が増えますから、

 

まずはそれに対処できる『チーム』を構成して、対処法を練ります。

その『チーム』を構成するのは、

本社の運航管理課であったり、

 

整備課であったり、

 

航空管制であったり、

 

客室乗務員だって、客室内の緊急事態では、大活躍。

 

上空にいる場合、燃料が無限にあるわけではありませんから、時間に限りもありますから、それを意識しながら、

 

それでも決して、1人で何もかもを請け負うとはせず、

 

こなすべき業務の役割分担をはっきりとさせることも大切。

 

副操縦士が操縦桿を握っている間、機長がチェックリストをこなしたり、

 

本社の運航管理課や整備課と連絡を取ったり、

 

航空管制から情報を得たりしながら、

 

各部署が、それぞれの分野のエキスパートの部分で、情報を提供。それが滑車のように機能すると、

 

最終的な各部門が納得できる最善の結論を導き出されるようになり、(Aeronautical Decision Making)

飛行機を安全な状態へと導くことができるようになるのです。

この『Threat and Error management』、『危険因子、そしてそれに連鎖するミスの管理』のコンセプトを、この一週間でかなり整理することができたのは、裕坊自身にとっても収穫でした。

ただ一週間、ほとんどミネアポリスにずっと止まりっぱなし。本当に長かったです…………

 

明日と明後日は、ちょっとお休みです。

 

 

裕坊パイロット日記 3/14

皆さんこんにちは、リージョナル航空会社サラリーマン、裕坊です。

今日は2日だけ続く『リザーブ』シフトの1日目。お天気もまずまずで、欠航や欠員が出ることもなく、特に『機長の交代要員』も必要ではなかったのでしょう。このまま次回の訓練のために、土曜日のミネアポリスへ出発するまで、フライトが入る可能性が非常に低くなってきました。

 

そんな中、アメリカでは航空業界に大きく影響するニュースが入ってきましたね。

6ヶ月の間に2回の墜落事故を起こしたボーイング社の737型機の最新鋭版であるMAXシリーズが、全世界的に運航停止を発表し、アメリカもその世界の動きに加わることになりました。

 

トランプ大統領から直々に、今週水曜日3月13日に発表。

アメリカ国内では、アメリカン航空が24機、ユナイテッド航空14機、サウスウエスト航空が34機をそれぞれ保有。MAXシリーズによる運航を予定していた便を、代替機に置き換えたり欠航扱いにしたり、影響を強いられているようです。

 

昨年の10月、ライオン航空………

 

そして今回のエチオピア航空……………

この2回の墜落事故で、合計346名の方が犠牲になりました。事故で亡くなられた方々には、心よりご冥福を申し上げたいと思います。

まだ詳しい事故原因は、調査結果の報告を待つ必要がありますが、

 


このMAXシリーズには新たなシステムが一つ、従来の737型機から加えられていて、少なくとも昨年10月のライオンエアの事故では、その新しい装置が墜落にかなり直結しているのは確実なようです。

その新しいシステムとは、MCAS(Maneuvering Characteristics Augmantation System)(操縦特性増強システム)。

 


 

パイロットであれば、この図を見ただけで、すぐに理解できるかも知れませんが、これは先日の裕坊ブログでも取り上げた、航空力学に大きく関連している項目ですので、もう一度航空力学を簡単に解説してみたいと思います。

航空機が飛行中に、航空機にかかる基本的な力の要素は、全部で4つ。Lift(揚力)、Thrust(推力)、Drag(抗力)、Weight(重力)。推力を作り出して飛行機を前進させ、得られる空気の流れを主翼に受けて揚力を発生させ、空中に飛行機を『釣り上げる』仕組み。

 

主翼の翼面はなだらかな曲線を描いていて、空気がその主翼上面を通過すると、その曲面を通過する空気の流れが早くなり、その主翼上面には低気圧が作り出されて、主翼が『釣り上げられる』のです。

巡航中は、ジェット旅客機であればおよそ時速900キロというスピードが出ていますから、空気の流れも十分にあり、安定した揚力を得ることができるのですが、

 

離陸着陸時には、離陸滑走距離、着陸滑走距離を短くする必要がありますので、速度を遅くして飛行する必要があります。(それでも離着陸時には、ジェット旅客機の場合、平均およそ時速230キロ前後のスピードは出ています)

補助翼などを利用することで、遅い速度での飛行を可能にします。

さらには空気の流れに対する主翼の翼面の角度を変えることによって、揚力を増やすという方法も取られます。主翼翼面の空気の流れに対する角度が大きくなれば大きくなるほど、揚力は増すのですが…………

ある一定の角度を超えてしまうと、主翼上面上の空気の流れに乱れが生じ、揚力を生み出すことができなくなり、機体の高度を、結果として落とすことになってしまいます。これが俗に呼ばれる『失速』状態。

『失速』状態から回復するためには、主翼の空気の流れに対する角度を小さくすることで、なだらかな空気の流れを回復させる必要があるのです。そのために必要な操作とは、『操縦桿を前へ少し押してやること』

 

 

今回、ボーイング737型機のMAXシリーズにおいて、新たに装着された『MCAS』とは、それを助けるための装置だったのですが…………

 

 

『失速』状態であることを感知するためには、空気の流れの主翼翼面に対する角度を知る必要があります。

そのために取り付けられているのが、AOA Vaneという装着。Angle of attack vaneと英語では呼ばれ、主翼翼面における空気の流れの角度が分かるようになっています。大抵の旅客機では、コックピット周辺に取り付けられているのが普通。空気の流れの角度が大きなりすぎ、『失速角度』に近づいてくると、コックピットでは警告が鳴ったり、操縦桿を自動的に前へ押したりして、『失速』を防いでくれるのですが………

 

今回のライオンエアのケースでは、この『AOA vane』がどうやら問題になっていたらしいです……

事故機は、事故が起こる数日前から、機長席側、左側の『AOA vane』が度々誤作動をしていたようで、パイロットも整備課には報告を上げていたようですが、それをライアンエアの整備課が修理しきれないまま、事故機を送り出していた、ということだったようです。

 

同機は事故当時、誤作動が発生していた『AOA Vane』からの誤った情報が原因で、『異常なまでに操縦桿が押された状態になり』、機首が異常に下がった状態になって、時速800キロというスピードで海面に墜落したそうです………

 

今回新たに装備された、この『MCAS』システム。どうやらボーイングからは、各航空会社に対する取り扱いの説明も十分ではなかった、という報道も目にしました。アメリカン航空サウスウエスト航空パイロット達の話を聞いていると、マニュアルには新たに装備されたばかりの装置に関する記述が、まだなかったそうです。

 

アメリカン航空の機長で、全米パイロット協会の通信委員長を務めるデニス・タジャー氏によると、「ライアンエアの今回のMCAS故障問題は、システムに関する知識不足で発生したもので、飛行中にエンジン故障に遭遇して対処法を知らず墜落した事故と同じケースと言える」だそうです。

 

恐らく防げたであろう事故、本当に残念で仕方ありません………

 

 

 

 

裕坊パイロット日記 3/13

皆さんこんにちは、リージョナル航空会社飛び職人、裕坊です。

昨日は1日ミネアポリスでの座学を受けていた裕坊。数年前に受けたデルタ航空での面接には不合格していて、はっきりとデルタ航空から、永久に勤務資格なしの三行半まで突きつけられておりました。が、昨日の座学によって、取りあえず一回限りの面接の権利は復活……

もし面接へと行くとなると、これが生涯最後のチャンスになりますので、かなり入念に準備をしなければならないのですが………

 

まずその前に、今週末には、シミュレーターによる訓練。先日の座学と同じ建物へと戻ることになります……

 

数日間の『リザーブ』シフトもありますので、

とりあえず、座学の後はデトロイトまで戻ってきました。

 

2年に一度更新をしなければならない、飛行教官免許の更新も今年は控えているので……

そちらの勉強もしなくてはなりません……

 

もしデルタ航空の、一生で最後のチャンスとなる面接を受けるとしても、準備を始めるのはいつのことになるやら……………

 

アメリカ合衆国におけるパイロットの世界とは、ある意味弱肉強食の世界。アメリカ国内においては、社内における優先権は、全てが社歴順。これを『シニオリティ』と呼ぶのですが、入社からの会社所属歴が長ければ長いほど、スケジュールだけに限らず、機種選択、所属先空港、機長もしくは副操縦士の肩書きの選択まで、全て選択権利が高くなります。

その『シニオリティ』を求めて、まずはパイロット達は、必要な資格を取得すると、まずはリージョナル航空会社を目指します。

 

リージョナル航空会社も大手航空会社と同じく、いくつかの合併がここ10年の間で行われましたので、裕坊が入社した13年前に比べると数は半分ほど減ってはしまいましたが、それでも10社ほどがまだ健在……

 

デルタ航空との契約がある会社で見てみると、

 

こちらが、インディアナ州インディアナポリスに本社がある、リパブリック航空。

 

スカイウェスト航空(本社:ユタ州ソルトレイクシティ

 

我がエンデバー航空(本社:ミネソタ州ミネアポリス

 

他にも、

 

トランステイツ航空(本社・ミズーリ州セイントルイス)

 

アンボイ航空(本社:テキサス州ダラス近郊のアービング

 

PSA航空(本社:オハイオ州デイトン近郊のバンダリア)

 

ピードモント航空(本社:メリーランド州・ソールズベリー)

 

コミュートエア(本社:オハイオ州クリーブランド近郊のノースオルムステッド)

まだ数社ありますが、ここでは省略…………リージョナル航空会社には、本当に様々な選択肢があります。ただ以前はハードルがかなり高かったリージョナル航空会社は、必要条件を満たしさえすれば、大抵どこかで、就職には漕ぎ着けることができるようにはなりました……

 

本当の競争は、ここから…………

 

リージョナル航空会社で、数年間の経験を積んだパイロット達が、アメリカン航空

 

ユナイテッド航空などの大手を目指して、ひしめき合うことになります……

同じような塗装が施してあろうとも、大手は大手、リージョナル航空会社はリージョナル航空会社。待遇は雲泥の差………

 

さらにライバルは、リージョナル航空会社のパイロットだけでなく、

 

企業お抱えの、自社用機専属のパイロットや……

 

チャーター専門の会社のパイロット達も、大手航空会社のパイロット職を虎視眈眈と狙うことに……

 

米空軍のパイロットも、引退後は大手航空会社を目指すことが多く………

しかも空軍出身は、大手航空会社の大のお気に入り……リージョナル航空会社を飛び越して、引退直後に直接大手に採用されることも珍しくありません………

 

ただ大手に限らず、他にも航空会社の採用口は最近では広がっています。

 

例えばそれは格安航空会社の先駆け的存在にもなった、サウスウェスト航空であったり(本社:テキサス州ダラス)

 

ジェットブルー(本社:ニューヨーク州ロングアイランド)であったり、

 

スピリット航空(本社:フロリダ州マイアミ近郊のミラマー)などの選択肢も、

 

或いは貨物専門の航空会社という選択肢もあります。下の写真はフェデックスエクスプレス(本社:テネシー州メンフィス)

 

UPS航空(ケンタッキー州ルイビル

あと15年残されたエアラインパイロット生活。残りをエンデバー航空でそのまま過ごすのか、他社を目指すのか、勉強が一通り落ち着いた時に、よく考えてみたいと思います。

 

今日は本来なら3日間の『リザーブ』シフトのうちの1日目だったのですが、連邦航空法の規定により、30時間の休息を義務付けられる日に割り当てられましたので、裕坊は電話を待つことすらなく、1日ひたすらお勉強……

連邦航空法に新たに加わった、航空力学に関するオンラインの座学を受講しておりました………

 

勉強すること、多いわ………

 

お昼過ぎに愛妻ちゃんがお仕事から戻ってきた後は、お買い物にもお出かけ。

 

今週末には、聖パトリックデーが控えていることもあって、

 

お店の中も、緑色の洋服やら飾りやらが、しっかりと並んでおりました……

3月17日は、アイルランドキリスト教を広めたという、聖パトリックの命日。

 

聖パトリックデー当日には、町の至る所が緑色に染まってしまいます。

 

ビールまで緑色…………

 

川まで緑色に染まってしまいます………

元々アイルランドの祝日だったという聖パトリックデー。それを緑色に町中を染めて、この日の名を広めたのはアメリカだったのだとか…………

凝る時の凝りよう、アメリカというところは、ハンパではないです……

 

明日と明後日、裕坊は『リザーブ』です。

 

 

裕坊パイロット日記 3/12

皆さんこんにちは、リージョナル航空会社飛び職人、裕坊です。

裕坊は、一昨日まで3日間のスタンバイシフト。電話は一度も鳴ることなく、週末は家族と外食づくし。一昨日はデトロイトから北へと行ったファーンデールという町の一角にある創作料理の日本食屋さんで、夕食に舌鼓を打ち、

週明けの月曜日からは、1泊2日でミネアポリスへと行っておりました……

 

今日火曜日は朝からシミュレーターのあるトレーニングセンターでの講義……ということで、昨日のうちに、ミネアポリス入り…

 

しかし出発は夕方6時とかなり遅かったので、朝寝坊……今日から普通にお仕事が入っていた愛妻ちゃんは、起きた頃にはすっかり仕事に行っておりました……

今月は同じトレーニングセンターで、2回の研修。今週末にはシミュレーターを使った、年次飛行訓練………

 

今回の講義がある教室のお隣は、他の航空会社のボーイング737のシミュレーター……

 

そこからすぐ先には、裕坊が今週末に受けるフライトトレーニングで使用するシミュレーターもあります。

 

では今回の研修はというと……………

 

 

リーダーシップの講義でした……

実は正確にいうと、裕坊が現在勤めるエンデバー航空の前身の、ピナクル航空時代から所属するパイロットたちが、親会社であるデルタ航空の面接を受ける権利を、再取得するための座学。

 

なんかよく分からない説明になってしまいます。デルタ航空の子会社に勤めているのに、デルタ航空の面接を受ける権利???…………

 

おそらく皆さんの頭に浮かぶのは、いくつものはてなマークだったことでしょう……

 

そこで、旅客航空業界の構造をちょっと紐解いてみることにします。

 



上の写真3枚を眺めて、裕坊が表現しようとしていることをすぐお分かりになる方は、恐らくかなり長年アメリカの航空業界に携わっている方ばかりでしょう。

 

見た目にはデルタ航空の機体ばかり………

 

しかしよくよく目を凝らして、機種を見分けてみると、もうお分かりの方はお気付きのことと思います。

 

どの写真を眺めても、全てデルタ航空本体の機体と、デルタコネクションの機体が混ざり合っているのですね。

上の写真のうち、一番上に写っているのは、デルタ航空エアバス330型機。片や残りの2機は、両方ともブラジル製のエンブラエル175型機。両方とも、インディアナ州インディアナポリスに本社を置くリパブリック航空によって、運航されています。

 

片やこちらの写真は、裕坊が所属するデトロイト空港での写真。

一番手前の機体が、カナダのボンバルディア製CRJ−900型機。我がエンデバー航空による運航。100%デルタ航空が所有する完全子会社。しかし敢えて書きます。裕坊はデルタ航空の社員ではなく、あくまでエンデバー航空のパイロット。

 

ちなみにこの写真での残りの機体、写真で見る限りは全てデルタ航空本体による運航の機体。手前3機はマクドネルダグラス製MD−88型機。

 

ではデルタ航空の航空券を購入したら、全てデルタ航空による運航の機体に乗ることになるのか………そうとは限りません……

 

例えば、デトロイト空港からアメリカの首都ワシントン、レーガン空港へと飛ぶ場合。平日であれば、恐らくかなりの確率で、この機体に搭乗することになるでしょう。

国内線の主力機の一つ、エアバスデルタ航空による運航。

 

ではもし週末に旅行がてら、デトロイト空港からワシントンへと行く場合は………

 

かなりの確率で、76人乗りのリージョナルジェット機となることでしょう。リージョナル航空会社の代表格の一つでもあるスカイウェスト航空(本社:ユタ州ソルトレイクシティ)による運航の可能性もありますし、

リパブリック航空による運航かも知れません。我がエンデバー航空によるCRJ−900型機による運航も多く、ひょっとすると、裕坊自身が皆さんの搭乗便の担当をしているかも知れません。

全く同じ路線を担当をしながら、実は全く別の航空会社による運航。デルタ航空のチケットを購入していても、必ずしもデルタ航空の機体に乗っているとは限らない、という典型的な例の一つ。

 

では、デルタ航空エンデバー航空とでは、何が違うのか、というと………

 

全てが違います。

 

パイロット同士で比較した場合、給与格差は倍以上。国際線大型機に乗務する社歴の長い機長と、リージョナル航空会社に入社したての副操縦士で比較をすると、給与水準は最大で10倍以上。福利厚生から、会社加入の健康保険、或いは年金積立に至るまで、何から何までが違います。

 

ですから、皆こぞってリージョナル航空会社で、ある程度の経験を積んだ後は、デルタ航空をはじめ、ユナイテッド航空アメリカン航空などの大手を目指すことになるわけです。

デルタ航空は大手であり、エンデバー航空はあくまでも子会社。そしてあくまでも別会社であり、給与体系も別で取り扱われます。同じデルタ航空の塗装を纏ってはいても、あくまでも別会社……

 

どうしてもデルタ航空本体で、デルタ航空の社員として飛びたいのであれば、面接を受けてデルタ航空の社員になりなさい、そのための面接の権利回復のために、この座学を受けておきなさい、ということで、ミネアポリスでの座学になった、というのが真相です………

 

長くなりました…………

 

 

はっきり言います……航空業界の恥部をお見せすることになって、本当に恥ずかしい限りです…………

 

明日は本来はスタンバイシフトだったのですが、連邦航空法の規定により、30時間の休息が必要になりましたので、休日が1日入ります。

 

裕坊

 

裕坊パイロット日記 3/10

皆さんこんにちは、リージョナル航空飛び職人、裕坊です。

今月もここ数ヶ月と同じパターンの、スタンバイシフトの裕坊。12月から始めること、これで4ヶ月連続。ただ今月はミネアポリスでの訓練が2回も入っていて、スタンバイシフトが細切れになり、乗務員管理課もスケジュールを調整しにくかったのでしょうか。3日間続いた最初のスタンバイシフトでは、電話がかかることはありませんでした。

 

その間にも愛妻ちゃんや息子くんは、色々と忙しく行事が入り、家にいる時間も限られていましたので、この週末はほとんど外食。

 

昨日土曜日は、愛妻ちゃんのお友だちと共に、いつもお邪魔している、我が家からほど近い日本食屋さん…

 

いただいたのは、ボリュームたっぷりの天丼。

 

そのあとも、喋り足らない愛妻ちゃんを連れて、スターバックスまで……

愛妻ちゃんは、お友だちと共に、夜遅くまで喋り通しておりました………

 

そして日付け変わって日曜日、

全米には、コミュニティーと呼ばれる、同じ民族系の方たちが多く住む地域というのがあって、デトロイトからおよそ40分ほど北に行くと、ポーランド出身の方がたくさん住むコミュニティーもあります。

 

今日は我が家からちょうど1時間の、ポーランド系の方のコミュニティーを訪れ、

東ヨーロッパの香り漂うコミュニティーの中の、スーパーを訪問……

 

名前もそのまま、ポーリッシュマーケット…

 

お店の中に入ると、ヨーロッパを思わせる佇まい。

お店の中では、ポーランド語が飛び交っておりました。

 

やはり主食はパン。

 

デザートにも美味しそうなのが、並んでおりました……

 

ソーセージも種類が豊富。

 

ビールもポーランドだけでなく、ダークビールが有名なベルギーからの各種輸入品なども揃っておりました。

 

雑誌は当然のことながら、全てポーランド語……

 

紅茶も各種取り揃えられています。

 

この大きな袋を見ると、日本人的に想像するのはお米ですが……

こちらは当然、小麦粉……

 

変わったところでは、野菜サラダの瓶詰めなども売っておりました。

 

いよいよイースターの季節で、イースター用のお飾りも出ておりましたが……

美味しそうに見える…………

 

店員の方に、絶対に口に入れないように、しっかりと釘を刺されました………

 

精算……

 

次にやってきたのは、アジア系のスーパーマーケット。

ポーランド系のスーパーから数キロほどしか離れていないのに、雰囲気がガラリと変わり、

 

お店の中も、一気にアジアになってしまいます。

 

入り口入ってすぐの野菜コーナーは、アメリカの通常のスーパーと変わらないのですが……

 

アジア系のお店ですので、魚が豊富に取り揃えられています。

 

ここでのお目当ては、何といっても薄切り肉。

 

あまり肉類を薄く切って食べるという習慣がないアメリカではあまり買えない、焼肉用、しゃぶしゃぶ用、すき焼き用が豊富……

 

日本だと当たり前に見られるこの手のお肉も買えるのは、ほとんどがアジア系のスーパー。

 

当然のように、お味噌なども揃えられています。

 

韓国系のスーパーですので、キムチの品揃えはさすが……

 

そしてアジア系のスーパーをあとにしてやってきたのが……

 

そこから車で約20分、西へと行ったファーンデールの町。

 

今日のメインに訪れたのが、昨日とはまた一味違う、日本食屋さん。

経営もシェフの方も、アメリカ人の方だそうです。

 

入り口にはメニュー。

創作料理のお店ですので、食材の調達に合わせて、メニューも常に変わっているらしいです。

 

お店の中の雰囲気も独特。

日本でも最近見かけるような、モダンな雰囲気を演出しておりました。

 

ヒノキを使った木の壁のテーブル席に今日はお邪魔して…

 

まず注文したのが、野菜サラダ(Crispy Brussels sprout)

一番下に据えられた豆腐の上に、緑黄色の海藻、あと変わったところでポップコーンなどが乗っています。ポップコーンが、海藻と相性がいいのが意外でした。

 

こちらはハマチのたたき(Smoked Hamachi tataki)

炙っていますので、味わいがかなりサーモンに似ておりました。お魚の脂の甘みがグッと引き出されています。

 

そしてエビトースト(Shrimp toast "dynamite")

エビはピリ辛ソース。マヨネーズが効いたソースとの相性がなかなかです。その下がトーストされたイタリアンブレッド。ソースとのパンの相性、これだけでも結構いけます。

 

サーモンポケ。

ポケ丼を期待していた裕坊的には、ご飯が欲しくなる内容でした。量が少なめの前菜的なお料理。

 

そしてこちらが、うどんを使ったというキムチカルボナーラ

キムチ色とのソースに浸ったうどんのお味はなかなか。愛妻ちゃんが一番気に入っておりました。

 

そしてこちらアメリカの日本食屋さんというと、お寿司の次にアメリカ人の頭に思い浮かぶのが、

火鉢グリル…

 

こちらのお店の人気メニューのようで、あちこちで煙が上がっておりました。

 

そしてデザート。餅ドーナツ。

お餅をドーナツ状に揚げて、シナモンソースがかかっています。

 

裕坊的に気に入ったのが、こちらベイクドアラスカ。

パッションフルーツ風味のカスタードケーキの上にアイスクリームがのり、そして生クリームがたっぷりかけられているという、贅沢なデザート。これなら、裕坊、1人でペロリと平らげられます。

 

本当にとても贅沢なひと時を過ごせる週末となりました。

 

火曜日の研修に備えて、裕坊は明日はミネアポリスに出発です。